2021年05月31日

血圧の強化療法と標準療法の比較試験の最終報告 Sprint研究の完全版

血圧の強化療法と標準療法の比較試験の最終報告
 Sprint研究の完全版
 
Final Report of a Trial of Intensive
versus Standard Blood-Pressure Control
N Engl J Med 2021;384:1921-30.



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 以前の私のブログでも紹介しましたが、収縮期血圧は120を目標にしたほうが予後が良いとするsprint研究の最終報告が、今になって雑誌NEJMに載っています。
多分、研究終了後に予後が判明する場合もあり、今回の最終報告となったものと思います。
本研究は2010年11月より2015年8月20日のまでの平均で3.33年の経過観察を行っていますが、更に試験終了後の2016年7月29日まで追跡し、追加で解析しています。


纏めますと

1) 50歳以上の収縮期血圧が130から180の人で、且つ一つ以上の心血管疾患のリスクのある人
   (心血管疾患を有する、eGFRが20から59の慢性腎臓病、10年リスクが15%以上、75歳以上)を
   対象にしています。
   75歳以上が28.2%、慢性腎臓病が28.3%、心血管疾患は20.0%でした。
   除外基準は糖尿病、脳卒中の既往、認知症です。
   9,361人を血圧の目標を120以下とした強化群と、140以下とする標準群に1対1で振り分けて
   います。
   主要転帰は、⼼筋梗塞、その他の急性冠症候群、脳卒中、急性⾮代償性⼼不全、⼼⾎管死の複合
   としています。

2) 結果
   主要転帰の発⽣率と全死因死亡率は、強化治療群のほうが標準治療群よりも有意に低かった。
   (主要転帰の危険率は0.73、全死因死亡率の危険率は0.75)




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          追跡調査後(2016年7月29日まで)のデータは下記
          この場合は実地医家が年に4回診察しています。



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          介入試験中の最初のデータは下記(2015年8月20日まで)



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 最初の報告と追跡調査後を比較しますと、その違いは

・追跡調査後の方が血圧が6.9上がっている。
 強化群と標準群の差は少なくなっており、非代償性の心不全に関しては強化群の方で多くなって
 います。

・慢性腎臓病のある人では強化群と標準群で差はないが、腎機能が正常の場合は強化群の方が危険率
 が高く、その低下は早期に認められている。しかし追跡調査後ではその危険率は下がっている。
 強化群での服薬の減少が原因としています。
 更に薬剤による腎障害は、強化群の方で頻度が高い。

・心不全に関しては追跡調査後で強化群の方が危険率が上がっている。
  (2つの上の表の赤線部分を比較してください。)
 0.63から2.34と増加しています。その説明として追跡調査後では強化群で服薬の減少、特に降圧
 利尿薬の中止が関与しているものと推測していますが、明白なエビデンスはないとしています。

3) 副作用
   低血圧、電解質異常が主な原因です。
   症状としては失神発作が一番多く報告ですが、特に慢性腎臓病の人に認められています。







私見)
 高血圧治療における本院の戦略は
 ・原則として目標血圧は120以下ですが、高齢者に関してはテイラーメイドの対応が必要
 ・強化療法の場合は定期的な腎機能検査が必須
 ・強化療法では、当然ながら降圧利尿薬は併用薬の有力な薬剤
  標準治療に戻す場合は腎機能、心機能、代謝を総合的に勘案する。
 ・心血管疾患のリスク評価を定期的に行う。








ブログより.pdf

ブログより 2.pdf









posted by 斎賀一 at 21:49| Comment(1) | 循環器

2021年05月26日

片頭痛を悪化させる食品は?

片頭痛を悪化する食品は?

 Which foods help prevent migraines?



