2021年02月09日

アナフィラキシー再考

アナフィラキシー再考

 <業務連絡


 新型コロナ・ワクチンの接種が始まろうとしています。
ワクチンに関する情報も大事ですが、実地医家にとっては接種の安全性も、より重要です。
 本ワクチンは安全性がかなり担保されていますが、拙速の感を免れません。
しかしそれを後押ししているのは社会の動向です。かくなる私もワクチン接種に協力する立場です。
本院のスタッフは全員で、集団接種と個別接種に手を挙げてくれました。
この機会にアナフィラキシーを再勉強し、本院スタッフ全員で準備をしましょう。


先ずケアネットの岡田正人氏の講義を纏めてみました。

 ・アナフィラキシー症状は皮膚症状が90%、呼吸器症状が50%、循環器症状が30%、
  消化器症状が30%で注意が必要。
  つまり皮膚か粘膜(口唇、舌、口蓋垂)の急な発症と、呼吸器か循環器の何れかの症状を伴う。
 ・血圧の低下とは通常より30%の低下をいう。
  (高血圧の人は120以下、健康な人は100以下で注意でしょうか。)
 ・アナフィラキシーの病態は、血管が拡張して血管内の水分が漏出するためです。
  そのために、アドレナリン(ボスミン、エピネフリン 何れも同義語)を筋注して血管を収縮させます。
  脚を挙げて体液を心臓に戻さなければ、いくらボスミンを注射しても空回りをしてしまいます。
  つまり、脚を挙げてボスミンを注射することがセットです。
 ・ボスミンを皮下に注射したのでは、血管が収縮して吸収されません。
  筋肉に注射すると、筋肉内の血管が拡張して吸収されます。
  なぜ動物はアドレナリンを分泌するようになったのでしょう。
  それは敵から逃れるためです。
  気管を拡張し皮膚の血管を収縮して、更に筋肉内の血管が拡張し血液を筋肉内に送り込んで全力で
  走って逃げるためです。
 ・なぜ人間はアナフィラキシー反応を起こすのでしょう。
  生命を脅かす物質が侵入したことを察すると、全身の体液を放出してその物質を排出しようとする
  ためです。
 ・花粉症の季節では気道や鼻腔も狭くなっているため、アナフィラキシー反応が軽くても症状が重く
  なることに注意が必要です。
 ・アナフィラキシーには二相性があることに注意が必要です。
  初期治療で軽快しても、必ず二次施設に転送することが大事です。 



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 ・軽症のアレルギー反応とアナフィラキシーの初期との鑑別は難しいことがある。
  また、ストレスによるアレルギー類似の所見がある。その時は抗ヒスタミン薬(OD錠)を先ず試みる。


本院における準備

 ・エピペンは、患者さん用の自己注射と私は捉えています。
  本院では、アドレナリン注0.1%シリンジ「テルモ」を使用します。




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 ・筋注に関して下記のPDFを参照ください。
 ・ポララミンドライシロップ 又はアレロック(5mg)OD錠 ガスター 
  点滴セット メプチンキッド吸入



総論として今日の臨床サポートより

 ・H1 受容体拮抗薬は、呼吸・循環の安定化を図るための初期治療としては勧められない。
  ⽪膚粘膜症状の改善を目的とした投与は推奨される。
  クロルフェニラミン(ポララミン)またはジフェンヒドラミン(レスタミン)
  本院ではポララミンドライシロップ又はアレロックOD錠(5mg)
 ・H2受容体拮抗薬は、呼吸・循環の安定化を図るための初期治療としては勧められない。
  アドレナリンの投与でも喘鳴、⽪膚症状が改善しない場合に投与してもよい。
  H1受容体拮抗薬と併⽤することが望ましい。(ガスター)


 ・時間経過

  急性期症状:アレルゲンへの曝露後、数秒〜2時間(通常は5〜30分)で発症する。
          稀に数時間後に発症することもある。
  ⼆相性反応:アナフィラキシー全体の1〜23%にみられるが、2010年以降は0〜6%の報告が多い。
          多くはアナフィラキシーに⾄らない軽症で、蕁⿇疹がみられる程度であるが、稀に重症
          な場合もある。
  遷延性反応:急性期症状が32時間まで持続する例も報告されており、遷延性反応と呼ばれる。

 ・診断基準1;⽪膚粘膜症状(S)が急速(数分から数時間)に出現し、気道(A)、呼吸(B)
         循環(C)の何れか1症状以上を伴った場合は、アナフィラキシーと診断する。
         アナフィラキシーの80%以上がこの基準を満たす。
 ・診断基準2;⼀般的にアレルギーの誘因となり得る物質への曝露後、気道(A)、呼吸(B)
         循環(C)、消化器(D)、⽪膚(S)の何れか2症状が急速(数分〜数時間)に出現したら
         アナフィラキシーと診断する。
 ・診断基準3;既知のアレルゲンに曝露後、急速(数分〜数時間)に、⾎圧低下が11歳〜成⼈では
         <90mmHg、または、全年齢で平常時収縮期⾎圧の<70%)がみられる。
         (私としては診断基準1を採用、血圧低下は120以下とします。)

 ・いくつかの重症度分類が提唱されているが、世界的に標準化された⽅法はない。
 ・アドレナリン筋注の遅れは死亡率を⾼め、⼆相性反応の発⽣率を⾼めるという報告があり、
  アナフィラキシーを疑った時点で、速やかにアドレナリンを投与する事が⼤事である。
  アドレナリン(1:1000 = 1mg/ml製剤)0.01mg/kg (成⼈0.5mgまで、⼩児0.3mgまで)を
  筋注(⼤腿近位1/3、前外側を推奨)、効果がなければ5〜15分ごとに反復投与する。
  通常、1〜2回の投与で効果がみられる。しかし、追加の投与が必要となることも少なくない。
  アドレナリン筋注を⾏ったアナフィラキシーの16〜36%は、2回以上の繰り返し投与が必要であった
  と報告されている。
 ・筋注の部位は⼤腿近位1/3前外側で、アナフィラキシー患者を対象としたRCTは存在しないが、
  健常者へのRCTで上腕への⽪下注や筋注よりも、⾎中濃度が速やかに上昇することが確認されて
  いる。
 ・アナフィラキシーの初期治療薬剤としてのアドレナリンの重要性から、併⽤禁忌については
  「アナフィラキシーショックの救急治療時にはこの限りではない」と記載されている。
 ・β遮断薬を使⽤中の患者で、アドレナリン筋注の効果がみられない場合、グルカゴンの投与が推奨
  される。 β遮断薬を使⽤中(内服、点眼など)の患者では、アドレナリンの効果が阻害される。
 ・喘鳴を呈する場合でアドレナリン筋注に反応しない場合には、サルブタモール(ベネトリン)
  成⼈2.5mg/3ml(⼩児0.5〜1.5mg/3ml)などのβ2刺激薬のネブライザー吸⼊
  (なければMDI+スペーサー)も⾏ってよい。






私見)
 あらゆるケースを想定してシュミレーションしましょう。
 下記の図譜もご参照ください。






アナフィラキシー 図表.pdf

ボスミン注.pdf

筋肉注射.pdf










posted by 斎賀一 at 20:03| Comment(0) | 感染症・衛生