コロナ禍での小児の重症糖尿病の発生
The SARS-CoV-2 pandemic is associated with increased severity
of presentation of childhood onset type 1 diabetes mellitus:
A multi-centre study of the first COVID-19 wave
of presentation of childhood onset type 1 diabetes mellitus:
A multi-centre study of the first COVID-19 wave
若い人のT型糖尿病(インスリン注射が絶対的に必要な糖尿病)は、ある日突然発症します。
T型糖尿病は、膵β細胞の破壊によるインスリンの絶対的不足が原因です。自己免疫機序の関与する
自己免疫性(1A型)と、自己免疫機序の関与が明らかでない特発性(1B型)に分類されています。
また、1A型をさらに急速進行型(rapidly progressing form)と、緩徐進行型(slowly progressing form)に分類することもあります。
一般的なU型糖尿病は体質、つまり遺伝的要因が強いのですが、T型糖尿病は感染症が原因との事も
指摘されています。
uptodateによりますと
(ウイルスは、直接感染してβ細胞を破壊するか、これらの細胞に対する自己免疫攻撃を誘発することに
よって、動物モデルで糖尿病を引き起こす可能性がある。1型糖尿病を発症してから、数週間以内に死亡
した75人の患者の膵臓組織におけるコクサッキー、EBウイルス、流行性耳下腺炎、またはサイトメガロ
ウイルスからの急性または持続性感染の証拠は見つからなかった。
しかし、いくつかの異常な形態の糖尿病は、多数のβ細胞におけるコクサッキーウイルスの存在と関連
している。)
このコロナ禍で、重症T型糖尿病が見過ごされている可能性を指摘した論文が発表になっています。
簡単に纏めますと
1) 18歳以下に発生したT型糖尿病を調べています。
期間は2019年7月1日から2020年3月22日までのコロナ流行前と
2020年3月23日から2020年6月30日のコロナ流行時での発生を比較しています。
通年で1年間を調べています。
2) 結果はグラフで示します。
T型糖尿病の発生は、コロナ流行前は3.5例/月に対して、コロナ流行時では4.9例/月と増加傾向
ですが、問題なのは重症例、つまりケトアシドーシス症例(DKA)が流行時において、10%から47%
に増加している点です。
本研究では、実際にコロナに感染した人は確信例で1人/17人でした。
3) 考察として
新型コロナウイルスが何らかの免疫機能により、膵β細胞に働きT型糖尿病を発症したことも想定
されますが、多くはコロナ流行により医療機関の受診を手控えることに起因するものと思われます。
私見)
小児のT型糖尿病は、一歩間違えば死に至る病です。
しかしその診断は重症例なら尚の事、苦慮することがあります。
コロナ禍では疾患の診断の遅れが他にも多くあるものと思われます。
新型コロナは実地医家にとって、忍耐と知略を振り絞る段階を迎えようとしています。
コロナ 小児 糖尿病.pdf