2020年08月05日

新型コロナの凝固異常・血栓症

新型コロナの凝固異常・血栓症
 
Coagulopathy in COVID-19:Manifestations and management



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 新型コロナが他のウイルス性疾患と異なる特徴として、凝固異常から血栓症を引き起こす病態が
分かってきています。
以前の私のブログもご参照ください。

 今回、雑誌cleveland clinic journalより総説が出ていましたので、簡単にブログしてみます。


1) 新型コロナでは、いろいろな部位に血栓ができる。静脈、細血管、肺血栓、急性動脈血栓です。
   報告によると、重症例では深部静脈血栓が25%認められています。
   他の報告でも深部静脈血栓、肺血栓、動脈血栓の合併が31%としています。
   しかもこれらのうちで肺血栓症は、81%と一番の高率です。
   感染の暴露を防ぐために簡易的なエコー検査(POCUS)でも、25~30%に深部静脈血栓症を証明
   しています。
   下記の図のように、静脈系の血流が遅いことで診断できます。




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2) 血液検査ではD-dimerが有効です。
   他の凝固系検査が正常のことも多く、血小板数も10~15万と軽度に減少程度です。
   D-dimerが0.5μg/ml異常では、重症例が59.6%でした。
   D-dimerが3.0μg/ml以上では、感度70.0%で特異度96.7%でした。
   血小板減少症は、重症例でも4~57.7%の頻度です。しかし血小板数も重症例の目安となります。
   治療に関しては、血小板数が2万5千あれば抗凝固薬の使用は認められています。




  

私見)
 少し前までは新型コロナの血栓症に抗凝固薬をいかに使用すべきかと論争がありましたが、あっという
 間に治療方針が確立されつつあります。
 発端は中国の病理学者の勇気ある研究からです。
 いつの時代でも、日本には学ぶべき巨人が大陸にいます。








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posted by 斎賀一 at 20:05| Comment(0) | 感染症・衛生

2020年08月03日

新型コロナの臨床症状・スマホからの回答

新型コロナの臨床症状・スマホからの回答
 
Real-time tracking of self-reported symptoms
to predict potential COVID-19



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 すでに多くのネットでも紹介されていますが、英国とアメリカでスマホのアプリを用いた新型コロナの
可能性がある人の追跡調査を、リアルタイムで自己申告した報告がありました。

日本では第二波が問題となっており、その多くが若者で軽症者とのことです。
本院でもブログしてみました。
もちろんスマホを利用した人は新型コロナを心配して登録していますので、他のウイルス性疾患も含まれ
ます。しっかりした登録基準がない代わりに、リアルタイムで実態を把握できます。
登録者の中で、新型コロナのPCR検査を受けて診断できた人だけを調査しています。


纏めてみますと

1) 登録者は2,618,862人(イギリス人は2,450,569人でアメリカ人は168,293人)です。
   PCR検査までいった人は、イギリス人は15,638人でアメリカ人は2,763人です。
   そのうちでPCR陽性者は、イギリス人が6,452人でアメリカ人は726人でした。




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2) 結論
   下記の図からわかるように、軽症者の場合は味覚嗅覚異常、倦怠感、持続する咳、食欲低下の
   組み合わせが診断に有用でした。




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私見)
 以前の私のブログで紹介した味覚嗅覚異常の集団とは異なり、一般外来で風邪症状の患者さんに匹敵
 すると思われます。
 十分に心して診療にあたりましょう。
 昨日のNHK「小さな旅」で、集落の農村家庭工場で元気に働くお年寄り達を紹介していました。
 その中に感動的な言葉がありました。


「辛抱仕事」






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posted by 斎賀一 at 20:14| Comment(2) | 感染症・衛生