2021年06月29日

ペースメーカー、植込み型除細動器とスマホ

ペースメーカー、植込み型除細動器とスマホ
 
Do Magnets in Consumer Electronics Disable Implanted Medical Devices?



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 雑誌JAMAに、ペースメーカーなどの植え込み型の医療機器に対する注意が掲載されていましたので、
ブログします。


・FDAの関係者は、携帯電話や高電界強度の磁石を備えたスマートフォンなどの家電製品が、医療機器
 を埋め込んだ人々に、深刻なリスクをもたらすとは思われないと述べています。

・しかし、強力なマグネットを含む製品がさらに市場に出ると予想されるため、FDAはペースメーカーや
 植込み型除細動器などを使用している消費者に、注意を促しています。
 これはデバイスも磁場を使用するため、強力なマグネットデバイスに近づくと、機能が変化してマグネット
 ・モードになるかもしれません。しかし強力なマグネット(電子機器)を離せば、通常のモードに戻ります。

・スマートフォンなどはポケットに入れないで、ペースメーカーなどのデバイスから15cm離しておくことが
 大事です。




※参考までに、マグネット・モード〔magnet mode〕とは

 磁石がペースメーカーの上に置かれたとき、自動的にペースメーカーがとるモードの事で、通常は磁石
 がペースメーカーの上に置かれている間は、固定レート・モードになります。
 そもそも、誤作動といってもペースメーカーが停止するわけではありません。
 強力な磁力の元ではマグネットレートといって、ペースメーカー本体の初期設定モードで動くように
 できています。主にバッテリー残量のチェックに使われます。
 個別に細かく設定していたペースメーカーが最低保障の設定に戻るので、そこでいささか不快に感じる
 人が出てくるかもしれませんが、ペースメーカーが機能停止するわけではないです。






私見)
 指幅で15cmを決めておくことも一案です。






Do Magnets in Consumer Electronics.pdf














posted by 斎賀一 at 18:36| Comment(0) | 循環器

2021年06月26日

ブレイクスルー感染

ブレイクスルー感染

 <今日的意味>
 
Vaccine Breakthrough Infections with SARS-CoV-2 Variants
n engl j med 384;23 nejm.org June 10, 2021



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 ワクチン接種を完了しても、コロナウイルスに感染してしまう場合があります。
これを「ブレイクスルー感染」と呼びます。
⽶国Rockefeller⼤学のSARS-CoV-2mRNAワクチンを2回接種完了した同⼤学職員のうち、2週間
以上経過してからCOVID-19を発症した⼥性職員が、2⼈⾒つかったと報告しています。
2⼈が感染していたウイルスは、複数の変異を有していました。この報告は2021年4⽉21⽇のNEJM誌電⼦版にすでに掲載されました。
内容はインド変異株以前の報告ですが、重要な点を指摘していますので遅まきながらブログします。


・ワクチンの2回接種を終えたRockefeller⼤学の職員417⼈に対して、接種完了後2週間以上が経過
 した時点から週1回ずつPCR検査を行いました。追跡期間中に2⼈の⼥性がCOVID-19を発症、
 PCR検査の結果が陽性になっています。

・患者@は51歳の健康な⼥性で、COVID-19の重症化の危険因⼦は保有していなかった。
 2021年1⽉21⽇にモデルナ社のワクチン(mRNA-1273)の初回を接種し、2⽉19⽇に2回目の接種
 を受けた。2回目接種の10時間後にインフルエンザ様の筋⾁痛が発症したが、翌⽇には消失した。
 ⽇常⽣活上の感染予防措置は厳格に⾏っていた。
 2回目の接種から19⽇後の3⽉10⽇に、喉の痛み、⿐づまり、頭痛が⽣じ、その⽇の⼣⽅に⼤学で
 PCR検査を受けたところ、SARS-CoV-2陽性と判定された。
 翌11⽇には嗅覚が失われたが、症状は週間ほどで軽快した。

・患者Aは65歳の健康な⼥性で、やはりCOVID-19の重症化の危険因⼦は保有していなかった。
 1⽉19⽇にファイザー社のワクチン(BNT162b2)初回接種を受け、2⽉9⽇には2回目の接種を
 受けた。 接種した腕の痛みは2⽇間続いた。
 3⽉3⽇、ワクチン未接種のパートナーがSARS-CoV-2陽性と判明した。
 3⽉16⽇になって、倦怠感、⿐づまり、頭痛が現れ、ワクチン接種から36⽇後となる3⽉17⽇には症状
 が悪化したため、PCR検査を受けたところ、SARS-CoV-2陽性が確認された。
 それ以上の症状悪化は⾒られず、3⽉2⽇から回復に向かった。

