2021年03月19日

アナフィラキシーの診断基準

アナフィラキシーの診断基準
 
BrightonとNIAID/FAAN基準



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 以前のブログでも紹介しましたが、代表的な診断基準はBrightonとNIAID/FAANの二つのようです
が、ゴールドスタンダードはないとの事です。
 新型コロナワクチンにおける厚労省のアナフィラキシーの報告は、Brighton基準に則っています。
ネットで厚労省のBrighton基準を手に入れましたが、よく理解できないため原文から私なりに纏めて
みました。
残念ながら似たり寄ったりの出来栄えです。でも職員の皆さんに説明する際は自分の方が納得している分、良いかもしれませんのでブログします。
尚、NIAID/FAAN基準は先のブログで掲載しましたので参考にしてください。


#Brightonの診断基準
<アナフィラキシーの症例定義>
 診断の必須条件としては
 ・急な発症 ・症状や所見が急激な進行性 ・2つ以上の臓器障害です。

 診断確実性のレベル1
 ・1つ以上のメジャーな皮膚症状
 ・且つメジャーな循環器症状、またはメジャーな呼吸器症状

 診断確実性のレベル2
 ・メジャーな循環器症状且つメジャーな呼吸器症状
 ・メジャーな循環器症状、またはメジャーな呼吸器症状とそれぞれ別の臓器のマイナーな症状が、
  2つ以上の組み合わせ
 ・メジャーな皮膚症状とマイナーな循環器症状、またはマイナーな呼吸器症状

 診断確実性のレベル3
 ・マイナーな循環器症状またはマイナーな呼吸器症状と、それぞれ別の臓器のマイナーな症状の組み
  合わせ
  (現実的にはマイナーな皮膚症状があれば更にマイナーな循環器症状か、マイナーな呼吸器症状が
   追加されればレベル3)

 結局はメジャーな皮膚症状があり、マイナーな循環器症状か呼吸器症状が加わればレベル2以上
 マイナーな皮膚症状なら、メジャーな循環器症状か呼吸器症状が加わればレベル3以上


<メジャーなクライテリア>
 皮膚粘膜症状
 ・全身の蕁麻疹または全身の紅斑
 ・局所または全身の血管浮腫
 ・発疹を伴う全身の掻痒感

 循環器症状
 ・低血圧
 ・非代償のショック
 次のうちの少なくとも3つを伴う 
 ・頻脈、・3秒以上のcapillary refill time、・意識の低下または意識消失、・central pulse
  volumeの低下

 呼吸器症状
 ・両側性の喘鳴 ・stridor ・口唇/舌/咽頭/口蓋垂の腫脹 ・呼吸障害 
  次のうちの2つ以上
  過呼吸 陥没呼吸 チアノーゼ 努力呼吸

<マイナーなクライテリア>
 皮膚症状/粘膜症状
 ・発疹を伴わない全身性掻痒感
 ・ 全身がちくちくと痛む感覚
 ・ 接種部位の蕁麻疹
 ・いわゆる赤目

 循環器系症状
 ・末梢性循環不全(症状としては少なくとも以下の2つの組み合わせ)
  頻脈、3秒以上のcapillary refill time 、意識レベルの低下

 呼吸器系症状
 ・持続する咳嗽
 ・嗅声
 ・呼吸苦、呼吸困難
 ・喉の閉塞感
 ・くしゃみ、鼻汁

 消化器系症状
 ・下痢
 ・腹痛
 ・悪心
 ・嘔吐



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#NIAID/FAANの診断基準
 ・診断基準1;⽪膚粘膜症状(S)が急速(数分から数時間)に出現し、気道(A)、呼吸(B)、循環(C)
  のいずれか1症状以上を伴った場合は、アナフィラキシーと診断する。
  アナフィラキシーの80%以上がこの基準を満たす。

