心不全ガイドライン・2022AHA/ACC
2022 AHA/ACC/HFSA Guideline for the Management of Heart Failure
2022年版の心不全ガイドラインがAHAより発表になっています。
本院の身の丈に合った内容をブログします。(勧奨の強さは1,2a,2b,の順です。下記のPDFを
ご参照ください。)
1) 心不全のタイプを示しています。新たなタイプの提唱として、HFimpEFは改善傾向を
意味しますが、継続治療が必要です。
HFmrEFは改善傾向か悪化傾向かを見極めることが大事です。
HFpEFは基礎にある高血圧、心房細動、糖尿病、心アミロイドーシスの治療が優先される
べきです。
2) 心不全の診断と層別化に、BNP又はNT-proBNPを使用する事は有益です。
ただし、除外診断に有効ですが rule out、rule inには注意が必要です。
(勧奨として有益性は1,2a,2b,の順です。)
3) 体液負荷(fluid retension,本院では主としてIVCD下大静脈拡張)が認められる
とき、利尿薬は有効。ループ利尿薬さらにはサイアザイド系の追加もあり。
うっ血性心不全の既往がある患者さんは、改善していても再発の危険があるので、利尿薬
の維持療法を継続すべきです。
MRAsは別として、利尿薬が生命予後に有効かは不明です。
よって利尿薬の単独処方は避けるべきで、他の薬剤との併用が基本です。
低ナトリウム血症が改善しない場合は、サムスカの使用を検討します。
一般的にはラシックスですが、反応がないときはルネトロン又はルプラックが有効。
(慢性の場合は、作用時間の長いルプラックかダイアートへの変更を考えます。)
尿量が増加するまで、または体重が0.5〜1.0Kg減少までループ利尿薬を増量してもよい。
治療抵抗性の場合は筋注、経静脈を試みる。サイアザイド系の併用も有効だが電解質、
腎機能のモニタリングが大事。
(症状改善の基本は今も昔も利尿薬でしょうか。)
4) HFrEF(駆出率40以下)の治療
・<ACE阻害薬、ARB、ARNIが選択薬>
初期導入として漸増することなく、novoとして直接ARNI導入を勧めています。
ARNIは症状の軽快を促しBNPの改善、入院率の低下につながるが、低血圧、血管浮腫に
注意が必要。(メーカーのパンフレットを下記に掲載)
またACE阻害薬からARNIへの変更は、少なくとも36時間が必要。
現段階では、心房細動、心筋梗塞後、肺うっ血、糖尿病にARNIが優れているかは不明です。
ただし、安定しているHFrEFでは、ARBからARNIへの変更を勧めます。
・<βブロッカーも有効です>
症状が改善しなくても、全てのHFrEF患者に継続することを勧めます。
・<MRAsも有効>
ただし、腎機能eGFRが30以上で血清カリウムが5.0以下にコントロールされている
場合です。
ARBとの併用ならば、寧ろARNIとの併用が勧められる。
下痢などがあれば、利尿薬との併用は注意が必要。
・<さて主役のSGLT-2阻害薬>
既にブログでも紹介しましたが、糖尿病でなくてもSGLT-2阻害薬は心不全の第一選択薬
です。
心不全の既往に関係なく、SGLT-2阻害薬は心不全の入院率を31%減少させます。
適応外は腎機能eGFRが30以下、又は血圧100以下が文献的に一般論のようです。
・<isosorbide dinitrate>
・<その他>
降圧薬のCCBは心不全には中立、つまり効果も害もありません。
しかし、ヘルベッサーとワソランは心機能にとって有害との見解です。
糖尿病治療薬のアクトス、DDP-4阻害薬、さらに解熱鎮痛薬NSAIDsも避けるべきとして
います。
・<コララン>
心不全が安定して駆出率35%以上、不整脈がない、脈拍が70以上の場合には、コララン
は心不全の入院率を低下させる。
・<ジギタリス製剤>
入院率を低下させる。エビデンス2bです。
5) Mildly Reduced EF (HFmrEF) and Improved EF (HFimpHF)
(駆出率41〜49%)
基本的にはHFrEFと同じ治療となりますが、漸増と漸減の方針です。
上の図から分かりますが、SGLT-2阻害薬が2aです。
つまりSGLT-2阻害薬が第一選択となります。ARNI,ARB,ACEi,MRAsは2bで第二選択肢
でしょうか。心不全の症状が軽快したとしても根本的な治癒ではないので、治療の継続が
大事です。
6) HFpEF(駆出率50%以上)
HFpEFの原因は高血圧、冠動脈疾患、糖尿病、慢性腎臓病、肥満、心アミロイドーシス
など多岐にわたります。
近年までいろいろなスタディで、残念ながら十分な効果が得られていません。
現段階では利尿薬が症状の軽減に貢献しています。

基本的には血圧の管理です。心房細動が存在するなら、リズムコントロール及びレート
コントロールを先ず優先すべきです。
SGLT-2iがエビデンスでは2aです。次にARNI,ARB,ACEiと続きます。
負荷の軽減目的のフランドルテープなどは効果がないようです。
7) その他の注意事項
心房細動に関して
私見)
心不全の役者が多くなり、実地医家にとってありがたいことですが、かえって私としては
ステレオタイプで混沌としています。
今回のガイドラインはなにやらスッキリとした感じです。
次回は利尿薬について再考します。
1 心不全 ガイドライン2022 AHA_.pdf2 ApplyClassOf RecommendationAndLevelOfEvidence.pdf3 エンレスト
錠 はじめてガイド .pdf4 エンレスト
錠 はじめてガイド 高血圧.pdfARNIを中心とした心不全治療の再考.pdf心不全に対するSGLT2阻害薬とミネラルコルチコイド受容体拮抗薬.pdf慢性腎疾患における高血圧治療.pdf利尿薬 (2).pdf