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 花と食品の名前はいつもチンプンカンプンです。
レストランで写真があっても、どんな食べ物か女房に聞かなくてはなりません。

 片頭痛を悪化させる食品の記事がネットのmedical news todayに載っていましたので、私が理解
できる食品のみ記載します。
  
1) 明白な片頭痛と関連する食品は分かっていません。しかも個人差があります。
   (過敏性腸症候群でも述べましたが、根気よく時間をかけて、完全除去より少しずつ解除する以外
    にないようです。ただし片頭痛の場合は栄養の面をあまり考慮しなくてもよいかもしれません。)

2) カフェインに関しては、適量なら片頭痛の予防になります。
   基本的には1回に100mgとされています。コーヒーではカップ1杯です。
   (私の好きなオロナミンやリポビタンは50mgですが、注意が必要なのはエナジードリンクです。)
   問題は、これより多く摂取すると離脱症状で片頭痛が悪化する事です。
   つまりコーヒーを好みで3杯以上飲むとコーヒーが切れた頃に片頭痛が起こるかもしれません。

3) 新鮮な食品には、グルタミン酸ナトリウム(MSG)などの食品防腐剤を添加していないため安全です。
   防腐剤は一部の人々の片頭痛を引き起こす可能性がありますので、それらを含む食品を避けること
   が必要です。

4) パン類で避ける食品は
   チェダーチーズクラッカーなどのフレーバークラッカー
   自家製または食料品店のパン屋の生きたパン
   ピザ、新鮮なパン
   風味の高い、または味付けされたチップ
   ソフトプレッツェル

5) 肉、ナッツ、種子で避ける食品は
   牛肉と鶏の肝臓
   パン肉
   マリネ肉
   フレーバーポップコーン
   ナッツバター

6) サラダドレッシングとソースで避ける食品
   ボトル入りサラダドレッシング
   あらかじめ包装されたディップ( サルサ、アルフレドソース、マスタードディップなど)

7) 野菜と果物で避ける食品
   箱詰めインスタントマッシュポテト
   亜硫酸塩保存剤を含むドライフルーツ
   柑橘類
   リマ豆
   ネイビービーンズ
   ザワークラウト
   玉ねぎ
   いくつかの果物はまた、花粉や他の化合物を含む可能性があります。
   これらは片頭痛を引き起こすかもしれません。ヒスタミン放出を引き起こす可能性があります。
   たとえばバナナ、オレンジ、グレープフルーツ、ラズベリー、プラムなどがあります。

8) その他
   熟成チーズ
   アルコール、特にビールと赤ワイン
   チョコレート
   硬化肉
   硝酸塩、亜硝酸塩、MSG、人工甘味料などの食品防腐剤
   燻製魚
   酵母エキス

9) 全く何も食べないことも偏頭痛の発生率の増加につながることがあります。
   低血糖レベルと片頭痛の悪化との間に関連性があります。
   食べ物に対して即座に反応する人もいれば、食後24時間まで反応しない人もいることも注目
   されます。

以上、食品名はグーグル翻訳です。






私見)
 疑わしき食品を1週間除去して経過をみます。その後少量づつチャレンジします。








Foods for migraine_ Prevention, triggers, and relief.pdf












posted by 斎賀一 at 20:05| Comment(1) | 脳・神経・精神・睡眠障害

食物によるアナフィラキシーの原因

食物によるアナフィラキシーの原因

 
Global patterns in anaphylaxis due to specific foods:
a systematic review



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 世界規模での食物アレルギーにおけるアナフィラキシーの調査が進行中です。
アナフィラキシーを引き起こす8つの食物アレルギーが、以前から知られていました。
小麦、甲殻類、卵、魚、ピーナッツ、大豆、牛乳、ナッツです。
これらはアナフィラキシーの原因の90%を占めていました。しかしそれらが確定されたのは、今から十数年前の事です。
現在では十分なデータは限定的です。世界規模で考えますと、その地域差は明白のようです。
世界的には牛乳、魚、甲殻類、ピーナッツ、ナッツが一般的ですが、アメリカとヨーロッパではピーナッツとナッツが多く、一方でアジアでは稀のようです。
小麦は世界では稀ですが、中国ではアナフィラキシーの原因として多いようです。
アジアでは魚と甲殻類が一般的ですが、アメリカではピーナッツの頻度が高いようです。
大豆は世界的にその頻度は少ないとのことです。







私見)
 アナフィラキシーは実地医家にとって重要な病態です。
 しかし単なる食物アレルギーの場合でも、日本は世界と異なる印象を持っています。








Global patterns in anaphylaxis due to specific foods_ a systematic review.pdf









posted by 斎賀一 at 19:21| Comment(0) | 喘息・呼吸器・アレルギー