 ・診断基準2;⼀般的にアレルギーの誘因となり得る物質への曝露後、気道(A)、呼吸(B)、循環(C)
  消化器(D)⽪膚(S)のいずれか2症状が急速(数分〜数時間)に出現したら、アナフィラキシーと
  診断する。

 ・診断基準3;既知のアレルゲンに曝露後、急速(数分〜数時間)な⾎圧低下が11歳〜成⼈では
  <90mmHg、または、全年齢で平常時収縮期⾎圧の<70%)がみられる。




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私見)
 本院では、NIAID/FAAN診断基準に基づいて迅速に対応しましょう。
 ただBrighton診断基準のマイナーな症状も、理解しておくことが大事です。
 このことから、接種の事前問診をこの診断基準にそって本院並みに作成してください。
 例えば、血圧、脈拍、呼吸器疾患の既往歴に関しての聴診所見、薬の服用、花粉症などです。






1 Brighton基準.pdf

2 NIAIDFAAN基準.pdf

3 厚労省Brighton.pdf







posted by 斎賀一 at 19:30| Comment(2) | 喘息・呼吸器・アレルギー

2021年03月16日

アナフィラキシーの再々勉強

アナフィラキシーの再々勉強



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Uptodateにて再々勉強をしましたが、やはり曖昧に認識していた点をuptodateは明解に答えて
くれます。

1) アナフィラキシーとは食物、薬剤、昆虫などに対して免疫グロブリンのIgEが反応し、更にmast
   cell(マスト細胞)が脱顆粒を起こし、そのサイトカインが全身に広がるためである。
   時に直接マスト細胞がアレルギー物質に反応する場合もある。

2) アナフィラキシーの症状は多岐にわたり、しかも非定型でもあるため、慎重に迅速に診断しなければ
   生命にかかわる病態である。
   真っ先にエピネフリン注射が第一選択である。
   抗ヒスタミンやステロイド剤も第二選択としてあるが、これらは生命予後に関与するほどの効果は
   期待できない。

3) 診断の基準(クライテリア)は、下記の3つのうちの一つでも満たされれば診断の精度は高い。
    (診断基準については次回改めてブログしますが、uptodeteではNIAID/FAANの診断基準を
     取り扱っています。)





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@ 数分から数時間で急に発生する皮膚又は粘膜、もしくは両方の症状(全身の蕁麻疹、掻痒感、紅潮、
   口唇と舌と口蓋垂の腫れ)と、少なくとも下記の一つの症状を伴う場合
   ・呼吸器障害(呼吸困難、喘鳴wheeze stridor、低酸素)
   ・血圧低下とそれに関与する症状 めまい 失神 失禁
   アナフィラキシーにおいて皮膚症状は90%出現するので、このクライテリアの精度は高い。

A アレルギー物質に晒されて、急に起こった下記の2つ以上の症状
   ・皮膚粘膜症状
   ・呼吸器障害
   ・血圧低下及びそれに随伴する症状
   ・持続する消化器症状(腹痛、嘔吐)
   このクライテリアは、消化器系にアレルギー物質が晒される場合を想定しています。

B 血圧の低下
   収縮期血圧が90以下、もしくはベースラインから30%低下
   ・接種前に血圧を測定しておくことが肝要です。
    このクライテリアはアレルギー物質が明白な場合に適応されます。
    しかもたった一つの臓器、つまり循環器症状の血圧に絞っての診断です。

 以上、3つのクライテリアのすべて満たさなくても迅速かつ適切にアナフィラキシーを診断し、エピネ 
 フリン注射を実施しなくてはなりません。
 この診断方法は感度が95%で、特異度は71%です。


