2021年01月22日

新型コロナワクチンの安全性・特にRNAワクチン

新型コロナワクチンの安全性・特にRNAワクチン
 
Maintaining Safety with SARS-CoV-2 Vaccines
This article was published on December 30, 2020, at NEJM.org


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 新型コロナワクチンの接種が現実味を帯びてきました。
第3波の到来と政治的圧力もあって、医療従事者からの接種が2〜3月になりそうな勢いです。
雑誌NEJMに掲載された本論文を慌てて読んでみました。


1) アメリカでは、ファイザーとモデルナのRNAワクチンが開始されています。
   疼痛、発赤、腫脹の局所反応はプラシーボと比較しても多くありますが、全身症状の発熱、筋肉痛、
   関節痛、倦怠感は接種後24〜48時間後に認められています。
   臨床試験では、ファイザーとモデルナの接種をした人は、事前にアレルギー疾患及びワクチンの
   内容物にアレルギーの既往がある人は除外されています。

2) 英国では、接種にあたりMHRA機構が副反応を調べています。
   英国では2020年12月8日に、接種後24時間以内にアナフィラキシーが40歳と49歳に発生して
   います。アメリカのアラスカでも、12月15日に32歳の女性が、1回目の接種後10分以内で
   アナフィラキシーが発生しています。その後も数例のアナフィラキシーが報告されています。
   一般的なワクチンではアナフィラキシーは1/1,000,000人の発生ですが、ファイザーのワクチンでは
   1/100,000でした。10倍の発生です。
   この時点でMHRAはファイザーのワクチンの一時停止を決めています。
   (現在日本では、ワクチンによる重大な事象が10万人中5人発生したら中止になります。
    今後日本でもファイザーのワクチンが一般で接種され始めた場合にどうなるかは、予断を許さない
    状況です。)

3) アナフィラキシー反応は全身症状を起こします。
   一般的にはIgEが関与するのですが、本ワクチンのアナフィラキシーでは、IgEが関与しない
   non-IgEでも起こります。
   その事由として、以前に曝露していない物質に対しての反応で、それは直接にマスト細胞、補体、
   好塩基球が最初から作動します。
   皮内反応が事前の検査に有効ですが、それは100%ではありません。
   IgE及びnon-IgEの両者共に、エピネフリン(エピペン)が有効です。

4) アナフィラキシーの発生は1/100万人と稀です。
   しかしファイザーとモデルナのRNAワクチンは一般のワクチンとは異なり、接種後のRNAの安定の
   ためにいろいろな処置(細工)が施されています。
   RNAワクチンの人体での使用は初めてです。その構成物質のPEG、ナノ粒子のリピッドなどの全てに
   アレルギーの反応があるかもしれません。
   しかもIgEに関与していない直接的なアナフィラキシーもあります。




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   上の図で、RNAワクチンは接種後の安定のため、周りに微小分子(nanoparticle)の膜や
   PEGを成分(component)として持っています。
   そのため、必然的にそれらに対するアレルギー反応が加わります。 
   (尚、雑誌NEJMの図譜では理解を間違えそうなので、下記のPDFをご参照ください。)
   従ってファイザーにアレルギー反応が出た人は、モデルナのワクチンも避ける必要があります。

5) 十分な情報公開と管理体制を構築することで、国民のワクチン接種の拒否を避けることができます。





私見)
 先ずは医療従事者の臨床試験(?)から始まります。皆さん、参考にしてください。
 以前のブログも参照してください。今後の情報はブログして参ります。
 問題はアレルギー疾患を持っている患者さんも一般の健康な人も、アナフィラキシー反応が起こる
 可能性は極めて稀ながらあるということです。
 接種をする場合は、十分な対応(エピネフリン、酸素、救急対応)が必須です。

 「うちはコロナ関連は行っていません。」とは、もう言わせません。






covid-mrna-vaccine.pdf

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posted by 斎賀一 at 19:33| Comment(1) | 感染症・衛生

2021年01月19日

新型コロナウイルスの変異は何を意味するか・その2

新型コロナウイルスの変異は何を意味するか・その2
 
Genetic Variants of SARS-CoV-2−What Do They Mean?
JAMA Published online January 6, 2021


