2021年03月31日

ファイザーとモデルナ・ワクチンのアナフィラキシー

 
ファイザーとモデルナ・ワクチンのアナフィラキシー
 
Anaphylaxis to vaccinations:
A review of the literature and evaluation
of the COVID-19 mRNA vaccinations



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 雑誌CLEVELAND CLINIC JOURNAL OF MEDICINE に新型コロナワクチンの総説が載っていま
したので、再度纏めてみました。


1) ワクチンの副反応全てが免疫機能に関連してはいない。
   免疫機能に関連する場合は、免疫グロブリンであるIgEを介して、アレルギー反応が数分か30分
   以内で起こる。
   その際の症状は蕁麻疹、腫脹、消化器症状、呼吸器症状、循環器症状など多岐にわたる。
   遅発性の場合は抗原が誘因となって(trigger)数時間から数日後に出現し、主に粘膜症状である。
   IgEの反応はワクチンの抗原(ウイルス)そのものでなく、他の構成成分によるアレルギー反応です。
   例えばワクチンの中にある卵や牛乳成分であったり、抗原の反応を高めるために入っているアジュ
   バンドであったりする。
   また、ワクチン滅菌のための防腐剤もアレルギー反応を起こすが、一般的には遅発性の局所反応
   です。

2) ファイザーとモデルナのワクチンによるアレルギー反応は、主にPEG関連の成分です。
   軽症で自然に軽快する掻痒感や蕁麻疹は、2回目接種に対して禁忌とはなりません。
   むしろ2回目の接種前に注意して、抗アレルギー薬を服用するのも選択肢です。
   24時間以上経ってからの発疹や局所反応はIgEとは関係がないと思われますので、2回目接種
   への注意事項とはなりません。
   (下記に本論文のCDCの推奨事項を日本語訳で掲載します。前回のブログで紹介したものと同じ
    です。接種時の問診の説明に使用しましょう。)




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私見)
 アナフィラキシーを起こす人の約半数は、以前に何らかのアレルギー反応を有する人です。
 しかし、本ワクチンとは直接的な関連性はありません。
 十分な体制を準備することが、多くの人へのワクチン供給に繋がります。








1 ワクチン推奨事項.pdf

2 Anaphylaxis to vaccinations.pdf

トリアージ.pdf

トリアージ2.pdf

ファイザーワクチン取り扱い.pdf








posted by 斎賀一 at 18:59| Comment(2) | 感染症・衛生

2021年03月29日

2歳以下の幼児でもマスクは安全・必要

 
2歳以下の幼児でもマスクは安全・必要
 
Assessment of Respiratory Function in Infants and Young Children
Wearing Face Masks During the COVID-19 Pandemic


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 今までのところ、乳幼児の新型コロナ感染は軽症との事でした。
しかし変異ウイルスの伝搬は、乳幼児にも広がる懸念があります。
乳幼児を含めた若年者層では、無症状患者の割合が高いのに、ウイルス量は咽頭に多く感染力が強いとされています。乳幼児を感染から守る意味合いと感染源としての遮断の観点から、乳児のマスクの着用を検討した論文が、イタリアより雑誌JAMAに投稿されています。
論文の規模は小さいのですが、今までの固定観念から解き放たれるきっかけになりそうです。


1) 従来はアメリカのCDCやアメリカ小児科学会(APP)のガイドラインからは、3歳以下のマスクの
   着用を勧めていませんでした。 (以前の私のブログもご参照ください。)
   理由としては、子供ではマスクの不都合や呼吸障害が生じた時に、自ら着脱ができないためとして
   いました。

2) 本研究では2020年5月より6月にかけて、事前に健康と診断された生後4か月から144か月の47人
   の乳幼児及び小児が対象となっています。
   それをグループA;4~24か月と、グループB;24か月~144か月に分けて調べています。
   Aは22人でBは25人です。
   それぞれ30分間、活発な自由行動のセッションがなされました。
   最初のセッションはマスクなしで、次のセッションはマスクを着用しています。
   合計で60分間の調査です。
   グループBの年長児では第3のセッションとして、マスクを着用したまま40メートルの廊下を
   12分間、できる限り活発にウォーキングで往復させています。
   15分ごとに60分間呼吸機能関連のデータを調べています。
   年長児のセッション3の後には、72分まで評価しています。




