高齢者の強化血圧コントロール;中国からの報告
Trial of Intensive Blood-Pressure Control in Older Patients
with Hypertension
<n engl j med 385;14 nejm.org September 30, 2021>
with Hypertension
<n engl j med 385;14 nejm.org September 30, 2021>
血圧の治療目標は各学会により異なります。
ブログでも紹介しましたSPRINT研究では、75歳以上の高齢者にも強化療法を勧めており
目標は120以下です。
しかし最近の研究からは、高齢者に対して130以下に設定することが疑問視されています。
きちんと服用するか(アドヒアランス)、腎機能低下が懸念されています。
更に最近のガイドラインでも、家庭血圧を重視しています。
今回、雑誌NEJMに中国からの論文(STEP研究)が掲載されています。
1) ⾼⾎圧を有する 60〜80 歳の中国⼈患者を、目標収縮期⾎圧を110 mmHg 以上
130 mmHg 未満とする群(強化治療群)と、130 mmHg 以上 150 mmHg 未満と
する群(標準治療群)に割り付けました。
主要転帰は脳卒中、急性冠症候群(急性⼼筋梗塞と不安定狭⼼症による⼊院)
急性非代償性⼼不全、冠⾎⾏再建、⼼房細動、⼼⾎管系の原因による死亡です。
2) 調査対象の 9,624 例のうち、8,511 例を登録し、4,243 例を強化治療群
4,268 例を標準治療群に無作為に割り付けました。
3) 結果は追跡期間中央値 3.34 年の時点で、主要転帰イベントは強化治療群では
147 例(3.5%)に発⽣していたのに対し、標準治療群では196 例(4.6%)でした。
(ハザード⽐ 0.74) 主要転帰の個々の項目についても、⼤部分で強化治療のほうが
優れており、ハザード⽐は脳卒中 0.67、急性冠症候群 0.67、急性非代償性⼼不全0.27、
冠⾎⾏再建 0.69、⼼房細動0.96、⼼⾎管系の原因による死亡 0.72でした。
安全性転帰と腎機能低下の結果は、強化治療群で低⾎圧の発⽣率が⾼かったことを除いて
群間で有意差は認められませんでした。 (一部日本版をコピペ)
なお、血圧測定は当初は看護師が指導し、オムロンの血圧計を用いて家庭血圧を主体に
スマートフォンで登録しました。
4) 考察
本論文のSTEP研究と以前のSPRINT研究を比較しますと
SPRINT研究では、自動血圧計を用いて看護師が直接測定に携わっていませんでした。
またSPRINT研究では糖尿病患者は除外しています。
STEP研究とSPRINT研究ともに、脳卒中の既往歴のある人は除外しています。
STEP研究ではその後、脳卒中既往も加えています。
SPRINT研究では120以下を目標にしている関係でコストがかかり、腎機能の悪化も認め
られています。
STEP研究では130以下で110までと目標設定をしていますので、腎機能の悪化はありま
せんでした。
両研究ともに低血圧は発生しています。脈圧が60以上になりますと心筋梗塞、脳卒中再発
の危険がありました。
STEP研究は心血管疾患の発生が少ないアジアでの報告が特徴でもあります。
5) 結論として、⾼齢⾼⾎圧患者では、目標収縮期⾎圧を 110 mmHg 以上 130 mmHg 未満
とする強化治療により、130 mmHg 以上 150 mmHg 未満とする標準治療と⽐較して、
⼼⾎管イベントの発⽣率が低下していました。
私見)
好むと好まざると関係なく、私も中国人と同じアジア系です。
ただし、日本の方が欧米化しているのが気になります。
目標血圧を130以下とします。