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 新型コロナウイルスの変異に関する論説が雑誌JAMAに載っていましたので、纏めてみます。
前回のブログより、キーワードを比べて読んでください。


1) 一般的に、DNAウイルスよりもRNAウイルスは変異が多いと言われています。
   転写の時にミスが発生するからです。二重らせんを形成するDNAと対照的に、RNAは原則一本鎖
   です。
   その代わりに、RNAは鎖の中で塩基対を作ることで、高次構造を作って酵素の働きもしています。
   しかし、一本鎖のため転写ミスが起きやすくなります。
   ただ新型コロナウイルスは、転写ミスを修復する遺伝コードが組み込まれていて、他のRNAウイルス
   よりも変異が起きにくいと言われています。
   変異の頻度は自然選択により起きます。ウイルスによって不利な転写条件に対抗したり、伝播し易く
   したり、生体の免疫機能から逃れる変異が今まで循環していたウイルスを凌駕していきます。
   それでも変異ウイルスが少数派の場合は、いくら効率が良くても創始者効果(founder effect)
   と言って、以前からあるウイルスが支配しています。
   これは個体でも社会でも国でも起こる現象です。

2) D614G変異 (614Dが614Gに変異;ウイルス表面のスパイクタンパク質に存在する614番目の
   アスパラギン酸(D)がグリシン(G)に変わる。
   614D型は武漢型で、614G型は2月下旬にヨーロッパで出現し、その後増加したためヨーロッパ型
   とも言われています。)
   スパイク蛋白の変異が最初に発見されたのは、2020年3月です。
   それは1か月足らずで世界に広がりました。世界同時と言っていいほどの、世界の至る所で無関係に
   同時に発生しています。
   このことは、D614G変異が自然選択的にウイルスにとって適合し易いからと思われました。
   しかしその後の研究で、中国の幾つかの地域でD614G変異が発見されたのは1月下旬です。
   そのことから創始者(founder)の変化がまず起きたものと想像されています。
   そして潜んでいたD614G変異が一気に世界に拡散しました。
   このことはD614G変異が、単に適応の変異だけとは考えていないようです。
   最近の報告でも、614Dよりも614Gの方が拡散が激しく世界に伝播しやすい性質のためで、自然
   選択が原因とは考えていないようです。

3) B.1.1.7系統とN501Y
   B.1.1.7系統は501Y.V1とも言われて、急速に南イギリスに伝播しています。
   9月には変異が出現し、それが蓄積していたことも判明しています。そして12月28日には28%までも
   占めました。その伝播力は激しく更に56%に及んでいます。
   D614G変異の場合は単に変異がし易かったのとは異なり、B.1.1.7系統の流行は今まで循環して
   いたウイルスを凌駕する自然選択を意味します。
   その予防には今まで以上のマスク、ディスタンス、3密を避けることの重要性が増しています。
   同じようなスパイク蛋白501Yの変異したN501Yが、南アフリカで流行っています。
   B.1.1.7系統もN501Yも、抗原性の変化があるかは今のところ不明です。

4) ワクチンの効果
   現在のワクチンは、スパイク蛋白の全体に対する抗体を誘導しますので、スパイクの多少の変異
   には影響はないものとされています。
   しかし、原因と結果を分けて考察するのが大事です。
   なぜ変異が起こるのかを調べることも重要ですが、スパイク蛋白の変異がワクチンの効果に影響が
   ないか(中和作用)を考察することが必要です。
   生体のレセプターに対するウイルスの親和性の変化が抗体に対する親和性の変化に及ぼすことは
   度々あります。スパイク蛋白の変異はウイルスにとって、現に良好に働いています。
   このことが、ワクチンをはじめとした免疫機能に悪影響を及ぼしかねないと考えることも必要です。







私見)
 本論文を読みますと、変異は外からでなく内部から起きています。
 外国からの封鎖がどれだけ効果があるか疑問です。変異ウイルスに対しては一層の対策が必要の
 様です。更にワクチンの効果も限定的かもしれないと警告しています。
 
