2021年10月13日

新型コロナ感染とギランバレー症候群

新型コロナ感染とギランバレー症候群
短報 > 
Guillain-Barre syndrome after SARS-CoV-2 infection
in an international prospective cohort study



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 ウイルスまたは細菌感染、もしくはワクチン接種後に急に運動障害が発症するギランバレー
症候群が懸念されています。
軽症から重症、自然治癒例から後遺症までスペクトルに富む疾患です。
新型コロナ感染とギランバレー症候群が関係しているとの報告が当初ありました。
その関係でコロナワクチンの有害事象としても心配されています。


今回、明白な関連性が乏しいとの論文が出ていますので、簡単にブログします。

1) 2020年1月30日から5月30日の間に、ギランバレー症候群報告機関のIGOSに収録された
   データの解析です。

2) 新型コロナ感染は、可能性の程度によりpossible,probable,confirmedとしています。
   ・possibleは感染症の症状が1つでもある場合
   ・probableはレントゲン診断、又は濃厚接触や臨床症状がある場合
   ・confirmedはPCR検査陽性の場合
    つまりギランバレー症候群を広く集めて関連性を推測するために、診断も広めに設定
    しています。





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3) 期間中に集計されたギランバレー症候群は49例です。
   21例が新型コロナ感染とは無関係
   15例が possible
    3例が probable
    8例が confirmed
    2例が 不明

4) 過去の3年間と比較しても、この期間にギランバレー症候群は増えていませんでした。
   Confirmedとprobableを合わせてみても、ギランバレー症候群の症状としては知覚障害が
   主で、顔面麻痺、知覚神経障害、自律神経障害がありました。
   またConfirmedとprobableの中の2例は、カンピロバクターとサイトメガロウイルス
   感染症を抗体検査で証明されています。
   





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<今日の臨床サポート>よりギランバレー症候群を調べてみました。


• ギラン・バレー症候群(GBS)とは、先行感染などにより惹起された自己免疫機序による急性
 炎症性ニューロパチーである。

• 10万人あたりの年間発症率は0.6〜1.9人、男女比は1.67:1くらいで、男性に多い。
 高齢になるほど発症率が上昇する。

• 臨床症侯は急性進行性の運動障害を主体とするが、感覚神経障害、自律神経障害も伴う。
 先行感染から1週間程度で発症することが多い。4週以内に症侯のピークを迎え、その後、自然
 回復傾向を示す。多くの症例では2週以内にピークとなる。自然回復も期待できるが、重症度は
 軽微な筋力低下にとどまる例から、呼吸筋麻痺を来たし人工呼吸器装着を必要とする例まで
 様々である。

• 脳神経障害の合併率は報告により幅があるが、顔面神経麻痺(約50%)が最も多く、次いで
 球麻痺(約30%)、眼球運動麻痺(約20%)の順となる。
 特に両側性顔面神経麻痺ではGBSを疑うべきである。

• 自律神経障害は、軽微なものを含めると50%以上に合併するとされるが、臨床的に問題になる
 のは、不整脈、起立性低血圧、膀胱直腸障害などである。

• 臨床症侯とともに、神経伝導検査、血清ガングリオシド抗体測定、脳脊髄液検査を参考にする。
 特に神経伝導検査が重要である。

• エビデンスの確立した急性期治療は、ガンマグロブリン大量静注療法、血液浄化療法である。

• 回復期には適切なリハビリテーションを行う。

• 通常は日単位で、急速進行例では時間単位で進行する四肢運動麻痺を来す場合に、GBSを想起
 する。

• 遠位筋優位、近位筋優位のいずれもある。両者が同様に進展してくることもある。
 外眼筋麻痺、顔面筋麻痺、球麻痺など脳神経領域の麻痺や呼吸筋麻痺が目立つ例もある。
 筋力低下の分布のみで判断しない。感覚障害は、運動症状に比べると軽微であるが、自覚的な
 痺れ感を含めると90%以上に認める。疼痛の強い症例も存在する。

• 進行性の筋力低下が生じている例では先行感染、ワクチン接種歴などについて問診する。
 上気道感染、消化管感染が多い。消化管感染を先行感染とする場合、campylobacter jejuniが
 起因菌のことが多く、重症化しやすい。先行感染が確認できるのは70%程度であり、先行感染
 が明らかでないことを根拠にGBSを否定しない。
 あくまでも進行性の運動障害が中核症状であることに留意する。

• 腱反射は低下、消失するが、病初期には正常のこともあり、経時的に確認することが重要
 軸索型ではまれに腱反射が亢進することもある。

• 亜型として外眼筋麻痺、運動失調、四肢腱反射消失を3徴とするFisher症候群が知られており、
 GQ1b抗体との関連が強い。

• 10%前後の患者で初回治療後に再増悪がみられる。
 この場合、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)との鑑別が問題となるが、
 発症9週以降にも増悪傾向を示す場合や3回以上の増悪があればCIDPと考えるべきである。







私見)
 新型コロナ感染とギランバレー症候群は明白な関連はないようです。
 まして、コロナワクチンにおいては心配ないものと考えます。
 しかし本院においても、モデルナワクチン接種後に知覚神経障害で来院された患者さんが
 おります。
 専門病院にて精査をしましたが、ギランバレー症候群は否定されました。
 今後、十分に検証することも大事です。







