2021年04月10日

一過性脳虚血発作の従来型と単一症状型の比較(classic TIAとnon-consensus TIA)

一過性脳虚血発作の従来型と単一症状型の比較
(classic TIAとnon-consensus TIA)
Diagnosis of non-consensus transient ischaemic attacks with focal,
negative, and non-progressive symptoms


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私が医者になりかけの時は、一過性脳虚血発作は真の脳梗塞とは異なり、一日で症状が回復
すればあまり心配ないと言われていました。確かに、この時代には脳出血が脳梗塞より多い時代
でもありました。
しばらくすると、一過性脳虚血発作は脳梗塞の前触れであり、十分に管理治療が必要といわれて
久しい感じです。
それでも一過性のめまいやふらつきは、脳梗塞に移行する危険が少ないと言われ、
私も管理治療の下位にランクしていました。今回雑誌lancetから、従来型の一過性脳虚血発作(classic)と、単一症候型(non-consensus)を前向き試験でその予後を比較した論文が掲載され、注目されて
います。


 1) classicとは
   
    ⼀過性に⽚側脱⼒、⾔語障害、視野障害などの局所神経症状を⽰し、その神経徴候が、
    24時間以内に消失する疾患と教科書的には記載されていますが、
   
    本論文の定義を示しますと、

    ・運動機能低下
      1つ以上の体節(顔、腕、手、下肢)に一過性の運動機能低下が突然発症する
    ・失語症
      一過性の表現型、または受容性失語症、あるいはその両方の突然の発症
    ・知覚異常
      2つ以上の体の部分(顔、腕、手、または下肢)
    ・半盲または四半盲
      視野の一部における一過性の視力喪失の突然の発症(同名半盲または四半盲)
    ・単眼視力喪失
      一過性単眼視力喪失の突然の発症
    ・眩暈プラス
      一過性めまいと他のTIA症状の突然の発症
    ・複視プラス
      一過性複視と他のTIA症状の突然の発症
    ・構音障害プラス
      一過性構音障害と他のTIA症状の突然の発症
    ・運動失調プラス
      一過性運動失調と他のTIA症状の突然の発症

 2) non-consensusとは
   
    ・めまいのみ
      新しい発生の単一のめまいの突然の発症(悪心または嘔吐有無に関係しない)
      頭の動きや頭部外傷によらない、耳痛、耳鳴り、
      または難聴を伴わない; 非特異的なめまいやふらつきも除外
    ・運動失調のみ
      他の原因のない歩行の一時的な不安定性の突然の発症
    ・複視のみ
      一過性の単一の両眼複視の突然の発症
      眼球(例、網膜剥離)または神経筋病気を除外
    ・構音障害のみ
      一過性の単一の不明瞭な言語
    ・両側性の視力低下のみ
      一過性の孤立した両側性視覚障害の突然の発症(半盲または
      四半盲)で関連する随伴症状はなし
    ・単一セグメントの感覚障害のみ
      単一の体節(顔、顔、腕、手または下肢)のしびれで進展しない

 3) 年齢は制限せずに、全ての脳卒中と急な発症の一過性の神経症状を呈した92,728人の患者を
    登録して前向き試験で予後を調べました。
   
    それぞれを
    ・軽症脳梗塞(minor stroke)
    ・従来型一過性脳虚血発作(classic)
    ・単一症候型(non-consensus)の3種類に分類しています。
   
    その後の診察は、1か月、6か月、1年、5年、10年と行っています。
    脳卒中のリスクを7日後、90日後、10年後に評価しています。
    経過時間は発症からと受診時からの両方で解析しています。

    minor strokeが2,878人、classicが1,021人、non-consensusの570人が対象となりました。

    第一段階では、直接主要病院に受診して神経学的評価をしています。
    その後、第5段階のプライマリー医師の診察まで行っています。

    2002〜2009年はCT検査と頚部エコーが主体です。
    2009年からはMRI、diffusion image、MRAを行っています。
    2011年からは食道エコー内視鏡、5日間の心電図モニタリングも行っています。

 4) 2002年から2018年まで間に577人が脳卒中の再発を起こしています。
    最初の発作から(index event)90日後のリスクを評価すると、
    その危険率は、classic型が11.6%で、non-consensus型が10.6%とほぼ同じでした。
    しかし、初期の受診率はclassic型が75%に対して、non-consensus型は59%と低率です。
    10年後の心血管疾患の発生は、classic型が30.9%で、non-consensus型が27.1%と
    これも同程度です。
 
 5) non-consensus型も、一過性脳虚血発作として扱うと50%の症例数の増加となりますが、
    早期の治療開始に繋がります。
    本論文にも図譜が載っていますが、non-consensus型の的確な診断はdiffusion imageが
    必須ですが、全例にこの検査を行うことは不可能です。
   
    non-consensus型の診断は、注意深い問診と神経学的検査に頼る以外にありません。
    (細かい解析は省略しますが)
    
    ・非定型としても十分な神経学的評価が大事
    ・患者が症状を認識していないか忘れてしまう前にしっかり診断する
    ・長期にわたる患者との直接的な診察が大事
    ・局所的な単一症状に注意してnon-consensus型を拾い上げること
    ・高齢者では無症状の事があり画像診断でsilentである


私見)
 微細な単一症状に注意してnon-consensus型を認識し、診断することが大事です。
    ・画像診断を依頼する
    ・動脈硬化の評価をする(下図は今日の臨床サポートより)

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    ・患者さんとのコンサルトにより、抗血小板薬の服用に関してのベネフィットとリスクを相談する。




TIA lancet.pdf




posted by 斎賀一 at 18:00| Comment(2) | 脳・神経・精神・睡眠障害