2021年02月26日

モデルナのワクチンのアレルギー反応;MMWRより アナフィラキシーを含めて

モデルナのワクチンのアレルギー反応;MMWRより
 アナフィラキシーを含めて
 
Allergic Reactions Including Anaphylaxis After Receipt of the
First Dose of Moderna COVID-19 Vaccine − United States,
December 21, 2020–January 10, 2021



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 モデルナのワクチンによる1回目接種後のアナフィラキシーを含めた有害事象が、CDCのMMWRより
報告されています。


1) CDCが、12⽉14⽇から1⽉13⽇までの最初の1ヶ⽉のデータを纏めています。
   ワクチン接種404万1,396回で、10例(2.5例/100万回)にアナフィラキシーが発現し、
   9例は15分以内、1例は45分後に発現していました。
   モデルナのワクチン1回接種で1,266例(0.03%)に有害事象の報告がされました。
   そのうち、アナフィラキシーを含む重度のアレルギー反応の可能性がある108例を調査しています。
   これらのうち更に10例(2.5例/100万回)がアナフィラキシーと判断され、うち9例はアレルギー
   またはアレルギー反応の既往(薬剤6例、造影剤2例、⾷物1例)があり、そのうち5例は
   アナフィラキシーの既往がありました。
   10例全てが女性でした。ただし接種者は女性が男性の3倍多いようですが、女性が多い傾向は
   ファイザーのワクチンでも同様に認められています。
   アナフィラキシー発現例の平均年齢は47歳(範囲:31〜63歳)
   接種から症状発現までの中央値は7.5分(範囲:1〜45分)で、9例が15分以内、1例が45分後
   でした。    
   10例すべてがアドレナリン(エピネフリン)を筋⾁内投与されています。
   6例が⼊院し(うち集中治療室が5例、そのうち4例が気管内挿管を要した)、4例が救急科で治療を
   受けています。
   その後の情報が⼊⼿可能な8例は、回復もしくは退院しました。
   アナフィラキシーによる死亡は報告されていません。

2) アナフィラキシーではないと判断された98例のうち、47例は非アナフィラキシー性のアレルギー
   反応、47例は非アレルギー性の有害事象と判断され、4例は評価に⼗分な情報が得られなかった
   ようです。
   非アレルギー性はほとんどが迷走神経反射で、失神発作です。
    (一部ケアネット参照)

3) 1回目の接種でアレルギー反応が認められた人は、2回目の接種は避けるべきです。
   接種する人に対して、アレルギー反応について詳しく事前に説明し、接種後の対応も接種会場
   より離れる前に充分なコンサルトをすべきです。





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私見)
 重度な有害事象は、アレルギー反応の既往歴のある方のようです。
 十分な問診が必要のようです。








モデルナmmwr.pdf










posted by 斎賀一 at 18:12| Comment(1) | ワクチン

2021年02月24日

モデルナのワクチン

モデルナのワクチン
 
Efficacy and Safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 Vaccine
      N Engl J Med 2021;384:403-16.
 

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 日本でも新型コロナワクチンの接種が始まりましたが、世界がワクチンの争奪戦を展開しており、
ファイザーワクチンの代替薬の選択が必然となります。
 以前より私は、ワクチンの開発には時間がかかり慎重な対策が大事だと思っていました。
日本政府が海外のメーカー数社と早々と契約を結んだことに違和感を覚えていましたが、今となっては
日本の担当者の先見の明があったと評価しています。
今後、本ブログでもロシアのワクチンを含めて勉強し、ブログして参ります。
(プーチンさん、大丈夫ですよ。ロシアのワクチンには毒が盛られていませんから、早くご自身が先頭になって接種してください。)


雑誌NEJMにモデルナのワクチンのオリジナルが発表になっていますので、簡単に纏めてみます。


1) SARS-CoV-2 感染またはその合併症のリスクが⾼い⼈に、mRNA-1273(100 mg)を28⽇間隔
   で2回筋⾁内注射する群と、プラセボを投与する群に 1:1 の割合で無作為に振り分けました。
   主要エンドポイントは、新型コロナ感染の既往のない参加者における、2回目の注射後14⽇目以降
   に発症する新型コロナ感染の予防としています。

2) 18歳以上の新型コロナ感染歴のない30,420 例のボランティアが登録され、ワクチンまたはプラセボ
   の投与に 1:1 の割合で無作為に割り付けられた (各群 15,210 例) 参加者の96%超が、2回
   の注射を受け、2.2%の方はベースライン時に SARS-CoV-2 感染所⾒(⾎清学的またはウイルス
   学的、あるいはその両⽅)が認められた。
   2回目接種の14日後に症状を伴う新型コロナ感染を確認し、抗体のゼロコンバージョン(−から+の
   変化)を調べています。
   新型コロナの症状は、呼吸器症状かもしくは2つ以上の症状を有する人で、PCR検査で診断して
   います。 (つまり無症状者は調べていません。)
   新型コロナ感染はプラセボ群の 185 例(1,000 ⼈年あたり 56.5 例)、ワクチン群の 11 例
   (1,000 ⼈年あたり 3.3 例)で確認され、ワクチンの有効率は 94.1%であった。(P<0.001)
   この有効率は、初回接種後 14 ⽇目の評価やベースライン時に、 SARS-CoV-2 感染所⾒が認め
   られた参加者を含めた解析と、65歳以上の参加者を対象とした解析などの重要な副次的解析に
   於いても同程度であった。
   30例が重症 新型コロナを発症し、うち 1 例が死亡した。
   この30例は全てプラセボ群であった。
   研究中の死亡例はプラセボ群で3例、ワクチン群で2例(心血管疾患と自殺)でした。

