2021年10月26日

自宅での抗原検査の盲点

自宅での抗原検査の盲点

COVID-19 TestingMoves Out of the Clinic and Into the Home



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 薬局での新型コロナ抗原検査キットの販売が厚生省から認可されました。
ある自治体からは、子供への2セットの無料配布も実施されています。
未だ流行している英国の、雑誌JAMAより抗原検査の有効性とその注意点に関して、警告した
論説が載っていますので簡単に纏めてみました。


1) 英国において自宅での検査が開始され、ドラッグストアが活況を呈し、医療機関の
   受診も手控える傾向となっています。
   (本院でもコロナの収束傾向と相まって、発熱での受診も減少傾向です。)

2) アメリカではワクチン接種が一定の率から普及していません。
   社会全体の問題も含まれており、新型コロナの対策としてワクチン接種のみでは解決
   しない面が浮き彫りになっています。
   自宅での抗原検査を含めた診断は、その有効性が期待されています。

3) しかし抗原検査の精度(感度と特異度)に注意が必要です。
   PCR検査が抗原検査に勝ることは言うまでもありません。
   抗原検査の利点は安価で迅速であることです。また、変異株に対しても精度の低下は
   認められていません。

4) では、抗原検査の弱点は
   ・感染の初期と時間が経過した後期では、偽陰性となってしまいます。
   ・抗原検査はPCRに匹敵するとも言われているが、PCRテストのcycleが低値、つまり
    ウイルス量が多い時にはよく相関します。逆に言えばウイルス量が少ないと相反する
    結果となります。
   ・ある研究によると、18,457人が抗原検査とPCR検査を実施しています。
    17.1%がPCR検査で陽性でしたが、抗原検査はその半分しか陽性でありませんでした。
    またPCR陽性の1/3は、症状が進展しませんでした。
    アボット社の説明では抗原検査は75%の精度との事ですが、全て対象はウイルス
    ロード、つまり有症状のウイルスが多い人を対象にした結果です。
   ・アボット社のビデオによる指導では、家庭で患者が鼻腔の入り口で採取する方法に
    比べて、医療従事者が鼻咽頭の中まで挿入して採取する方が精度が高いことを指導
    しています。
    医療従事者が行うと精度は74%に対して、個人で鼻の入り口での採取だと精度は57%と
    低下しています。
   ・新型コロナに暴露して翌日に抗原検査を行っても陽性にはならないし、症状が出てから
    5日以上経過していると、PCRよりも偽陰性になる率が高まる。
   ・抗原検査が陽性ならまず間違いなくコロナと診断できるが、感度が低いため偽陰性が
    多い。このためイベント会場の入場に、この検査をパスポートとして利用するには
    いささか問題がある。
    症状がある場合には、抗原検査で陰性でもPCR検査を追加することが必要である。
    若しくは抗原検査を再度実施する。
   ・最近の報告では、アボット社の抗原検査は有症状の場合は精度が64.2%だが、無症状
    の場合は35.8%との報告

5) 抗原検査の利用価値は
   ・安価で迅速である。
   ・変異株に対しても精度は低下しない。
   ・劇場、イベント会場、スポーツ観戦などのオープン環境では、その効果は限定的である
    が、クローズド環境(閉鎖環境)例えば学校などでは、抗原検査を繰り返すことにより
    感染を予防できる。







私見)
 抗原検査の効果はかなり限定的と感じます。
 特に感染が収束状態では偽陰性も稀となり問題視されないかもしれません。

 今になって政府のコロナ対策は成功したのだとの論調が散見されます。
 そうでしょうか、検証することが大事です。
 当初の段階で、PCR検査も覚束なく保健所はパンク状態で、町医者は「コロナだったら
 ごめんね」状態が続き、PCR検査が開業医レベルで可能になっても発熱患者はどこを受診して
 いいか分からず状態です。
 地域に適応したPCR検査センターをなぜ未だに作らないのか。
 なぜ地域として取り組もうとしないのか。
 2年間、職員と共に闘い続けている老医としては、ダイヤモンド・プリンセス号の頃から進展
 していないように思われるのですが ...。





JAMA コロナ 自宅検査.pdf








posted by 斎賀一 at 20:08| Comment(0) | 感染症・衛生

2021年10月22日

免疫不全状態でない小児の帯状疱疹の検討

免疫不全状態でない小児の帯状疱疹の検討
 
<小児科Vo l. 62 No.5 2021>
  井上一利* 中村亨* 関俊二* 癒崎智子; 鹿児島生協病院小児科 
 


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 最近、乳幼児の帯状疱疹を診察しました。
タイミングよく 雑誌小児科 に論文が掲載されていましたので、ブログで紹介します。
鹿児島生協病院小児科の報告です。


