2020年12月28日

気管支喘息ガイドライン・2020年版 その2

気管支喘息ガイドライン・2020年版 その2
 
Managing Asthma in Adolescents and Adults 2020
Asthma Guideline Update From the National Asthma
Education and Prevention Program



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 アメリカの学会NHLBIからのガイドラインは膨大なので、雑誌JAMAをブログします。
先ず、2014年にアメリカの学会から出たガイドラインEPR-3に加えて変更になった点が6つあります。

・吸入ステロイド剤の間歇療法(intermittent)
・LAMAの追加療法
・FeNOの測定、舌下免疫療法、気管支熱形成術(Medica1 Practiceよりまとめ、下記のPDFに掲載
 します。)、室内のアレルギー物質の減少です。
 分子標的治療薬に関しては、明白なエビデンス不足のため省略されています。

 日本の2018年版ガイドラインと本論文のガイドラインを比較しますと



         21228-3.PNG ←クリックで拡大


本論文のガイドラインでは、積極的にsmart治療を推奨しています。
つまりホルモテロールとLABAの合剤(シムビコート又はフルティフォーム)のコントローラと、
リリーバーの使用を推奨しています。


簡単に纏めてみますと

1) EPR-3では、コントロール出来ずにステップアップした場合は、それを少なくとも3か月継続する
   ことを勧めていましたが(炎症が収束には3か月を要するため)、この点に関しては2020年版も
   継承しています。

2) 上段のpreferredが推奨で、それが有効性に乏しければ下段のalternativeとなりますが、
   2020年版ではalternativeの適応する人は一部の患者さんとして、preferredを先ずは推奨して
   います。

3) Step1
   EPR-3を継承しています。
   ホルモテロールとLABAの合剤をレスキューとして使用するsmart治療alternativeとして考え
   られますが、本ガイドラインでは記載されていません。
   (以前の私のブログでも紹介しましたが、妊婦でのSABA単独の使用は推奨していませんでした。)

4) Step2
   EPR-3を継承しています。
   ホルモテロールとLABAの合剤の使用に関しては、2020年版ではコメントしていません。

5) Step3
   EPR-3とは二つの点が改訂されています。
   ・ホルモテロールとLABAの合剤がコントローラおよびリリーバーとして追加することを推奨して
    います。
   ・12歳以上の場合でICS+LABAが使用できない場合にはICS+LAMAを推奨しています。

6) Step4
   ホルモテロールとLABAの合剤を主体として、LAMAの追加またはレスキューとしてSABAの使用を
   推奨しています。
   基本的には4歳以上の患者にはホルモテロールとLABAの合剤の1吸入を、コントローラ及び
   リリーバーとして使用することを推奨しています。
   LABAが使用できない12歳以上の患者にはICS+LAMAを推奨しています。

7) Step5と6
   EPR-3との改訂の違いは高用量のICSとLABAにLAMAを追加し、更にレスキューとしてSABAを
   使用することです。
   Smart治療のホルモテロールとLABAの合剤に関しては記載がありません。
   (多分、高用量のICSに関係しているものと思います。)

8) レスキューとしてのICS
   EPR-3では、12歳以上の場合はICSを倍量することを推奨していましたが、2020年版では異なった
   見解です。
   4歳以上の患者できちんとICS吸入が出来ている場合で喘息発作が中等度なら、短期的にICSだけ
   を増量しても結果において効果はあまりない。
   つまりICSを増量する場合はレスキューとして使用するのでなく、短期的と言えどもコントローラの
   考えで使用することを推奨しています。
   ICSの増量に関しては2倍、4倍、5倍がありますが、2018年の研究報告ではそれほどの効果を
   示していません。ただしプラシーボとの比較において、エビデンスが限定的な結論の様です。
   結論的には2020年版ではレスキューとしてのICS増量使用を推奨していませんが、16歳以上の
   場合にリリーバーとして短期的な意味での4倍量までの増量を認めています。

9) コントローラとリリーバー
   2020年版では、Step3以上ではsmart治療(ホルモテロールとLABAの合剤)を推奨しています。
   smart治療ではホルモテロールがICSとして使用された論文のため、本ガイドラインでもStep4まで
   はICSはホルモテロールのみを推奨しています。
   なぜならホルモテロールは即効性で使用量の幅が広く、コントローラとしてもリリーバーとしても
   有用です。
   具体的にはコントローラとしてシムビコートの1〜2回吸入を1日2回行います。 
   リリーバーとしては、1〜2回追加吸入を4時間おきに行います。
   最大で1日12吸入までです。(本院では8吸入までです。)
   ホルモテロールとLABAの合剤を使用することにより、一般的にはSABAをレスキューとして使用する
   必要はないとしています。

10) ICSの間歇療法
   12歳以上のStep2までの軽症例では、ICS+SABAの間歇療法を認めています。
   ICSのホルモテロール単独の間歇療法も認めています。
   (本院にはホルモテロール単剤はありませんので、結局はシムビコートの間歇療法は認められると
    拡大解釈します。)

