新型コロナ感染とギランバレー症候群
< 短報 > Guillain-Barre syndrome after SARS-CoV-2 infection
in an international prospective cohort study
in an international prospective cohort study
ウイルスまたは細菌感染、もしくはワクチン接種後に急に運動障害が発症するギランバレー
症候群が懸念されています。
軽症から重症、自然治癒例から後遺症までスペクトルに富む疾患です。
新型コロナ感染とギランバレー症候群が関係しているとの報告が当初ありました。
その関係でコロナワクチンの有害事象としても心配されています。
今回、明白な関連性が乏しいとの論文が出ていますので、簡単にブログします。
1) 2020年1月30日から5月30日の間に、ギランバレー症候群報告機関のIGOSに収録された
データの解析です。
2) 新型コロナ感染は、可能性の程度によりpossible,probable,confirmedとしています。
・possibleは感染症の症状が1つでもある場合
・probableはレントゲン診断、又は濃厚接触や臨床症状がある場合
・confirmedはPCR検査陽性の場合
つまりギランバレー症候群を広く集めて関連性を推測するために、診断も広めに設定
しています。
3) 期間中に集計されたギランバレー症候群は49例です。
21例が新型コロナ感染とは無関係
15例が possible
3例が probable
8例が confirmed
2例が 不明
4) 過去の3年間と比較しても、この期間にギランバレー症候群は増えていませんでした。
Confirmedとprobableを合わせてみても、ギランバレー症候群の症状としては知覚障害が
主で、顔面麻痺、知覚神経障害、自律神経障害がありました。
またConfirmedとprobableの中の2例は、カンピロバクターとサイトメガロウイルス
感染症を抗体検査で証明されています。
<今日の臨床サポート>よりギランバレー症候群を調べてみました。
• ギラン・バレー症候群(GBS)とは、先行感染などにより惹起された自己免疫機序による急性
炎症性ニューロパチーである。
• 10万人あたりの年間発症率は0.6〜1.9人、男女比は1.67:1くらいで、男性に多い。
高齢になるほど発症率が上昇する。
• 臨床症侯は急性進行性の運動障害を主体とするが、感覚神経障害、自律神経障害も伴う。
先行感染から1週間程度で発症することが多い。4週以内に症侯のピークを迎え、その後、自然
回復傾向を示す。多くの症例では2週以内にピークとなる。自然回復も期待できるが、重症度は
軽微な筋力低下にとどまる例から、呼吸筋麻痺を来たし人工呼吸器装着を必要とする例まで
様々である。
• 脳神経障害の合併率は報告により幅があるが、顔面神経麻痺(約50%)が最も多く、次いで
球麻痺(約30%)、眼球運動麻痺(約20%)の順となる。
特に両側性顔面神経麻痺ではGBSを疑うべきである。
• 自律神経障害は、軽微なものを含めると50%以上に合併するとされるが、臨床的に問題になる
のは、不整脈、起立性低血圧、膀胱直腸障害などである。
• 臨床症侯とともに、神経伝導検査、血清ガングリオシド抗体測定、脳脊髄液検査を参考にする。
特に神経伝導検査が重要である。
• エビデンスの確立した急性期治療は、ガンマグロブリン大量静注療法、血液浄化療法である。
• 回復期には適切なリハビリテーションを行う。
• 通常は日単位で、急速進行例では時間単位で進行する四肢運動麻痺を来す場合に、GBSを想起
する。
• 遠位筋優位、近位筋優位のいずれもある。両者が同様に進展してくることもある。
外眼筋麻痺、顔面筋麻痺、球麻痺など脳神経領域の麻痺や呼吸筋麻痺が目立つ例もある。
筋力低下の分布のみで判断しない。感覚障害は、運動症状に比べると軽微であるが、自覚的な
痺れ感を含めると90%以上に認める。疼痛の強い症例も存在する。
• 進行性の筋力低下が生じている例では先行感染、ワクチン接種歴などについて問診する。
上気道感染、消化管感染が多い。消化管感染を先行感染とする場合、campylobacter jejuniが
起因菌のことが多く、重症化しやすい。先行感染が確認できるのは70%程度であり、先行感染
が明らかでないことを根拠にGBSを否定しない。
あくまでも進行性の運動障害が中核症状であることに留意する。
• 腱反射は低下、消失するが、病初期には正常のこともあり、経時的に確認することが重要
軸索型ではまれに腱反射が亢進することもある。
• 亜型として外眼筋麻痺、運動失調、四肢腱反射消失を3徴とするFisher症候群が知られており、
GQ1b抗体との関連が強い。
• 10%前後の患者で初回治療後に再増悪がみられる。
この場合、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)との鑑別が問題となるが、
発症9週以降にも増悪傾向を示す場合や3回以上の増悪があればCIDPと考えるべきである。
私見)
新型コロナ感染とギランバレー症候群は明白な関連はないようです。
まして、コロナワクチンにおいては心配ないものと考えます。
しかし本院においても、モデルナワクチン接種後に知覚神経障害で来院された患者さんが
おります。
専門病院にて精査をしましたが、ギランバレー症候群は否定されました。
今後、十分に検証することも大事です。
1 Guillain-Barre´ syndrome after SARS-CoV-2.pdf
2 ギランバレー症候群 診断基準.pdf