2020年12月15日

新型コロナワクチンの副作用の報告その1・看護学者より

新型コロナワクチンの副作用の報告その1・看護学者より
 
A Nursing Researcher’s Experience in a COVID-19 Vaccine Trial



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 ファイザーの新型コロナワクチンの第3相臨床試験に、ボランティアとして参加したカルフォルニア在住の看護学者Choi氏が、2回目の接種後に複数の激しい副反応が出現しています。
その内容を雑誌JAMAに報告し、今後の対応策を提言しています。
Medscapeに論評を含めて紹介していますので、それを中心にブログしてみます。


1) Choi氏はボランティアとして、ファイザーのワクチン接種を受けています。
   接種はブラインドで行われていますので、本物のワクチンとプラシーボ(偽薬)のどちらを接種された
   かは本人は分かりません。
   8月の一回目の接種の時は特に症状はなかったようです。
   9月の2回目の接種後より症状が出現しています。接種後直ぐに注射部位に疼痛が出現し、夜になる
   と頭痛、悪寒、吐き気を伴います。夜中に何度も症状の悪化で目覚めました。注射した腕は殆ど
   動かすことが出来ませんでした。
   熟睡出来ず朝方には体温が40.5度に上がっていました。一日過ぎた翌朝には症状はすべて軽快
   し、注射部位だけが腫れていました。
   接種はブラインドで行われましたが、Choi氏は間違いなくワクチンを接種されたと考えています。
   Choi氏はこのワクチンが広く世間に採用されたら、自分と同じ症状の人が現れることを危惧し
   雑誌JAMAに投稿しています。
   決して本ワクチンに対して反対をしているのではなく、十分な説明と接種後の24時間体制での監視
   が必要と説いています。
   その後Choi氏は同僚にこのことを話すと、皆は同様にChoi氏が新型コロナに罹患したのではと思い
   ました。しかし副反応がすべて揃うような事例もあることを、Choi氏は理解してもらいたいと思って
   います。

2) ワクチンの専門家は、Choi氏の副反応は稀なケースで一般的には2〜10%で、多くても15%として
   います。副反応は12〜36時間の持続で軽快すると説明しています。

3) Choi氏は本ワクチンの有用性を十分に認識しており、今後もドキドキしながらも接種を続けると
   述べています。
   雑誌JAMAに掲載されている論文では、本ワクチンの第3相臨床試験の前のデータでは、副反応が
   以下の様に報告されています。
   倦怠感が75%、頭痛67%、悪寒33%、筋肉痛25%、発熱17%、関節痛17%です。
   ほとんどがどれか一つの副反応で、私のような(Choi氏)すべてが揃う副反応は稀だと思うが、
   十分に接種の際にコンセンサスを得ることが大事と締め括っています。





私見)
 本日はノーコメント
 次回パートU





1 medscapeコロナワクチン.pdf

2 JAMAコロナ ワクチン 副作用.pdf









posted by 斎賀一 at 17:54| Comment(1) | 感染症・衛生

2020年12月12日

サイトカインストーム・NEJMより

サイトカインストーム・NEJMより

Cytokine Storm
   N Engl J Med 2020;383:2255-73


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 雑誌NEJMに、サイトカインストームの総説が載っていましたので纏めてみました。
様々な要因で血液中のサイトカインが増加し始め免疫細胞の活性化がおき、生命をも脅かす炎症の
症候群です。要因となるトリガーは感染症、癌、自己免疫疾患などです。
しかし、サイトカインストームの定義は明白ではありません。
病因となるトリガーが無くなってからもサイトカインが増加して起こる病態ではありますが、サイトカインは本来は生命にとって重要な物質でもあり、ある時には生命体に傷害をも引き起こします。



1) 臨床症状
   サイトカインストームでは、多くが発熱を伴っています。
   下記に症状を図譜します。



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   また、サイトカインストームは除外診断ができる類のものではありません。
   様々な病態が交差しているからです。