 もう少し詳しく症状を見ますと
  ・皮膚粘膜症状は90%出現します。
   全身の蕁麻疹、掻痒感、紅潮、口唇・舌・口蓋垂の腫脹、眼瞼浮腫、結膜浮腫・充血です。
   しかしこれらの症状は時間とともに消失し、診断を誤ることがあるので十分な問診が大事です。
  ・呼吸器症状は85%に出現します。
   鼻漏、鼻閉、くしゃみ、咽頭や耳のかゆみ、声がかすれる、喉の閉塞感、喘鳴、咳などです。
  ・消化器症状は45%に出現します。
   嘔気、嘔吐、下痢、腹痛発作
  ・循環器症状は45%に出現します。
   循環障害・collapse、失神、失禁、めまい、頻脈、血圧低下


診断の落とし穴 pitfalls
アナフィラキシーの診断は容易ではありません。過少診断の傾向です。
・ある臨床家は低血圧やショックがないと、なかなかアナフィラキシーの診断を下さない傾向です。
 早めの診断が、その先の重大な段階を阻止します。
・血圧低下は、最初は頻脈のために覆い隠されてしまう場合があります。
 またエピネフリン注射の後では、血圧は回復していることもあり低血圧があったか不確かとなります。
・低血圧や低酸素症ははっきりした症状でなく、呼吸困難、喘鳴、意識障害、見当識障害、失禁などの
 非特異的症状の場合があります。
・皮膚症状は診断の要ですが、10%が認識されなかったり、訴えなかったり、見逃されたりしてしまい
 ます。
・喘息の既往のある人は、いつもの喘息だと思って他の症状との合併だと思わない傾向があり、ショックの
 前段階との認識がない事もあります。
・その他の基礎疾患、つまり認知症、抗不安薬服用、抗アレルギー薬の服用、が症状を見誤ってしまい
 ます。 (花粉症の時期は特に注意が必要です。)


基礎疾患の問題
・持続性の喘息 ・CPOD ・心血管疾患 はアナフィラキシー反応を増悪させます。
・βブロッカー(経口薬と点眼薬)、降圧剤のACE阻害薬はアナフィラキシー反応を増悪させるとの報告が
 ありますが、新しいエビデンスありません。
 しかしβブロッカーとACE阻害薬の併用は現在でも十分に注意が必要ですし、特にβブロッカーはエピネ
 フリン注射の効果を減弱します。
・鎮痛解熱剤(NSAIDs)や麻薬鎮痛薬(オピオイド)は、マスト細胞を賦活化させます。


治療に関して

・失神で倒れ掛かった人を抱きかかえるのは、小さな親切大きな迷惑です。
 循環障害・collapseが起きているので、そっと寝かせて足を高くしてあげることが大事です。
・エピネフリン注射が基本です。注射部位は大腿中央外側、つまり外側広筋と明言しています。




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グルカゴンについて 
・βブロッカーを服用している人は、エピネフリン注射の効果が減弱していると言われていますが、789人
 のエビデンスではエピネフリン注射の効果は充分にあり、追加のエピネフリン注射は必要ありません
 でした。
 そのため第一選択はあくまでもエピネフリン注射です。グルカゴンは第二選択です。
 グルカゴンの静注は、5分かけてゆっくりと1~5rを投与します。
  (日本の文献では0.5〜1.0mgの筋注か静注となっています。)
・H1ブロッカー、H2ブロッカー、吸入気管支拡張薬、ステロイドは、エピネフリン注射の補完的な意味
 合いで、決して第一選択薬でもなければアナフィラキシーの生命予後に効果はありません。
 エピネフリン注射の後の症状緩和のために使用してください。
 抗アレルギー薬もエピネフリン注射の効果増強に役立ちますが、その使用はあくまでもエピネフリン注射
 の後に使用すべきです。





◆参考文献  UPTODATE

   Anaphylaxis: Acute diagnosis
   Anaphylaxis: Confirming the diagnosis and determining the cause(s)
   Anaphylaxis: Emergency treatment







