2021年01月18日

新型コロナの変異 その1

新型コロナの変異 その1
 

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 新型コロナウイルスの変異がメディアで問題視されています。
専門家からの見解も幅があり、冷静な対応を求める政府の立場から、直ぐにも厳格な政策を求める意見とまちまちで混乱しています。

 今回雑誌JAMAより論説が載っていましたのでブログしてみます。が、その前にコロナの変異について
多少勉強しましたので纏めてみます。

・新型コロナウイルスは、外側のエンベロープという外殻と中の遺伝子のRNAからなっています。
 遺伝子のRNAの構成要素は、糖(リボース)、リン酸と4種類の塩基からなります。
 塩基は、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、そしてウラシル(∪)の4種類です。
 AGCUという文字列の設計図です。
 外殻には感染の際に重要なスパイク蛋白があります。





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        東南アジア地域研究研究所文献より


 上の図の赤で囲まれた部位がスパイク蛋白を作る遺伝子の範囲で、赤の矢印が変異を起こしやすい
部位です。ワクチンと関連する中和抗体に関連する部位とは離れているため、ワクチンの効果は損なわれないと考えられています。
しかし、上の図の23,403の部位のスパイク蛋白に関与する変異(通称 D614G変異;)は、人の受容体
であるACE-2への結合を強化する可能性があり、変異を軽視すべきでないともされています。

  新型コロナウイルスSARS-CoV-2は2019年12⽉にヒトでの感染が報告されて以来、現在も世界的な感染拡⼤を続けています。
その間に、Spikeタンパクのアミノ酸残基614番のアスパラギン酸(A)がグリシン(G)に置換わる変異(D614G)を持つ変異ウイルスが出現し、圧倒的に優勢になりました。現在世界で蔓延しているのはこの変異ウイルスです。

 ・新型コロナウイルスなどのRNAウイルスはコピー(転写)する際にミスを起こしやすいため、変異が
  起こるとされています。しかし他のウイルスと異なり、新型コロナウイルスはミスをカバーする部位が
  あり、変異は起こりにくいとも言われています。
  また変異の速度も極めて緩やかであることも分かっています。

  ・中国にある標本の一番古い2019年12月26日のウイルスが、発生起源を形成しているウイルスと
   して19Aと命名されました。
   コウモリの先祖株に近い系統が武漢で発生していますが、これを19Bと命名しています。
   この19Aと19Bが世界に持ち出され、D614G変異を起こした20A系統がヨーロッパ全土に広がり、
   やがて2月後半には20Bがベルギー、スウェーデンに、そして20Cがアメリカに広がっています。
   新しい系統を認定するには、その変異ウイルスが20%以上優位の場合としています。
   コロナウイルスに関するゲノム情報はGISAID(global initiative on sharing of all
   influenza data)に集められています。
   GISAIDから現時点での情報が、下記のネットにアクセスで入手されます。



    https://nextstrain.org/ncov/global







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        現時点では11種類が登録されています。




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         JAMAの本論文より (次回の論文ブログの際にご参照ください。)



  ・2019年9月20日にイギリスの南西部で発見された変異ウイルスは、B.1.1.7と命名されています
   が、スパイク部位ばかりでなくRNAにもおよび、17の変異を持っています。
   スパイクのN501Y変異が感染力を50~70%高めていると言われていますが重症化に関しては不明
   です。南アフリカでもN501Y変異のウイルスが、感染の90%を占めています。




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   世界のウイルスの割合の変化が数か月で変化しています。
   特に日本でも著しく変化しています。










posted by 斎賀一 at 19:55| Comment(0) | 感染症・衛生