 世の中には悲観的な見方をする人は常にいます。
 「おまえが医者になれたら誰でもなれる」と言った方。
 「貴方といると不幸になる予感がするの」といった方。
 それでも私はスガさんに期待しますよ。 
 そして私は、ワクチンをうちますよ。







コロナ 変異 JAMA.pdf








 
posted by 斎賀一 at 19:32| Comment(1) | 感染症・衛生

2021年01月18日

新型コロナの変異 その1

新型コロナの変異 その1
 

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 新型コロナウイルスの変異がメディアで問題視されています。
専門家からの見解も幅があり、冷静な対応を求める政府の立場から、直ぐにも厳格な政策を求める意見とまちまちで混乱しています。

 今回雑誌JAMAより論説が載っていましたのでブログしてみます。が、その前にコロナの変異について
多少勉強しましたので纏めてみます。

・新型コロナウイルスは、外側のエンベロープという外殻と中の遺伝子のRNAからなっています。
 遺伝子のRNAの構成要素は、糖(リボース)、リン酸と4種類の塩基からなります。
 塩基は、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、そしてウラシル(∪)の4種類です。
 AGCUという文字列の設計図です。
 外殻には感染の際に重要なスパイク蛋白があります。





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        東南アジア地域研究研究所文献より


 上の図の赤で囲まれた部位がスパイク蛋白を作る遺伝子の範囲で、赤の矢印が変異を起こしやすい
部位です。ワクチンと関連する中和抗体に関連する部位とは離れているため、ワクチンの効果は損なわれないと考えられています。
しかし、上の図の23,403の部位のスパイク蛋白に関与する変異(通称 D614G変異;)は、人の受容体
であるACE-2への結合を強化する可能性があり、変異を軽視すべきでないともされています。

  新型コロナウイルスSARS-CoV-2は2019年12⽉にヒトでの感染が報告されて以来、現在も世界的な感染拡⼤を続けています。
その間に、Spikeタンパクのアミノ酸残基614番のアスパラギン酸(A)がグリシン(G)に置換わる変異(D614G)を持つ変異ウイルスが出現し、圧倒的に優勢になりました。現在世界で蔓延しているのはこの変異ウイルスです。

 ・新型コロナウイルスなどのRNAウイルスはコピー(転写)する際にミスを起こしやすいため、変異が
  起こるとされています。しかし他のウイルスと異なり、新型コロナウイルスはミスをカバーする部位が
  あり、変異は起こりにくいとも言われています。
  また変異の速度も極めて緩やかであることも分かっています。

  ・中国にある標本の一番古い2019年12月26日のウイルスが、発生起源を形成しているウイルスと
   して19Aと命名されました。
   コウモリの先祖株に近い系統が武漢で発生していますが、これを19Bと命名しています。
   この19Aと19Bが世界に持ち出され、D614G変異を起こした20A系統がヨーロッパ全土に広がり、
   やがて2月後半には20Bがベルギー、スウェーデンに、そして20Cがアメリカに広がっています。
   新しい系統を認定するには、その変異ウイルスが20%以上優位の場合としています。
   コロナウイルスに関するゲノム情報はGISAID(global initiative on sharing of all
   influenza data)に集められています。
   GISAIDから現時点での情報が、下記のネットにアクセスで入手されます。



    https://nextstrain.org/ncov/global







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         20118-4.PNG  
   
        現時点では11種類が登録されています。




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         JAMAの本論文より (次回の論文ブログの際にご参照ください。)



  ・2019年9月20日にイギリスの南西部で発見された変異ウイルスは、B.1.1.7と命名されています
   が、スパイク部位ばかりでなくRNAにもおよび、17の変異を持っています。
   スパイクのN501Y変異が感染力を50~70%高めていると言われていますが重症化に関しては不明
   です。南アフリカでもN501Y変異のウイルスが、感染の90%を占めています。




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   世界のウイルスの割合の変化が数か月で変化しています。
   特に日本でも著しく変化しています。










posted by 斎賀一 at 19:55| Comment(0) | 感染症・衛生