3) 安全性に関しては、それぞれの接種後7日間のsolicited(聞き取り調査か?)報告と、それぞれの
   接種後28日間のunsolicited(自己報告か?)を行っています。




          30224-2.PNG ←クリックで拡大

           ARもAEも有害事象と思ってください。  IPは治験薬



医療を要した重症例に関しては、接種後1日から759日まで追跡しています。
ワクチン接種後、中等度の⼀過性の副反応がワクチン群でより多く⽣じた。
重篤な有害事象は稀であり、発現率は2群で同程度であった。
有害事象は1回目でワクチン群は84.2%、プラセボ群で19.8%、2回目の接種ではワクチン群88.6%、
プラセボ群18.8%でした。
中等度以上の有害事象は倦怠感、筋肉痛、関節痛、頭痛で、2回目接種の15時間後に約50%出現しま
すが2日間で軽快しています。平均2.6日で軽快しています。
グレード3以上はワクチン群で1.5%、プラセボ群1.3%と同程度です。
有害事象に関しては、suppleを含めたグラフでの解説が明白なので下記に掲載します。
細かいことは下記のPDFをご参照ください。




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4) モデルナのワクチンは、重症 Covid-19 を含む Covid-19 の予防に94.1%の有効率を⽰した。
   ⼀過性の局所反応と全⾝反応を除き、安全性に関する懸念は認められなかった。
   (一部、日本版参照)






私見)
 ほぼファイザーのワクチンと同じで、雌雄を決めかねます。
 有効率はややファイザーのワクチンが優位ですが、有害事象ではモデルナが若干少ないようですし、
 本論文にはアナフィラキシーという言葉が記載されていません。
 しかし、CDCのMMWRではモデルナのアナフィラキシー症例が載っていますので、次回のブログで検討
 します。







モデルナ 本論文より.pdf








posted by 斎賀一 at 20:11| Comment(1) | ワクチン

2021年02月22日

2回目ワクチン接種は遅れてもいいのかそれとも1回の接種でよいのか?

 
2回目ワクチン接種は遅れてもいいのかそれとも1回の接種でよいのか?
 
Delayed Second Dose versus Standard
Regimen for Covid-19 Vaccination
 


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 報道で既にご存じかと思いますが、新型コロナワクチンの世界的な不足と争奪戦において、2回目の
接種時期は3週間を厳守せずに遅らせて、先ず1回目の接種を優先してはとの案が浮上しています。
それに関して、雑誌NEJMにディベートが掲載されていましたのでブログします。



1) 賛成の見解

   ・今は平時ではない。 
    新型コロナの脅威は、ワクチン接種のプログラムを超えている。
   
   ・1回の接種により、その効果は10日後から徐々に増加する。
    2回目の接種時期には、その効果は80〜90%となっている。
    結局1回目の接種による85%の効果に対し、2回接種後の効果は95%である。 

   ・2回目の接種を延期し多くの人に1回目を接種するという決断は、結果的に多くのコロナ患者の発生
    を抑え込むことが出来る。

   ・今は新型コロナの変異株が流行し始めていて、このウイルスが流行の優位となる心配が目前で
    ある。今こそ多くの人に接種して、感染を抑えこむ時期である。
    これはリスクの高い人に、迅速に接種することを意味する。

   ・少数の専門家は、2回目の接種を遅らせる事によりその免疫効果が減少する危険性を述べている。
    しかしワクチン不足の現状では、全員がワクチン接種を完了するのは春も終わりかけた頃となって
    しまう。今は多くの人に接種を行う時である。


 2) 反対意見  
  
   ・決まりは守るべきである。
    確かに1回目の接種だけでもその免疫効果の減弱は少ないかもしれませんが、十分なデータは
    今のところありません。 

   ・2回目の接種を遅らせてもよいとの保証は出来ません。
    その事は積極的に2回接種を推奨するのに支障となります。
    結局は新型コロナの収束を遅らせる結果となります。
    急な変更は接種者に混乱を招き、2回接種の意義をなくしてしまいます。

   ・不完全な接種が変異株の蔓延に影響する懸念もあります。

   ・現在はワクチン不足ですが、メーカの努力でいろいろなワクチンが現場に届く予定です。

   ・科学的根拠を明白にして政策的な判断に委ねることなく、迅速にワクチンの供給手段を検討
    すべきです。






私見)
 今は、ファイザーのワクチンが届くのを心待ちにしています。
 やがてモデルナのワクチンも選択肢となることを期待します。
 現状では本院では2回接種を推奨して参ります。しかし、もしも2回目の接種が遅延した場合
 (ワクチンの配給の滞り、接種者の都合や忘れてしまった場合、スケジュールの不備等)には
 ワンクール、つまり3週間の遅れは許されるかもしれません。
 あまりストイックにならず、大らかに温かく政府の方針を見守りたいと思います。







Delayed Second Dose versus Standard Regimen for Covid-19 Vaccination.pdf










posted by 斎賀一 at 20:11| Comment(1) | ワクチン