2) 病態
   抗原(異物)が侵入すると免疫系が活性化します。やがてホメオスタシスに則って沈静化します。
   しかし、このバランスが崩れて免疫系が過剰反応を起こし、生体に傷害を引き起こすのがサイト
   カインストームです。
   免疫細胞の連絡をするたんぱく質のサイトカインの半減期はかなり短いため、一般的にはリンパ
   組織や炎症部位以外には作用しません。しかし全身性、または広範な炎症ではサイトカインが持続
   して産生されるのは合目的です。
   それがある一定レベル以上になると、サイトカインは生体に害を及ぼします。
   病因が消失してもなお、不適切に免疫系が活性化している状態がサイトカインストームです。
   ホメオスタシスのフィードバックが効かない状態です。



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   サイトカインの半減期は短く、また炎症部位の濃度は血中濃度を反映していません。
   従って単純にサイトカインの血中濃度を測定するだけでは、病態を診断できません。


3) サイトカインストームを引き起こす免疫細胞
   サイトカインストームは自然免疫に関連する細胞の繰り出すサイトカインに多く関係しています。
   好中球、マクロファージ、NK細胞です。
   その中でもマクロファージの放出するサイトカインが大量となり、組織障害を起こします。
   獲得免疫を司る主な細胞は、B細胞とT細胞です。
   サイトカインストームではそれぞれのT細胞がそれぞれのサイトカインを放出し、下記の細胞を誘導
   (recruitment)します。



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4) サイトカイン
   サイトカインストームの時に問題になるサイトカインは、インターフェロンγ、インターロイキン-1、
   インターロイキン-6、TNF、インターロイキン-18です。
   発熱はインターロイキン-1、インターロイキン-6、TNFが関与します。
   サイトカインストームの時にインターロイキン-6が血中で高値を示します。
   また血管内皮細胞の増殖を促すVEGFも増加します。TNFもサイトカインストームに関与します。
   最近ではマクロファージにより産生されるインターロイキン-18は、サイトカインストームの重症度
   と比例しており、重要なサイトカインと考えられています。
    (サイトカインが多く登場して、もう理解の限界です。図を見て整理したと思いましょう。)




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 (サイトカインの種類とそれを作る免疫細胞と作用を表しています。辞書代わりに見てみましょう。)


5) 新型コロナ関連のサイトカインストーム
   (本論文では新型コロナ以外のサイトカインストームも記載してありますが省略します。)
   新型コロナの重症例に免疫抑制剤が有効であることから推測しても、新型コロナにサイトカイン
   ストームが強く関与していることが分かります。
   現に新型コロナ関連のサイトカインストームの際に、サイトカインのインターロイキン-1、
   インターロイキン-6、TNF、インターフェロンγ、VEGF等の血中濃度が上がっています。
   特にインターロイキン-6と予後の悪さが比例しています。
   しかし、逆にインターフェロンγの値を重症でない中等症で見ますと、ウイルスの排除にポジティブ
   に働いています。
   また自己免疫的な要素もあるようで、子供の場合の多臓器系炎症性症候群は川崎病と類似しており
   免疫グロブリンやステロイドの静注が有効です。
   しかし無症状、重症例、慢性例がどのような関係で起こるのかは判明していません。
   サイトカインをブロックする治療が、かえってウイルスの排除を阻害して症状の悪化を招くのは、
   インフルエンザの場合も同様に認められています。
   更に抗インターロイキン-6治療は、予後に効果が認められていません。
   重症例にリンパ球減少症がなぜ起きるのかも解明されていません。
   また一般的な他のサイトカインストームでも凝固系異常が認められていますが、新型コロナにおける
   血栓症は遥かに頻繁で激甚です。
   ステロイドのデキサメサゾンは重症例には有効ですが、軽症、中等症ではむしろ悪化します。
   新型コロナの初期には免疫刺激薬が有効ですが、後期では有害です。
   デキサメサゾンも使用する時期が重要のようです。
   免疫抑制剤は初期には有害ですが、後期には有用のようです。






私見)
 新型コロナの病態にサイトカインストームが深く関わっているようですが、そのサイトカインストームの
 部屋の扉を開けてみたらその中は真っ暗で、やっと懐中電灯を照らし始めたような気がします。








