2021年10月30日

スタチンは悪党ではありません

スタチンは悪党ではありません

 

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 スタチンと糖尿病との関係について総合的に調べました。
冷静に判断するには書籍とuptodateだと信じています。

先ず岩田健太郎氏の書物から、


 1) スタチン系薬剤では新規糖尿病発症のリスク上昇が示唆されており、
    特にBMIやHbA1c等が高い糖尿病の危険因子を有する症例で、
    そのリスクが高い。
    高用量のスタチン治療は、低用量スタチン治療に比べて糖尿病発症リスク
    が高く、特に、スタチン投与後4か月以内は、糖尿病の新規発症リスクに
    注意すべきである。
    糖尿病発症リスクは、アトルバスタチン、ロスバスタチン、
    シンバスタチンで高く、フルバスタチン、プラバスタチン、
    ピタバスタチンでは相対的に低いと考えられる。

 2) わが国で使用できる、主なスタチン製剤のLDL 低下効果は、おおむね、
    ロスパスタチン>アトルパスタチン>シンパスタチン>プラパスタチン
    の順となっており、スタチンの糖尿病発症リスクは後述するように、
    その力価と関連があるようである。

 3) 海外の研究では、わが国よりはやや高容量の印象である。


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    頻度は低いと言えどもスタチン投与では注意が必要としています。


Uptodateより


 ・ スタチンの心血管疾患の予防効果がリスクを上回る

observational studies suggest that the beneficial effects of statins on cardiovascular events and mortality outweigh any increased risk conferred by promoting the development of diabetes


 ・ スタチンと糖尿病との関係は、バイアスもあり、論争が続いている。
   おおむねそのリスク率は1.09であり。

Some clinical trials of statins had reported conflicting results on the issue of glucose metabolism 。However, a 2010 meta-analysis of 13 trials (n = 91,140) found little evidence of heterogeneity among large-scale chronic treatment trials . For inclusion,trials were required to have more than 1000 patients and a duration of follow-up of more than one year. This meta-analysis found an overall small increased risk for diabetes inpatients treated with statins (OR for incident diabetes 1.09,)


 ・ しかし、現在ではJUPITER研究の結果が重要視されている。
   (JUPITERの要約を下記に掲載します。)

Since JUPITER had raised much of the concern about diabetes and statins, the stability of the result without JUPITER lowers the likelihood that the glucose findings in the meta-analysis were due to chance.


 ・ スタチンによる危険率は1.11で、高容量の場合は、低用量に比較して
   その危険率は1.12です。

A 2015 meta-analysis confirmed these results both for the risk of diabetes with statins versus placebo (OR 1.11, CI 1.03-1.20) and for intensive versus moderate-intensity statin therapy(OR 1.12, 1.04-1.22)



私見)
 本院も従来通りに細心の注意を払います。
 糖尿病のリスクのある方には、メバロチンか、クレストールの隔日投与を行ってまいります。今こそスタチンを支えるときです。

 私の尊敬する先生を助けることが出来なかったことを悔いています。もっと丁寧に、熱心に根気よくスタチンの利点を説明すべきだったと反省しています。
 悪い結果は必ず複数の要因が重なります。それを一つでも取り除くことが、臨床医の務めと改めて後悔しています。


 参考書籍
 薬のデギュスタシオン;岩田健太郎 金芳堂



1 JUPITER (2).pdf

2 ブログより.pdf









posted by 斎賀一 at 19:47| Comment(0) | 糖尿病

スタチンは糖尿病を悪化する?

スタチンは糖尿病を悪化する?

Association of Statin Therapy Initiation With Diabetes Progression
A Retrospective Matched-Cohort Study




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 脂質異常症治療薬はスタチンが主役です。しかし、横紋筋融解症など副作用が以前より取りざたされており、患者さんも冷静な対応を逸している場合があります。又、スタチンを服用すると糖尿病になるとの古くて新しい情報がネットでも拡散しています。
今回、雑誌JAMAより論文が載っていましたのでブログします。


 1) 後ろ向き研究です。
    2003〜2015年の30歳以上の糖尿病と診断された人を登録しています。

 2) 主要転帰は、・新たにインスリンの導入 
          ・糖尿病薬の増加 
          ・血糖が200mg/dl以上が5回以上 
          ・ケトアシドーシス
          ・コントロール不良 です。