先ずサマリーを下記に記載します。

「2012年度〜2019年度までの8年間に受診した免疫不全状態でない小児帯状疱疹患者の診療録を
後方視的に検討しています。患者は2012年度〜2015年度(前半)が28名、2016年度〜2019年
度(後半)が19名でした。3歳以下の患者は前半9名、後半0名です。合併症を認めた5例はすべて
夏季に発症し水痘ワクチン接種歴がありません。3歳以下の患者数減少は水痘ワクチン定期接種の
影響の可能性がありました。」


論文を簡単に纏めますと

1) 2014年から水痘ワクチン定期接種が開始され、2017年までに水痘は4割まで減少して
   いる。しかし小児の帯状疱疹は定点報告の対象外のため、実態は不明である。

2) 1歳未満で水痘に罹患すると、細胞免疫の未熟さからその後の帯状疱疹発症のリスクが
   高くなるとされている。
   水痘ワクチン2回接種による免疫増強により、3歳以下の帯状疱疹患者は減少したと思わ
   れる。

3) 水痘に罹患しても免疫増強が得にくい場合に帯状疱疹となるため、発生時期は鏡像関係に
   あり水痘は寒冷期に多く、帯状疱疹は夏季に多くて合併症の髄膜炎もすべて夏季に認めて
   いる。髄膜炎はすべて夏季に発生し、水痘ワクチンを接種していなかった。






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私見)
 UPTODATEから調べますと

 ・小児の水痘ワクチン接種のお蔭で成人が水痘ワクチンの細胞免疫の刺激、つまりブスター
  効果が無くなってしまい成人での帯状疱疹が増加したとする見解があるが、明白な論文化
  は現在されていない。
 ・ワクチン接種後に小児の帯状疱疹は減少しているが、HIV罹患の小児ではむしろ増加して
  いる。
 ・帯状疱疹による無菌性髄膜炎は易刺激性など軽症もあり、注意が必要である。
  更に髄膜炎の臨床症状の発現後に帯状疱疹の発疹が出現することがあり、このことも診断
  に苦慮する点である。
  成人の帯状疱疹の診断もバリエーションがあり注意が必要です。
  比較的特異的な皮疹の像が載っていましたので、PDF化しました。








帯状疱疹.pdf









posted by 斎賀一 at 19:19| Comment(1) | 小児科

2021年10月20日

プライマリケアにおける抗うつ薬の継続と中⽌との⽐較

プライマリケアにおける抗うつ薬の継続と中⽌との⽐較
 
Maintenance or Discontinuation of Antidepressants in Primary Care
 <n engl j med 385;14 nejm.org September 30, 2021>
 


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 先進国では、この10年間で抗うつ薬の処方が増加しています。

 今回雑誌NEJMの論文は、英国のプライマリケアにおける抗うつ薬の継続と中断を調べたもの
です。
中断の場合は9か月以上の服用で十分な改善が認められ、本人も中断の意向がある場合です。


1) すべての患者は、抑うつエピソードの既往が 2 回以上あるか抗うつ薬を2年以上服⽤して
   おり、抗うつ薬の中⽌を検討できるほど状態が良好でした。
   シタロプラム、フルオキセチン(fluoxetine)、セルトラリン、ミルタザピンのいずれか
   の投与を受けていた患者を、現⾏の抗うつ薬療法を継続する群(継続群)と、プラセボを
   ⽤いて現⾏の抗うつ薬療法を漸減し、中⽌する群(中⽌群)に 1対1 の割合で無作為に
   割り付けました。





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2) 主要転帰は 52 週の試験期間中のうつ病の初回再発とし、⽣存時間(tim解析で評価
   しています。副次的転帰は抑うつ症状、不安症状、⾝体症、離脱症状、QOL、抗うつ薬
   またはプラセボを中⽌するまでの期間、全般的な気分の評価としました。
   1,466 例がスクリーニングを受け、このうち 478 例(継続群 238 例、中⽌群
   240 例)が試験に登録されました。
   平均年齢は 54 歳で、73%が⼥性です。52 週までに継続群 238 例中 92例(39%)と
   中⽌群 240 例中 135 例(56%)が再発しています。 (ハザード⽐ 2.06)




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                     (以上、日本版を一部コピペ)


3) 抗うつ薬はSSRIを対象にしており、その他の向精神薬は含まれていません。
   抗うつ薬の中断によりQOL、うつ状態、疲労感、離脱症状などは悪化していました。





私見)
 一部患者さんには向精神薬の服用をためらったり、場合により罪悪感すら感じる方がいます。
 また、服用を中断することを希望されるケースもあります。
 本論文は、いかに患者さんと寄り添って治療するかの難しさを示唆しています。











posted by 斎賀一 at 19:09| Comment(0) | 脳・神経・精神・睡眠障害