2020年11月04日

新型コロナの軽症又は中等症・NEJMからの総説

新型コロナの軽症又は中等症・NEJMからの総説
 
Mild or Moderate Covid-19 
N Engl J Med 2020;383:1757-66


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 新型コロナに関して徐々にではありますが、解明されてきた点を雑誌NEJMにuptodateされていました
ので纏めてみました。


1) 感染伝搬の主体は空気感染か飛沫感染です。
   空気感染は微粒子のaerosolで、飛沫感染はそれより大きな粒子のdropletにより起きます。
   それらの粒子は数メートル以内で濃縮していますので、フィジカルディスタンスをとり換気を頻回に
   行うことが、感染の伝搬予防の核心です。
   しかし換気の悪い室内で会話したり、歌ったり、大声を出したりしたら、2メートル以上の十分な
   フィジカルディスタンスをとっても感染は成立します。つまり呼吸器系からの感染が主体ですので
   マスク着用とフィジカルディスタンスが重要となります。
   ウイルスはプラスチックや金属などの無生物の器具に附着して数時間生存しますが、それからの
   感染は稀とされています。不確実な点もあり、もちろん綿密なクリーニングも大事です。

2) 発症の1〜3日前よりウイルスの放出は起きており、50%は無症状の人から感染しています。
   感染が成立すると、直ぐに鼻咽頭でウイルスは増殖し始めます。
   やがて1〜2週間してウイルス量は低下します。
   患者からは長期間PCR検査でウイルスを同定できますが、ほとんどウイルスは死滅しており、感染力
   はそれよりも短期間と想定されています。
   よって患者の隔離は、症状が出て10日かつ解熱後24時間と定められました。

3) 症状のある人では、その潜伏期は4〜5日です。
   症状の持続は97.5%が11.5日以内です。
   味覚障害と嗅覚障害は68%に認められますが、主に女性の方が多い傾向です。
   入院患者を調べますと、症状発現後の5〜8日に呼吸困難が出現しています。
   検査ではリンパ球減少、D-ダイマー増加、CRP、フェリチン増加が入院率に関係しています。
   増悪例を調べますと、軽症で発症しても平均で1週間後に重症化する場合がある。
   呼吸困難、多呼吸(呼吸促拍)、低酸素症(SpO2低下)は増悪の兆候なので、常に再評価が大事で
   ある。呼吸数が30以上、サチュレーションが93以下、レントゲンやCTの増悪が指標となります。
   コロナ前の心電図を入手しておくことも大事です。
   現在服用中の薬にQT延長を誘発するものがないかを確認しておくことも必要です。(従って診断で
   新型コロナが確定した患者さんには、以前の心電図を持参させておく配慮も有効かもしれません。)

4) 新型コロナを疑ったら、PCR検査を繰り返すことが大事だとしています。
   PCR検査の特異度は、ほぼ100%です。(特異度は擬陽性を表し、感度は偽陰性を示します。
   つまり特異度100%とは、擬陽性はほとんどないということです。内村航平さんの場合はどうなって
   いたのでしょう?)
   抗原検査は迅速で低コストですが、PCR検査と比較して感度は下がります。
   (偽陰性がある。本院での使用の抗原検査は、特異度と感度を含めてその精度は95%以上と言わ
   れています。しかし100%でないので、抗原検査後は場合によりPCR検査も想定しています。)
   抗体検査は、PCR検査が陰性なのに症状が14日も続いて新型コロナを疑う場合に限られそうです。

5) 軽症患者は特別な治療はなく、十分に管理された隔離が一般的です。
   その際に、パルスオキシメーターを携帯しておくことも有効です。
   コロナを疑った場合に、経験的にインフルエンザの治療を開始する場合も想定されます。
   新型コロナの症状が出現したら、早期でのレムデシビルの開始も選択肢の一つです。
   重症化した患者にステロイドのデキサメタゾンも選択肢の一つですが、適応は限定的です。

6) 高血圧治療薬のACE-2とARBに関しては、継続治療を勧めています。
   鎮痛解熱剤(NSAID)の使用に関して懸念されていますが、現段階では十分なエビデンスはありま
   せん。

7) (医療機関での)換気と綿密なクリーニングは当然必要ですが、手洗い励行(手袋)、マスク、
   フェイスシールドが医療従事者の感染予防のキーポイントです。
   もしも十分な設備や体制がなければ、院内でのネブライザーを用いての吸入療法は避けるべき
   です。(本院では、ネブライザー治療は新型コロナ感染を否定してからか、もしくは自宅での治療と
   なります。)

以上、意訳をお詫びします。





私見)
 新型コロナが流行り始めたときは、多くの専門家も紫外線が活発になる夏には収束するものと、安易に
 考えていました。各医療機関も短期勝負と踏んで、その対応は様々です。
 本院もあと少し頑張れば、その先にトンネルを抜け出せると思っていました。
 残念ながら新型コロナは収束せずにインフルエンザの季節となって、長いトンネルに入り始めています。
 全ての医療機関が正面から立ち向かわなくてはならない状況です。
 及び腰の院長の背中を見て、毎日頑張っている職員には感謝しています。









posted by 斎賀一 at 18:48| Comment(0) | 感染症・衛生