私見)
 基礎疾患のある方は、ワクチンを控えたほうがいいといった話ではありません。
 アナフィラキシーを起こした場合に重症化の危険があるということで、これからワクチンを接種する場合
 とは別の次元と解釈してください。
 つまり、基礎疾患のある方はアナフィラキシーの診断のクライテリアを下げる必要があります。
 更に喘息の既往のある方は、呼吸器症状以外の症状が出現したら、アナフィラキシーと診断すべきかも
 しれません。もちろんβブロッカーは継続服用を指導します。
 次回のブログで診断基準を纏めてみたいと思います。







外側広筋.pdf












posted by 斎賀一 at 20:26| Comment(3) | 喘息・呼吸器・アレルギー

2021年03月15日

mRNAコロナワクチンの急性アレルギー反応

mRNAコロナワクチンの急性アレルギー反応
 
Acute Allergic Reactions to mRNA COVID-19 Vaccines
 

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 mRNAコロナワクチンは、ファイザーとモデルナが世界中で使用されています。
アナフィラキシー反応は100万人中2.5〜11.1人の発生と報告されています。
その発生頻度はアレルギーの既往があるかどうかによって異なってきます。
 ファイザーとモデルナの両方を纏めたデータが、雑誌JAMAに投稿されています。


1) 2020年12月16日から2021年2月12日までに1回目の接種した人を、2021年2月18日まで経過を
   見ています。接種後3日間の個人報告をメールや電話で行っています。

2) 急性アレルギー反応は・痒み・発疹・蕁麻疹・腫脹・呼吸器症状です。
   アナフィラキシーの診断基準はBrightonとNIAID/FAANの2つのクライテリアのどちらかを満たして
   いる時としています。

3) 1回目の接種を受けた64,900人が対象です。40%がファイザーで60%がモデルナでした。
   急性アレルギー反応は1,365例(2.10%)報告されています。
   ファイザーが1.95%でモデルナが2.20%と、ややモデルナの方が多いようです。
   アナフィラキシー反応に関しては、16例(0.025%)発生しています。
   ファイザーが0.027%でモデルナが0.023%と、ややファイザーが多いようです。
   アナフィラキシー反応を起こした人の平均年齢は41歳で、女性が94%です。
   63%の人に何らかのアレルギーの既往歴があり、31%が以前にアナフィラキシー反応を経験
   しています。
   アナフィラキシー反応は、平均で17分後に出現しています。
   1例(16例中)が集中治療室に入院し、9例がエピネフリン注射を受けています。
   全員が回復しています。

4) 結論的には、mRNAコロナワクチンの接種により98%にはアレルギー反応はありませんが、残りの
   2%は何らかのアレルギー反応がありました。しかし重度なアレルギー反応は2.47/1万人と稀です。
    (今までの報告の2〜5/100万人とはかなりの隔たりがあります。)
   世の中のアレルギーを持っている人を調べると、健康な人の5%に重度な食物アレルギーがあり、
   薬物アレルギーは1%存在するとしています。 (本当かいな)
   統計学的には分母、つまり接種者の人数によりその発生率はかなり隔たりが出てきます。
    (当然ですね)






私見)
 医療従事者のワクチン接種が始まっています。
 海外の報告よりも日本でのアナフィラキシー発生が多いとの報道です。
 しかし日本人だけが過敏ではありません。海外でもけっこう起こっているではないですか。
 自信を持ちましょう。
 ただし本報告の有害事象は10万人中25人です。
 (繰り返しますがCDCの報告では100万人中2〜5名です。)
 重度ではないにしても今までの日本神話からいうと、10万人中10人の重度な有害事象でそのワクチン
 は撤退していました。
 緊急事態でなければ本ワクチンはお蔵入りの可能性もあります。問題はアナフィラキシーの徹底した
 対策です。
 本院もアナフィラキシーについて再勉強しましょう。
 次回のブログで纏めてみます。






コロナワクチンのアレルギー反応JAMA.pdf













posted by 斎賀一 at 19:20| Comment(1) | 感染症・衛生