2020年12月12日

サイトカインストーム・NEJMより

サイトカインストーム・NEJMより

Cytokine Storm
   N Engl J Med 2020;383:2255-73


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 雑誌NEJMに、サイトカインストームの総説が載っていましたので纏めてみました。
様々な要因で血液中のサイトカインが増加し始め免疫細胞の活性化がおき、生命をも脅かす炎症の
症候群です。要因となるトリガーは感染症、癌、自己免疫疾患などです。
しかし、サイトカインストームの定義は明白ではありません。
病因となるトリガーが無くなってからもサイトカインが増加して起こる病態ではありますが、サイトカインは本来は生命にとって重要な物質でもあり、ある時には生命体に傷害をも引き起こします。



1) 臨床症状
   サイトカインストームでは、多くが発熱を伴っています。
   下記に症状を図譜します。



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   また、サイトカインストームは除外診断ができる類のものではありません。
   様々な病態が交差しているからです。


2) 病態
   抗原(異物)が侵入すると免疫系が活性化します。やがてホメオスタシスに則って沈静化します。
   しかし、このバランスが崩れて免疫系が過剰反応を起こし、生体に傷害を引き起こすのがサイト
   カインストームです。
   免疫細胞の連絡をするたんぱく質のサイトカインの半減期はかなり短いため、一般的にはリンパ
   組織や炎症部位以外には作用しません。しかし全身性、または広範な炎症ではサイトカインが持続
   して産生されるのは合目的です。
   それがある一定レベル以上になると、サイトカインは生体に害を及ぼします。
   病因が消失してもなお、不適切に免疫系が活性化している状態がサイトカインストームです。
   ホメオスタシスのフィードバックが効かない状態です。



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   サイトカインの半減期は短く、また炎症部位の濃度は血中濃度を反映していません。
   従って単純にサイトカインの血中濃度を測定するだけでは、病態を診断できません。


3) サイトカインストームを引き起こす免疫細胞
   サイトカインストームは自然免疫に関連する細胞の繰り出すサイトカインに多く関係しています。
   好中球、マクロファージ、NK細胞です。
   その中でもマクロファージの放出するサイトカインが大量となり、組織障害を起こします。
   獲得免疫を司る主な細胞は、B細胞とT細胞です。
   サイトカインストームではそれぞれのT細胞がそれぞれのサイトカインを放出し、下記の細胞を誘導
   (recruitment)します。



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4) サイトカイン
   サイトカインストームの時に問題になるサイトカインは、インターフェロンγ、インターロイキン-1、
   インターロイキン-6、TNF、インターロイキン-18です。
   発熱はインターロイキン-1、インターロイキン-6、TNFが関与します。
   サイトカインストームの時にインターロイキン-6が血中で高値を示します。
   また血管内皮細胞の増殖を促すVEGFも増加します。TNFもサイトカインストームに関与します。
   最近ではマクロファージにより産生されるインターロイキン-18は、サイトカインストームの重症度
   と比例しており、重要なサイトカインと考えられています。
    (サイトカインが多く登場して、もう理解の限界です。図を見て整理したと思いましょう。)




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 (サイトカインの種類とそれを作る免疫細胞と作用を表しています。辞書代わりに見てみましょう。)


5) 新型コロナ関連のサイトカインストーム
   (本論文では新型コロナ以外のサイトカインストームも記載してありますが省略します。)
   新型コロナの重症例に免疫抑制剤が有効であることから推測しても、新型コロナにサイトカイン
   ストームが強く関与していることが分かります。
   現に新型コロナ関連のサイトカインストームの際に、サイトカインのインターロイキン-1、
   インターロイキン-6、TNF、インターフェロンγ、VEGF等の血中濃度が上がっています。
   特にインターロイキン-6と予後の悪さが比例しています。
   しかし、逆にインターフェロンγの値を重症でない中等症で見ますと、ウイルスの排除にポジティブ
   に働いています。
   また自己免疫的な要素もあるようで、子供の場合の多臓器系炎症性症候群は川崎病と類似しており
   免疫グロブリンやステロイドの静注が有効です。
   しかし無症状、重症例、慢性例がどのような関係で起こるのかは判明していません。
   サイトカインをブロックする治療が、かえってウイルスの排除を阻害して症状の悪化を招くのは、
   インフルエンザの場合も同様に認められています。
   更に抗インターロイキン-6治療は、予後に効果が認められていません。
   重症例にリンパ球減少症がなぜ起きるのかも解明されていません。
   また一般的な他のサイトカインストームでも凝固系異常が認められていますが、新型コロナにおける
   血栓症は遥かに頻繁で激甚です。
   ステロイドのデキサメサゾンは重症例には有効ですが、軽症、中等症ではむしろ悪化します。
   新型コロナの初期には免疫刺激薬が有効ですが、後期では有害です。
   デキサメサゾンも使用する時期が重要のようです。
   免疫抑制剤は初期には有害ですが、後期には有用のようです。






私見)
 新型コロナの病態にサイトカインストームが深く関わっているようですが、そのサイトカインストームの
 部屋の扉を開けてみたらその中は真っ暗で、やっと懐中電灯を照らし始めたような気がします。








本論文 nejm.pdf











posted by 斎賀一 at 18:08| Comment(0) | 感染症・衛生