1 Guillain-Barre´ syndrome after SARS-CoV-2.pdf

2 ギランバレー症候群 診断基準.pdf
















posted by 斎賀一 at 18:19| Comment(0) | 感染症・衛生

2021年10月11日

GLP-1作動薬について

GLP-1作動薬について

     <勉強会


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 糖尿病治療薬は多岐にわたり、選択肢が広がっています。
患者さんも、どの位置にいるのか判断が迷うと思います。
混同しないためにもGLP-1受容体作動薬(以下GLP-1作動薬)を解説するついでに、他の治療薬
もおさらいしてみます。          


DPP阻害薬
インクレチンは食事に伴って消化管から分泌され、インスリン分泌を促進するホルモンの総称である。
インクレチンには、小腸のK細胞から分泌されるグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプ
チド(G I P)と、L細胞から分泌されるグルカゴン様ペプチドー1(G L P-1)の2種類がある。
それぞれが受容体に結合すると膵臓のβ細胞が刺激され、インスリンの分泌が促進される。
インクレチンは分泌後DPP-4により述やかに不活化される。
DPP-4阻害薬は、GLP-1作動薬と共にインクレチン関連薬と呼ばれる。
DPP-4阻害薬はDPP-4を阻害し、インクレチンの不活化を抑制することでインスリン分泌を促進
し、グルカゴンの分泌を抑制して血糖降下作用を示す。

GLP-1作動薬
GLP-1作動薬は小腸のL細胞を刺激してインスリンを分泌させる。
GLP-1作動薬はDPP-4阻害薬よりもインクレチン濃度を上昇させるため体重減少が著明になる。
GLP-1受容体は膵臓以外に神経、消化管にもあるため、食欲不振、胃排出抑制、体重減少を引き
起こす。
短時間作用型のバイエッタは1日2回、リキスミアは1日1回、長時間作用型のビクトーザは
1日1回、トルリシティとオゼンピックは週1回の皮下注射です。





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SGLT-2阻害薬
SGLT-2は腎臓の近位尿細管に特異的に発現し、糖再吸収の90%を担っている。
SGLT-2阻害薬はSGLT-2を特異的に阻害し、近位尿細管における糖の再吸収を抑制して血糖の
上昇を抑える。




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本院のGLP-1作動薬
当初よりGLP-1作動薬の注射薬を使用していましたが、副作用の吐き気と製品の不具合から
出鼻をくじかれた感で採用を控えていました。
最近、インスリン+ GLP-1作動薬の合剤(ゾルトファイ)とGLP-1作動薬の経口薬
(リベルサス)が上市され有効性が本院でも認められています。(下記のPDFを参照)
今後は他のGLP-1作動薬注射薬も患者さんの適応を絞って採用してみようと思っています。






私見)
 ゾルトファイ注射ではほとんど吐き気がなく、リベルサスは、もしかして隔日服用も可能
 との事で初期投与の場合は、これも副反応の軽減に有効と感じています。 (下記PDF参照)
 今後はGLP-1作動薬も徐々に採用してまいります。
 下記のPDFをご参照ください。



 ◆参考文献

 ・薬の作用が手に取るようにわかる本    黒山政一  じほう
 ・薬のデギュスタシオン    岩田健太郎  金芳堂
 ・medical practice V 32 N1 2015
 ・medical practice V34 N9 2017





1 GLP-1 PDF.pdf

2 ゾルトファイ.pdf

3 リベルサス.pdf

4 oral-glp-1-diabetes-treatm.pdf

5 リベルザス文献.pdf




















posted by 斎賀一 at 20:08| Comment(0) | 糖尿病

2021年10月09日

糖尿病治療薬のSGLT-2阻害薬とGLP-1作動薬の比較

糖尿病治療薬のSGLT-2阻害薬とGLP-1作動薬の比較

短報

Sodium–Glucose Cotransporter-2 Inhibitors Versus Glucagon-like
Peptide-1 Receptor Agonists and the Risk for Cardiovascular
Outcomes in Routine Care Patients With Diabetes Across Categories
of Cardiovascular Disease
  


   
 糖尿病治療薬は、選択肢が広がっています。更にSGLT-2阻害薬と
GLP-1作動薬は、ともに心血管疾患に対しても有効性が証明されています。
その点に絞ってのガチンコ勝負の論文が掲載されています。


 • 主要転帰は心筋梗塞、脳卒中、心不全の入院、心血管疾患関連の
   死亡です。
   現在のガイドラインでは、糖尿病と心血管疾患の合併のある患者さんでは、SGLT-2阻害薬と
   GLP-1作動薬ともに適応薬剤です。
   初期治療としてどちらが有効かを調べています。

 • 心不全の入院率は年間で、SGLT-2阻害薬が1.2%、GLP-1作動薬が
   1.7%でした。
   心筋梗塞、又は脳卒中は、SGLT-2阻害薬が2.1%、GLP-1作動薬は2.4%
   でした。
   いずれもSGLT-2阻害薬がやや優勢です。



私見)
 どちらが優位とは言えない結果です。
 次回のブログでGLP-1作動薬について勉強し、本院の取り組みを紹介します。




Sodium–Glucose Cotransporter-2 .pdf








posted by 斎賀一 at 17:30| Comment(0) | 糖尿病