・患者@が感染した変異株について、ウイルスの全ゲノムを分析したところ、スパイク遺伝子に認められた
 変化は、既知の英国B.1.1.7系統のウイルスやB.1.526系統のウイルスと近縁ではあるが異なること
 を⽰した。
 解析結果は、患者@のサンプルからは、T95I、del142-144、D614G、E484Kなどを含む変異が
 ⾒つかり、患者Aからは、T95I、del142-144、D614G、S477Nなどを含む変異が⾒つかった。
                                   (以上、日経メディカルより参照)

・患者@から採取した⾎清を⽤いて、野⽣型ウイル、E484K変異、B.1.526変異株に対する⾎清の
 有効性をさらに検討したところ、⾎清はそれぞれに対して同等の有効性を⽰した。(Figure 4)
 これらのデータから、患者@の抗体反応はこれらの変異株を認識していたが、それでもブレイクスルー
 感染を防ぐには不⼗分であったと考えられる。




          30626-2.PNG


  
 上の図を解説しますと、左より新型コロナ感染から回復した患者の感染後1.3か月の抗体値、6.2か月
 後の抗体値。ワクチン2回接種後のRockefeller⼤学職員の抗体値、患者@の2回接種後の新型
 コロナ感染による抗体値です。
 Rockefeller⼤学でのワクチン接種による抗体値は、451とほぼ完全に抗体は作られているようです。
 患者@はそれでも変異株に感染していますが、感染によるブスター効果によって抗体値は3,209と
 跳ね上がっています。
  




          30626-3.PNG



    上の図は患者@(patient1)のウイルスの系譜は20Bの様ですがはっきりはしません。
    患者Aは、この系譜の分類はできない変異株です。


・考察;
 患者@もAも、ワクチンにより抗体は十分にあったものと思われます。
 感染前後の抗体値は判明していませんが、2回目の接種によるブスター効果の前に感染してしまった
 ことも可能性としてはあります。
 患者@は感染のブスター効果により、抗体は高値となっています。
 現在は変異株に対する防御を強化するために、新しいワクチンブースター(およびpan-coronavirus
 vaccine)を推進する取り組みも始まっています。






私見)
 本論文を読んで個人的妄想を記載しますと

 ・変異株といっても、はっきりした系譜を描けない雑多な変異株のグラデーションがあるかもしれない。
  オリンピック株はそのような雑多な変異株の可能性があります。
  それはワクチンによる抗体からブレイクスルーする例が、少数ながら発生する危険性があります。

 ・ワクチンの2回接種は必須であり、さらにマスクなどの十分な個人的対策も本年中は大事です。
 ・子供の頃、初めて観戦した大相撲も巨人戦も、あまりの静けさにびっくりしました。
  そりれにひきかえ、テレビのない子供の頃のラジオ中継で吉葉山戦に興奮したり、受験勉強中に
  ラジオをつけっぱなしにして長嶋を応援した思い出があります。
  国立競技場は無観客で場内に実況中継をガンガンならせばよいのです。
  我々はマスクを外してテレビ中継を楽しみましょう。













posted by 斎賀一 at 18:17| Comment(2) | 感染症・衛生

2021年06月23日

インド変異株とワクチン・その3

インド変異株とワクチン・その3

The delta variant of SARS-CoV-2:What do we know about it?
 


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 Medical News Todayにデルタバリアント(インド変異株)ついて記事が載っていましたので、纏めてみました。

・ワクチン接種率が低い国では、インド変異株が置き換わっているとの報告です。
・インド変異株はスパイク蛋白に関係する部位の変異のため、ウイルスが健康な細胞に侵入しやすくなり
 感染力が高まっています。
・症状は従来の新型コロナと異なり、感冒が重い感じです。
 頭痛、咽頭痛、鼻水などの非特異的です。
・mRNAワクチン(ファイザーとモデルナ)は、2回接種にてインド変異株に対して88%の効果が
 ありそうです。アストロゼネカは60%と推定されています。
・変異株に対してすでにファイザー、モデルナ、アストロゼネカの各社は今年の秋までには新たなワクチン
 を提供できるとしています。6週間もあれば、新しいワクチンは開発できるようです。
 問題は申請許可と言われています。又、インフルエンザワクチンの様に、多価ワクチンの研究も
 され始めています。従来のワクチンによるブスター効果と、それに新しいワクチンを混合することにより
 変異株への効果が、期待されます。
 新たなワクチンを開発するよりは、ブスター効果の方が有効との考えもあります。変異株は今後も
 継続し出現する脅威があります。ワクチン全般において、多価ワクチンの必要性が増しています。
・ファイザーとモデルナでは、3回目の接種の量と、時期を検討し始めています。








私見)
 近い将来、ワクチン接種の風景は様変わりしているかもしれません。
 ワクチンの2回接種を急がなくてはなりません。インド変異株より恐ろしいオリンピック株が襲ってきます。
 2回接種しても今年いっぱいは自粛が必要のようです。







SARS-CoV-2 delta variant_ Differences and risks.pdf





 
posted by 斎賀一 at 13:39| Comment(0) | 感染症・衛生