2021年09月28日

インフルエンザワクチンと心血管疾患・その有効性

インフルエンザワクチンと心血管疾患・その有効性
 
Influenza Vaccination after Myocardial Infarction


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 コロナワクチンに忙殺された半年でしたが、インフルエンザワクチンの季節になりました。
残念ながら、又しても国の無策によりワクチンの供給が例年の8割で、しかも製造過程の問題から遅れるようです。世界の論文は待ったなしで、心血管疾患の患者さんにもインフルエンザワクチンの接種を勧めています。


纏めてみますと

1) 新型コロナの流行により、本研究は中途で中断しています。
   対象は心筋梗塞(99.7%)と安定したハイリスクの冠動脈疾患です。
   2016年10月1日から2020年5月1日の間で2,571人が登録しています。
   冠動脈疾患の侵襲的治療や、入院をしてから72時間という短いスパンで研究は開始しています。
   インフルエンザワクチン群が1,290人、生理食塩水のプラシーボ群が1,281人に振り分けています。

2) 主要転帰は接種12か月後の全死亡率、心筋梗塞、ステント内の再血栓です。
   結果は主要転帰においては、ワクチン群が67例(5.3%)でプラシーボ群が91例(7.2%)
   の発生で、リスク比は0.72、全死亡率は2.9%対4.9%でリスク比は0.59
   心血管疾患の死亡率は2.7%対4.5%でリスク比は0.59、心筋梗塞再発は2.0%対2.4%で
   リスク比は0.86でした。





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              (対象は心筋梗塞が殆どです。)
  


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             (結果はワクチン群がリスク比1.0以下です)




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             (個々のグラフは本文を参照ください。)






私見)
    衆議院議員選挙が近づき、各政党はポピュリズムに走った政策を打ち出しています。
    総裁選挙も最初は面白かったですが、昔の亡霊が出しゃばってくると単なる茶番劇に見えて
    きます。
    インフルエンザワクチンすら実地医家には前年の供給量を制限としています。
    しかも本年は供給不足です。コロナ禍での国の姿勢が問われます。







Influenza Vaccination after Myocardial Infarction_ A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Multicenter Trial.pdf









posted by 斎賀一 at 20:28| Comment(1) | 循環器

2021年09月27日

慢性膵炎の腹痛症状

慢性膵炎の腹痛症状
          <短 報>

Pain patterns in chronic pancreatitis: a nationwide longitudinal cohort study



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 慢性膵炎の診断は症状、画像診断、血液検査によりますが、主には腹痛を主体とした臨床症状です。
今回、ドイツからの報告ではその肝腎な腹痛が個人や場合により様々との事です。
腹痛を3つのタイプに分けますと  ・持続性 ・間歇性 ・疼痛なし  となります。


纏めますと

1,131人の慢性膵炎患者を登録しています。
50%が持続性疼痛
20%が間歇性疼痛
30%疼痛なし
原因は50%がアルコール性でしたがその他は色々でした。
画像診断で膵臓に石灰化の有無と疼痛の性質には関連性はありませんでした。又、疾患の期間にも関係はありません。
しかし、1/3は疼痛のパターンが変化します。つまりいつ何時に持続性疼痛となりQOLに支障を起こし
ます。また、逆にいつも持続性の疼痛とは限らず、一過性か無症状の事もあります。






私見)
 腹痛が軽度の場合に、いかに血液検査をするかが問題です。
 今日の臨床サポートより診断のガイドラインを下記のPDFに掲載します。
 主は画像診断となっていますが常に総合的に診断して、以前に腹痛の既往がある人は慢性膵炎を常に
 鑑別する必要がありそうです。









慢性膵炎 今日の臨床サポート.pdf













posted by 斎賀一 at 20:46| Comment(1) | 消化器・PPI

2021年09月25日

ファイザーワクチンの3回接種の効果・イスラエルより

ファイザーワクチンの3回接種の効果・イスラエルより

Protection of BNT162b2 Vaccine Booster against Covid-19 in Israel
This article was published on September 15, 2021, at NEJM.org



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 イスラエル当局は、2021年7⽉12⽇に⾼リスク集団に続いて、2021年7⽉30⽇に60歳以上の⼈に
3回目のブースター接種することを承認しています。初期の研究では、ブースター接種によって、
2回目の接種後と⽐較し、抗体中和が約10倍に増加することが示されています。
しかし、実際の臨床の場での効果は不明でした。今回雑誌NEJMに、イスラエルから3回目のブースター
効果に関する報告がありました。60歳以上で、3回目のブースター接種を受けた参加者
(ブースター群)と、2回しかワクチンを接種しなかった参加者(非ブースター群)との間の感染、
および重症疾患の割合を比較しています。


纏めますと、


 1) 60歳以上のイスラエル居住者で、少なくとも5ヶ⽉前(すなわち,2021年3⽉1⽇以前)に
    ファイザーワクチンの完全ワクチン接種(2回接種)をした1,186,779⼈を対象としています。
    ブースター接種してから、効果が明白になるまでの期間を12⽇としています。
    なお、途中で3回目の接種を希望した人も、ブースター群に入れています。
    12⽇間という期間の根拠は、ワクチン接種後に抗体ができるまでの7⽇間と、
    感染の検出時間の5⽇間が含まれています。


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 2) 非ブースター群では、約520万⼈⽇(重症疾患の解析では460万⼈⽇)が含まれ、
    確認された感染は4,439⼈、重症疾患は294⼈でした。
    ブースター群では、約1,060万⼈⽇(重症疾患の解析では630万⼈⽇)が含まれ、
    確認された感染は934⼈、重症疾患は29⼈でした。


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     (発生症例が少ない場合は比較が困難なため、観察人時 person-time;今回は%
     person-daysを用いています。暴露された期間×人数です。それに、発生症例を割れば
     頻度が出るとの事です。
 
     上の表からは、4439÷5193825が非ブースター群の感染頻度となります。
     934÷10603410がブースター群の感染頻度です。両者を比較すれば、ブースター効果が
     単純に分かりますが、時間列と正確に分析するにはポアソン回帰分析が必要となります。
     ここまでくると、どうでも良くなってしまいます。)

     ポアソン回帰分析を行いますと、感染の割合は、ブースター群が非ブースター群に⽐べて
     11.3 倍も低下していました。
     重症疾患の割合は、ブースター群のほうが非ブースター群よりも19.5倍低下しています。



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     (結局は、3回目のブースターにより感染は10倍効果があり、重症化は20倍減少効果が
     デルタ株の場合でもあると理解します。)




私見)
 本論文で3回目のブースター効果はあるようですが、それによる有害事象の報告がありません。
又、報告論文がありましたらブログします。












posted by 斎賀一 at 17:33| Comment(1) | ワクチン