2021年01月15日

感染症動向

 
感染症動向
  <厚労省の発表



    感染性胃腸炎が流行っています。咽頭炎を主体とした風邪も認められています。
   これらは新型コロナにも当てはまる症状です。十分に注意して診療してまいりましょう。




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                                          Medical Tribune より





 感染症動向.pdf

 感染状況.pdf










posted by 斎賀一 at 19:00| Comment(0) | 感染症・衛生

コロナ濃厚接触者について

コロナ濃厚接触者について

〜患者さんへのお願い〜



 第一線で奮闘している医療機関が逼迫しているとの事ですが、末端の開業医も混乱しています。
コロナと診断した後の入院先が決まらずに、自宅待機となっている患者さんが多くいます。
診断した後の責任は保健所でしょうか、はたまた我々開業医でしょうか。
症状が続く場合に、その間患者さんはどこに相談したらよいのでしょう。この私ですか。(GoToトラベル
を非難するつもりはありませんが、なぜ第一波の検証をしないで前に進んでいるのでしょうか。)
 濃厚接触者の解釈範囲が狭くなってきています。保健所も苦渋の判断を強いられています。
「診療拒否をするのか?」と、無症状の濃厚接触者からの電話のクレームで泣いてしまう本院の若い職員
もいます。
現時点での濃厚接触者の意味を調べてみました。(下記のPDF参照)
厚労省の見解は「はっきりした線引きはない。それぞれのケースによってグラデーションだ。」とのこと
です。グラデーションをするほうは気が楽ですが、される方はたまったもんではありません。

 今日(1月14日)、運転席でエンジンをかけたら「今日は愛と希望と勇気の日です。」とアナウンスして
いました。何やら心に突き刺さる言葉です。気を取り直して、私の座右の銘のダグ・ハマーショルドの言葉
神はお前の能力以上の事は要求しない」を思い出します。

本院では「少しの愛と希望と勇気を奮い起こして、濃厚接触者の線引きをします。」
・本院でコロナと診断された患者さんと濃厚接触の方で無症状の場合は、まずはオンライン又はリモート
 での診察を行ってください。
・症状のある方は、電話連絡後に発熱外来での受診となります。
・コロナと診断された患者さんで自宅待機の場合は保健所と協力し、その後は電話もしくはLINEでの診察
 も視野にいれますので、事前にLINE登録をしてください。
・その他の濃厚接触の方は、先ずは保健所に連絡を取ってください。






濃厚接触1.pdf

ガイドライン厚労省.pdf

濃厚接触.pdf











posted by 斎賀一 at 18:11| Comment(2) | 感染症・衛生

2021年01月13日

炎症性腸疾患の病態生理・その2

炎症性腸疾患の病態生理・その2
 
Pathophysiology of Inflammatory Bowel Diseases
n engl j med 383;27 nejm.org December 31, 2020


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 今は懐かしいabeちゃんも使ったと思われる、潰瘍性大腸炎の生物学的製剤を理解する上で、欠かせ
ない病態生理をまとめた総論が雑誌NEJMに掲載されていました。
本論文を理解するのに難儀しましたが、私なりに理解できた点だけを纏めてみます。
下記の図が不鮮明の場合は、更に下のPDFをご参照ください。




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         30113-4.PNG ← クリックで拡大


    
   
    
1) 炎症性腸疾患の場合には、粘液層(mucus layer)を作る杯細胞(goblet cell)が減少していて
   細菌叢の侵入を防ぐバリアーも減少し、さらけ出されている状態です。
   最近では腸上皮の粘膜下にある幹細胞(線維化細胞、筋細胞、血管周囲細胞)による急性増悪の
   際の反応が解明されています。

2) 遺伝的な解明も進んでいますが、潰瘍性大腸炎よりもクローン病の方が意味合いが強いようです。

3) 共生細菌叢とその産物が、炎症性腸疾患の進展に関係あることも分かり始めています。
   粘膜のバリアーが損なわれると、正常の細菌叢も病態の原因となります。
   一方で、細菌叢の全くいないマウスでの実験では、炎症性腸疾患の重症化を認めています。
   細菌叢との関連性が今後の研究テーマです。