本論文 nejm.pdf











posted by 斎賀一 at 18:08| Comment(0) | 感染症・衛生

2020年12月11日

サイトカインストームについて

サイトカインストームについて

     <院内勉強会



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 雑誌NEJMにサイトカインストームの総説が載っています。
良くまとめられた最新の情報ですが、その前に免疫学を復習してみました。
ジョンウエイ・トラバースの免疫学は、三国志を読むより面白い教科書です。
第3,5,7版と購入してきましたが、古い版にも分かりやすく表現してある部分があり、いいとこ取りで記載
してみます。図は7版から引用しました。
 ゴッドファーザー3部作をレンタルで見ましたが、ネットで登場人物を調べてから鑑賞してようやく理解
できました。
そんなわけで、先ず免疫劇場の登場人物から記載します。



免疫系の細胞



         21211-2.PNG   ←クリックで拡大


 
抗原提示細胞(APC)も重要です。APCは抗原(異物や病原体)を取り込んでいろいろなサイトカインを
放出し、免疫を司ります。APCには樹状細胞、マクロファージ、B細胞があります。
樹状細胞は皮膚、粘膜(新型コロナの場合は気道粘膜が問題)リンパ節に存在し、抗原を捕捉すると
移動してリンパ節で増殖し、特異的Tリンパ球に情報を提示します。
樹状細胞は、組織にへばりついたマクロファージともいえます。




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 さて問題のサイトカインとは、上記の免疫細胞より放出される可溶性蛋白です。
このサイトカインは近くでも遠くでも作用を及ぼして、免疫系細胞のネットワークを構築します。
サイトカインは産生した免疫系細胞自身ばかりでなく、他の細胞の挙動と性質を変化させます。
 免疫応答には自然免疫と獲得免疫があります。
生命誕生の過程で最初に自然免疫ができ、やがて獲得免疫が進化して形成されました。
しかし自然免疫が原初的という意味ではなく、高度に発達した機能です。
現に高等動物は、この自然免疫と獲得免疫がサイトカインの下で緊密に連絡して免疫機能が働いて
います。





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上の図から分かるように、自然免疫と獲得免疫の中心にあるのがAPC細胞です。
新型コロナウイルスが上気道に侵入したら、樹状細胞がそれを捉えて貪食します。
次に樹状細胞は移動性のマクロファージに変化してリンパ節に達すると、そこで自らも増殖しT細胞に
接触することにより抗原を提示し、更にサイトカインを介してそのT細胞を増殖させます。
図にはありませんが、T細胞はB細胞と連絡をとりあい抗体産生に働きかけます。
つまり、二度目の感染の記憶がある場合は直接B細胞にサイトカインを介して伝達し、迅速に抗体を作り出します。
その他に感染細胞を直接攻撃するキラー細胞(NK細胞)にも、サイトカインを介して情報を伝達します。





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 記載ミスです。「B細胞はTh2細胞に抗原を提示し、Th2細胞がB細胞を活性化し、増殖と分化を惹起
する。」が正しいです。つまりB細胞はTh2細胞と協力して、迅速かつ強力に抗体を産生します。
 B細胞もAPCから抗原提示されたナイーブT細胞も記憶細胞となります。
もちろん相互関係の情報物質は、サイトカインです。






私見)
 登場人物とその人間関係が分かったところで、明日のNRJM「ゴッドファーザー」に期待してください。
余談ですが「ゴッドファーザー」のパートTは、自分と仲間のファミリーだけを信じてのし上がっていく
ストーリーです。
パートUは二代目がその組織を維持するための葛藤を描いています。
パートVは全くの駄作です。二代目とファミリーとの信頼関係が崩壊し、実の家族にも、そして自分自身
にも裏切られる展開です。全く陳腐な内容と結末です。

お前ならどうするかって?
私が脚本を任されたら「再びファミリーを信じ、終わりのない旅路へと再出発をするエンディングです。」
 二代目よ、重荷を抱え果てしない旅路を頑張れ!!





◆参考書籍

 ・免疫生物学  原書3版   南江堂
 ・免疫生物学  原書5版   南江堂
 ・免疫学イラストレイテッド  原書7版  南江堂

 ブログの図が不鮮明のため下記のPDFで掲載しました。





免疫の教科書より.pdf









posted by 斎賀一 at 18:57| Comment(0) | 感染症・衛生