 3) 705,774人が登録し、このうち55,579⼈がスタチン服用群で、
    110,195⼈は実薬対象群です。
    更に83,022人がスタチン服用群と実薬対象群(H2ブロッカー又はPPI)に
    マッチングし、最もマッチする組み合わせを1対1の割合で選んでいます。
    スタチン服用群の処⽅期間は、平均値で5.3年(標準偏差3.3年)。
    処⽅されたスタチンの63.4%はシンバスタチンで、
    12.4%はアトルバスタチン、10.5%はロスバスタチン、
    9.5%はプラバスタチンです。
    スタチン服用群のLDLは、追跡期間中に平均25mg/dL(31.6mg/dL)
    低下しています。
    実薬対象群は、低下は0.8mg/dL(23.7mg/dL)です。

 4) 結果は、糖尿病の悪化はスタチン群で55.9%、実薬対象群は48.0%
    でした。(危険率は1.37)
    新たなインスリンの使⽤開始の危険率は1.16(1.12-1.19)、
    新たな種類の⾎糖降下薬の追加の危険率は1.41(1.38-1.43)、
    5回以上⾎糖値が200mg/dL以上となる危険率は1.13(1.10-1.16)、
    糖尿病性ケトアシドーシス、またはコントロール不良の糖尿病の
    新規診断の危険率は、1.2(1.19-1.30)です。
    高力価スタチンの方が、低力価スタチンよりも糖尿病悪化との関連性が
    高い。⾼力価(LDLがベースラインから50%以上減少)のスタチンでは、
    実薬対象群と比較すると危険率は1.83(1.78-1.88)、
    中力価(30%以上50%未満の減少)では1.55(1.53-1.58)、
    低力価(30%未満の減少)では1.45(1.42-1.47)で、
    LDLの減少効果が⼤きいスタチンほど糖尿病が進⾏する
    傾向を示しています。


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私見)
 スタチンは、心血管疾患の予防にはなくてはならない薬剤の一つです。
 悪い面ばかりを見ないで一生懸命頑張っている、そのもの自身を評価して欲しいのです。
 ただ、健気にフィアンセをかばう娘をみる宮様のお気持ちを察するにあまりあるものがあります。
 次のブログでスタチンに対する私の思いを語ります。




本論文 Association of Statin Therapy Initiation With Diabetes Progression_ A Retrospective Matched-Cohort Study _ Cardiology _ JAMA Internal Medicine2 _ JAMA Network.pdf

11 実薬対象試験.pdf













posted by 斎賀一 at 19:03| Comment(0) | 糖尿病

2021年10月27日

小児は新型コロナ感染後の抗体は少ない

小児は新型コロナ感染後の抗体は少ない

  <短 報>
 
Reduced seroconversion in children 1 compared to adults with mild COVID-19



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 オーストラリアからの報告です。
デルタ株が流行する前の2020年5月から10月の間のデータです。


1) 新型コロナの診断をPCR検査で行い、入院を必要としない軽症患者を対象として抗体を
   調べています。血液検査は平均41日で行っています。
   対象は小児が134人(18歳以下)、成人が160人(19〜73歳)です。
   その中で登録は108人で、57人が小児(平均年齢は4歳)
   51人が成人(平均年齢は37歳)となっています。

2) 抗体は小児で37%(20/54)、成人は76.2%(32/42)でした。
   ウイルス量とは関係ない結果です。
   成人は有症状の場合は無症状に比べて抗体価が3倍高い。
   成人の場合には細胞免疫は液性免疫と同様に認められましたが、小児の場合は細胞
   免疫も低値です。




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3) 小児の場合に症状が軽症と、この免疫の低下が関連するかは今後の研究を待たなくては
   ならない。更に小児でのワクチン接種による抗体産生に関しても問題を提起している。






私見)
 12歳以下のワクチン接種に関して、以前ブログしましたが更なるエビデンスが必要です。
 海外では治験に対してお金を払う制度が一般的との事です。
 ある意味では、日本は平和な国かもしれません。






Reduced seroconversion in children compared to adults with mild COVID-19.pdf











posted by 斎賀一 at 19:17| Comment(0) | 小児科