4) 粘膜の免疫機能
   腸上皮においては、免疫機能として自然免疫と獲得免疫、及び局所免疫と全身免疫が全て関与して
   います。獲得免疫として特異的T細胞(MALT)が重要な位置を占めています。
   腸管が健康な人間の免疫機能の主な部位を担っており、なんとリンパ球の75%が腸管や腸間膜に
   存在し、健康な人の免疫グロブリンの多くはこの部位で作られています。
   腸管の免疫機能は全身の免疫機能と異なり、病原性病因との戦いと同時に食物アレルギーを代表
   するような、過剰な免疫反応を抑制するコントロールもしなければならないといった、複雑な機能が
   必要となります。
   自然免疫はマクロファージが主役です。
   最初の段階で病因となる細菌などを貪食するために、粘膜下に位置しています。
   樹状細胞も粘膜下に存在し、獲得免疫の初期段階で働きます。
   粘膜下のリンパ装置のパイエル盤、native B細胞が抗原(病原細菌)と出会うと、形質細胞に変化
   して抗体を産生し、更に記憶B細胞に分化していきます。
   形質細胞は分化して短期及び長期的に働き、免疫グロブリンのIgMからIgAを形成していきます。
   IgAは補体との共同作用がないので炎症を伴わずに病因を排除しますが、IgGは補体と共同して
   炎症を伴いながら病因(病原菌)と戦います。

5) B細胞は炎症性腸疾患の場合には、特別に主たる行動は起こさないようです。
   健常人ではIgAが主役ですが、炎症性腸疾患の場合にはIgGがその病態の主たる原因として作用
   します。
   現に炎症性腸疾患の場合にIgAは減少し、IgGが局所で増加しています。
   潰瘍性大腸炎の場合、細菌叢に対するIgGが局所的に増加していることが証明されています。

6) T細胞
   未だ抗原提示を受けていないnative T細胞(ナイーブT細胞;20歳後半に未だ女性の提示を受けて
   いないナイーブな僕みたい)が腸管の粘膜下のリンパ装置である樹状細胞から抗原提示を受けて
   活性化し、粘膜の表面に移動します。
   活性化したT細胞は機能をもったeffector T細胞(Tef)、制御性のregulatory T細胞(Treg)
   抗原性を記憶したmemory T細胞に分化します。
   一般的にTefは炎症性サイトカインを分泌し、即座に炎症を起こして細菌感染を予防しようとします。
   Tregは行き過ぎた炎症を鎮める働きがあります。
   memory T細胞は長期間生存して、免疫的な記憶を提供します。
   ヘルパーT細胞のTh1とTh17のネットワークが粘膜のホメオスタシスに関係しているので、それに
   関連するサイトカインのインターロイキン12、23をブロックするtofacitinibなどのJAK阻害薬が
   治療薬として登場しています。
   インターロイキン17は炎症を誘発し、腸上皮の再生、修復に関係するといった多面的効果
   (pleiotropic)のため、インターロイキン17に対する抗体は治療としては確立していません。
   Tregは免疫のホメオスタシスに関係します。しかも免疫機能とは無関係な再生にも関与します。
   更に炎症部位に移動して炎症を沈静化します。
   しかし炎症性腸疾患において、局所でこのTregが増加していることがあり、その解明は未だ十分
   にはされていません。
   活性化したCD4とCD8は記憶T細胞に分化しますが、更にその記憶T細胞は組織固着型(Trm)と
   循環型(Tcm)に変化します。
   Trmが細菌に遭遇すると表面に移動してバリアーを形成し、細菌を抑制し自然免疫を活性化して、
   その情報をTcmに伝えます。
   クローン病においてスキップ病変があるのは、Trmが局所に居座って炎症反応を起こすからです。
   また、手術例のクローン病で吻合部に病変が再発するのもこのためです。
   動物実験ですが、CD8は炎症性腸疾患において腸管の透過性を促進するとの事です。
   CD8とTrmが相まって炎症を誘発し、循環性のTcmに変化して全身に循環するため、腸管以外の
   部位にも炎症を起こします。
   長期に記憶T細胞、特にTrmが居座ることが炎症性腸疾患の慢性疾患である所以です。






私見)
   最近の生物学的製剤関連の文献と本論文の図譜を見比べながら、根気よく調べてください。
   尚、図譜の中で青のブロック表示が薬剤の作用部位です。
   大体の流れを理解するだけでよいです。本院では生物学的製剤は採用しません。
   患者さんへの説明の際には、知識として覚えておきましょう。





1 炎症性腸疾患の図.pdf

2 潰瘍性大腸炎 ブログ1.pdf

2 軽症潰瘍性大腸炎 ブログ2.pdf

3 今日の臨床サポートより UC.pdf

uc 潰瘍性大腸炎 新薬.pdf

潰瘍性大腸炎 新薬.pdf

潰瘍性大腸炎 新薬2.pdf

免疫 ブログ編.pdf

免疫基礎編.pdf













posted by 斎賀一 at 19:51| Comment(0) | 消化器・PPI