2020年07月11日

原発性胆汁性胆管炎(PBC)

原発性胆汁性胆管炎(PBC)



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 外来患者さんで、胆道系酵素のみが上昇してエコー検査では閉塞性疾患が認められない時、更に
肝炎ウイルスが陰性ならば、PBCを疑います。
本疾患の原因は、リンパ球のT細胞が肝内細胆管を攻撃する自己免疫疾患です。
倦怠感、皮膚掻痒症、ドライマウス、甲状腺疾患が初発症状で来院する事もあります。

 Uptodateによりますと、1/2が倦怠感で、1/3が皮膚掻痒症です。
この倦怠感は、筋肉内のミトコンダリアの機能低下が主とされています。
皮膚掻痒症は夜間に増悪し、乾燥性皮膚とも関係しています。
原因は不明ですが、8~15%に右季肋部痛を認めています。70%に肝脾腫を伴います。
抗ミトコンドリア抗体が有力な診断ツールですが、早期の診断では13%との報告もあり、確定診断に
対しての時期には問題が残ります。
また抗核抗体も70%が陽性です。
95%が女性で、小児や30歳以下では稀としています。


以下は「今日の臨床サポート」を纏め、下記にPDFでも掲載させて頂きます。

・PBCは中高年女性に好発し、胆道系酵素上昇と血清IgM高値ならびに抗ミトコンドリア抗体(AMA)陽性
 を特徴とする。織学的には、慢性非化膿性破壊性胆管炎(chronic non-suppurative destructive
  cholangitis、CNSDC)を特徴とし、小葉間胆管が破壊されることにより慢性進行性に胆汁うっ滞を
 呈する疾患である。

・胆道系酵素(ALP、γ-GTP)の上昇を認め、抗ミトコンドリア抗体(AMA)が約90%の症例で陽性である。
 IgMの上昇を認めることが多い。

・肝組織では、肝内小型胆管(小葉間胆管ないし隔壁胆管)に慢性非化膿性破壊性胆管炎(chronic
 non-suppurative destructive cholangitis、CNSDC)を認める。
 中高年女性に好発し皮膚瘙痒感で初発することが多い。

・皮膚瘙痒感、黄疸、食道胃静脈瘤、腹水、肝性脳症など肝障害に基づく自他覚症状を有する症候性
 原発性胆汁性胆管炎(symptomatic PBC、sPBC)と、無症状の無症候性(asymptomatic)PBC
 (aPBC)に分類される。

・PBC の進展は緩徐進行型、門脈圧亢進症先行型、黄疸肝不全型、の3型に大きく分類される。

・ウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid、UDCA) が第1選択薬である。
 進行した症例では肝移植が唯一の救命手段となる。

・欧州肝臓学会(EASL)、米国肝臓学会(AASLD)にて「primary biliary cirrhosis」から
 「primary biliary cholangitis」へ変更されることが認められた。
 わが国においても「原発性胆汁性肝硬変」の病名が「原発性胆汁性胆管炎」に変更された。

・シェーグレン症候群、関節リウマチ、慢性甲状腺炎などの自己免疫性疾患に肝障害を認めた場合にも
 原因疾患として想起する。診断の際は、50〜60%は無症状であるとの報告がある。

・血液所見で慢性の胆汁うっ滞所見(ALP、γ-GTP の上昇)と AMA陽性(間接蛍光抗体法またはELISA
 法による)(感度 95%、特異度98%)、CT検査等で他疾患が除外され、更に肝組織学的検査で特徴的
 所見(CNSDC、肉芽腫、胆管消失)が確認されればPBCの診断となる。

・現実的には、ALPが正常値上限の1.5倍を認め、AMA抗体が1:40倍以上を認めた場合は、ほとんどの
 場合でPBCの診断となる。

・わが国におけるPBCの全国調査によると、無症候性PBCの10年生存率は98.6%、20年生存率は
 95.9%と良好であるが、症候性に進行したPBCでは不良である。