11) LAMAの追加療法
   LAMAの長期のコントローラとしての使用は外来治療で行うもので、救急医療現場では適しない。
   使用に当たっては尿閉、緑内障は禁忌です。
   「ICA+LAMA及びレスキューとしてSABA」の治療は推奨していません。
   つまりICS+LABAの方が有用だからです。
   原則として、LAMAの使用はLABAが処方できない患者さんの場合です。
   ただしICS+LABAにLAMAを追加する場合は、喘息のコントロールが優位でしかもQOLの向上が
   認められます。
   結論的には、LAMA適応は12歳以上でSmart治療のみではコントロールできないStep3以上の
   場合です。






私見)
 従来の本院の治療の方針と、あまり違いはないようでホッとしています。



◆ 参考文献

  Medica1 Practice;Oecember1 .2 019 Volume 36 Number 12
  今日の臨床サポート






32 ガイドライン喘息jama_cloutier_2020_sc_200005_1605887151.79707.pdf

33 FeNO.pdf

34 気管支熱形成術.pdf

36 smart治療.pdf

37 スマート治療ドクターサロン.pdf

38 喘息 ガイドライン2020 Focused Updates to the Asthma Management Guidelines_.pdf










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気管支喘息ガイドライン・2020年版 その1

気管支喘息ガイドライン・2020年版 その1


    〜院内予習編〜 

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 アメリカの学会NHLBIから、2020年度の気管支喘息ガイドラインが出ています。
膨大な文献なので暇なときに見たいと思っていますが、雑誌JAMAにサマリー的な文献が掲載されて
いましたので、それを次回ブログします。以前の私のブログもご参照ください。
先ずは予習の意味で、喘息の登場人物を整理してみます。


吸入ステロイド剤(ICS) 
  本ガイドラインではホルモテロールの有効性を示していますので、長時間作用性吸入β2刺激薬
  (LABA)との配合剤としては、シムビコートとフルティフォームとなります。

長時間作用性吸入β2刺激薬(LABA
  単独ではセレベントがありますが、後述するように単独使用によって喘息の重症化を招く危険性を指摘
  したsmart研究後は、吸入ステロイド剤との併用又は合剤が一般的です。

長時間作用性吸入抗コリン薬(LAMA)
  気管支を拡張するには交感神経のβ2を刺激すればよいのですが、交感神経の反対の副交感神経を
  抑制する、つまり抗コリン薬を用いても気管支は拡張します。これがLAMAです。
  LAMAは以前より閉塞性肺疾患(COPD)や長引く咳に処方されていましたが、最近では気管支喘息
  にも併用されて本ガイドラインでも推奨しています。
  一般的にはLAMAの方がLABAに比べてマイルドです。

短時間作用性吸入β2刺激薬(SABA)
  喘息薬は長期管理薬(コントローラ) と 発作治療薬(リリーバー、レスキュー) に分けられます。
  SABAはリリーバーとして処方されます。本院ではサルタノールかメプチンミニが主流です。

・ロイコトリエン受容体拮抗薬( LTRA )
  本院ではシングレア、キプレス、シングレアチュアブル、オノンを使用

smart研究とsmart治療
  LABAのセレベントが上市された時は画期的な薬剤で、喘息発作で苦しんでいる患者さんにとっては
  福音でした。もしこれがあればテレサテンを救えたのではと思いました。
  しかしその後の研究で、アメリカの黒人を中心としてセレベントが急性増悪を誘発するのではとの懸念
  から、一気に冷え込んでしまいました。
  喘息の発作は収まっても、喘息を引き起こす炎症は収束していないからと説明されています。
  それでも慎重に短期で使用すればSABAよりは有効ではないかと、依然として個人的には密かに
  思っています。
  Smart治療は、LABAとICSのホルモテロールの合剤のシムビコートがコントローラでもリリーバーでも
  有効とのスタディです。2020年のガイドラインではこのsmart治療が主体になっています。
  詳しくはドクターサロンとクリーブランド・ジャーナルに記載されていますので、ご参照ください。
  日本では、2018年に気管支喘息のガイドラインが改訂されています。
  雑誌Medica1 Practiceと今日の臨床サポートを参考にPDFを作成しました。






22 気管支喘息 今日の臨床サポート.pdf










posted by 斎賀一 at 20:16| Comment(0) | 喘息・呼吸器・アレルギー

インフルエンザ流行状況・12月27日現在

インフルエンザ流行状況・12月27日現在


<お知らせ>


開業医の有志によるネット情報でも、12月27日現在で千葉県及びその近隣でのインフルエンザの発生
状況はゼロです。
また12月25日発表の厚労省の報道機関に対する報告では、千葉県は0.01と極めて低率です。
この状況ではインフルエンザの検査をしても擬陽性の懸念があります。
 本院ではこの年末および年始においては、発熱患者さんに対し原則としてインフルエンザの検査は
行わない方針です。ご理解の程よろしくお願いいたします。






12 インフルエンザの感染状況.pdf









posted by 斎賀一 at 19:38| Comment(1) | インフルエンザ