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3) 結果


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最初の30分間がマスクなしで、次の30分がマスクありです。合計60分間のデータです。
結果はマスクありなしでの相違が明白にはありませんでした。
PETCO2, partial pressure of end-tidal carbon dioxide; PI, perfusion index; PR,
脈拍数; RR, 呼吸数; SaO2, サチュレーション を表します。
PETCO2とPIは、早期の酸素取り入れに関する呼吸機能を表す最適な指標との事ですが、全て正常範囲
に推移しています。但しこれらの検査は、今後改良してからの採用が必要との事です。
 (残念ながら門外漢の私としては省略します。)

さて、結論的には活発なウォーキング後の脈拍数と呼吸数が変化しただけで、その他の呼吸機能関連の
指数は著変ありませんでした。

4) 結論
2歳以下の幼児を含めて、小児のマスクの着用が呼吸の機能に悪影響は及ばさないものとしています。
そのためにも、今後は新型コロナに対してマスクを含めた感染防止について、保護者と学校での啓蒙が
必要としています。







私見)
 呼吸器症状のある乳幼児にはマスクは注意が必要ですが、外出や来院(?)の際にはマスクを推奨
 します。


 土曜の午後、菜の花の咲いている公園にジョギングをしに行きました。 
 マスクをした可愛い女の子が、お父さんと自転車の練習をしています。
 そーっと遠巻きに追い越していきました。
 そういえば、去年の菜の花の季節から新型コロナが流行っています。
 来年の菜の花の咲く頃には、マスクをしないで公園で遊びたいものです。







小児 マスク JAMA.pdf

ブログより.pdf









posted by 斎賀一 at 19:45| Comment(1) | 小児科

2021年03月26日

新型コロナ・抗原検査(クイックナビ)の精度

新型コロナ・抗原検査(クイックナビ)の精度
 
The evaluation of a newly developed antigen test
(QuickNaviトレードマーク(TM)-COVID19 Ag) for SARS-CoV-2:
A prospective observational study In Japan
 



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 実地医家の場合、特に本院では新型コロナの診断に、PCR検査と抗原検査を車の両輪として採用して
います。それぞれの持ち味を駆使することが大事だと考えています。

 今回、抗原検査の精度を示した論文が日本から発信されていますので、纏めてみました。


1) 2020年10月7日から12月5日までのデータです。
   サンプルは鼻咽頭スワブを2本使用して、1本は抗原検査用とし、もう1本はreal time-PCR用と
   しています。

2) 1,186検体を調べています。
   real time-PCR用で診断した新型コロナ患者は、105人(8.9%)でした。
   その内33名(31.4%)は無症状患者です。
   抗原検査との一致率は98.8%でした。
   その内訳は抗原検査の感度が86.7%で、特異度は100%です。
   つまり偽陽性はありませんでしたが偽陰性が14名あり、その内8名は無症状患者です。
   有症状患者のみを対象としますと、その感度は91.7%と上がります。
   この結果判定においてPCRがゴールドスタンダードと仮定していますので、もしもPCR検査と抗原
   検査が不一致の場合は、合計4つの方法( real-time RT-PCR 、 in-house RT-PCR,
   BioFireレジスタードマーク Respiratory Panel 2.1、
   FilmArrayレジスタードマーク systems ;BioFire Diagnostics, LLC, UT, USA)で再確認しています。
   (残念ながら一般的に実地医家で採用しています唾液PCR検査は、ゴールドスタンダードとはなら
    ないと思います。)



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検体1,186人でPCR陽性は105人、その内抗原検査が陽性と判定できなかった人は14人(偽陰性)
ですが、抗原検査で陰性なら、PCRも全て陰性でした。(疑陽性はない)




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有症状患者のみに限定してみますと、抗原検査の感度は91.7%となります。


3) 結論として
   抗原検査の疑陽性を心配して更なる検査、つまりPCR検査を追加する必要はないとしています。
   抗原検査の偽陰性を防ぐためには有症状患者を対象にすること、鼻腔スワブでなく鼻咽頭スワブを
   使用すること、また新型コロナの疑いを否定できなければ、更にPCR検査を追加することなどが必要
   となります。
   しかし抗原検査の利便性は、臨床の現場で充分な価値があるとしています。






私見)
 その他の2つの論文も紹介されています。
 1つは富士レビオに関しての疑陽性の症例報告です。
 もう一つは韓国製の抗原検査です。
 いずれにしましても、今後も本院では抗原検査とPCRをロジスティクスに使用していこうと考えています。








本論文抗原検査.pdf

富士レビオ製.pdf

韓国製.pdf














posted by 斎賀一 at 19:28| Comment(3) | 感染症・衛生