・血清総ビリルビン値は、予後因子として最も重要な因子である。

・自己免疫性肝炎の病態を合併したPBCにおいては、ステロイド薬が有効である。






私見)
 病理の文献と私のブログも掲載いたします。



 
 ◆参考文献

  ・病理診断アトラス  ベクトル・コア
  ・消化器病理の見かたのコツ  羊土社
  ・一発診断  文光堂
  ・UPTODATE
  ・今日の臨床サポート






11 PBC まとめ.pdf

12 PBC 病理.pdf

13 原発性シェーグレン症候群_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_ (3).pdf

13 原発性シェーグレン症候群_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_ (4).pdf

13 原発性シェーグレン症候群_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_ (5).pdf

14 PBCの検査 (2).pdf

14 PBCの検査 (3).pdf












posted by 斎賀一 at 18:21| Comment(0) | 消化器・PPI

 自己免疫性肝炎

 
自己免疫性肝炎



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 Uptodateによりますと
症状は多岐に亘り、無症状から劇症まである。
臨床症状が軽度から肝硬変や、稀ながら肝癌の症例もある。
合併症として、関節痛は非特異的ながらある。
その他として溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、糖尿病、潰瘍性大腸炎、甲状腺炎がある。


NEJMによりますと
増悪因子としてはウイルス (麻疹、サイトメガロ、EB、肝炎ウイルス)
薬物 (インターフェロン、ミノマイシン、リピトール、ボルタレン、大柴胡湯)
自己抗体が10%に陰性である。
オーバーラップとしてPBCとPBSがあるが、PBSに移行したりPBSからAIHに移行する場合もある。


以下に「今日の臨床サポート」を再び拝借して、PDFも掲載しました。

・自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis、AIH)とは、発症・進展に自己免疫機序が関与している
 と考えられる慢性肝疾患で、抗核抗体、抗平滑筋抗体などの自己抗体が陽性で、IgG高値が特徴
 である。

・陽性となる自己抗体により、I〜W型に分類され病態も異なる。
 LE細胞現象陽性例は、かつてルポイド肝炎と呼ばれていた。

・稀な疾患で、中年以降の女性に多く発症する。わが国の総患者数は約20,000人と推定されている。

・急性発症例(約10%)と慢性肝障害での発症(約90%)がある。
 急性発症例では全身倦怠感、黄疸を呈することが多い。
 慢性肝障害での発症例では、自覚症状を欠く症例が稀でない。

・多くの症例では副腎皮質ステロイドが著効するが、治療開始が遅れた場合など無効となる。

・特異性の高い血液診断マーカーはなく、肝炎ウイルス感染、薬物性肝障害などを否定する除外診断
 となり、スコアリングシステムを利用して総合的に診断される。

・原則的に副腎皮質ステロイド剤(ステロイド)による治療を行う。
 (例:プレドニゾロン 20〜40mg/日 あるいは0.6mg/kg/日 にて開始)
 ステロイド加療後、通常1〜3週間でトランスアミナーゼ値は著明に改善する。トランスアミナーゼ値の
 推移をみながら5mg/週で減量し、維持量の1つの目安である10mg/日まで数カ月かけて徐々に減量
 する。

・トランスアミナーゼがわずかに上昇しているのみできわめて軽症な例や、副作用などの理由でステロイド
 投与が不能な例では、ウルソデオキシコール酸 (UDCA;ウルソ)、強力ネオミノファーゲンシーなどが
 投与される。

・ステロイドを中止できる例は少ない。また中止後の再燃も稀でなく、経過観察は生涯を通じて必要で
 ある。


 最近の雑誌小児科によりますと、自己免疫性肝炎(AIH)と原発性硬化性胆管炎(PSC)に注意が必要 
としています。
話が脇道に逸れますが、小児でもウイルス性疾患で肝障害が起きます。しかしこの場合は一時的で、
肝障害が持続する場合は、AIHとPSCを念頭に置かなくてはいけないと指摘しています。





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私見)
 病理像を下記にPDFで掲載しました。




 ◆参考文献
  ・NEJM January 5 2006
  ・雑誌 小児科 V61 .N4. 2020
  その他 同






21 AIH まとめ.pdf

22 AHI 関する病理.pdf











posted by 斎賀一 at 17:18| Comment(0) | 消化器・PPI