原発性胆汁性胆管炎(PBC)
外来患者さんで、胆道系酵素のみが上昇してエコー検査では閉塞性疾患が認められない時、更に
肝炎ウイルスが陰性ならば、PBCを疑います。
本疾患の原因は、リンパ球のT細胞が肝内細胆管を攻撃する自己免疫疾患です。
倦怠感、皮膚掻痒症、ドライマウス、甲状腺疾患が初発症状で来院する事もあります。
Uptodateによりますと、1/2が倦怠感で、1/3が皮膚掻痒症です。
この倦怠感は、筋肉内のミトコンダリアの機能低下が主とされています。
皮膚掻痒症は夜間に増悪し、乾燥性皮膚とも関係しています。
原因は不明ですが、8~15%に右季肋部痛を認めています。70%に肝脾腫を伴います。
抗ミトコンドリア抗体が有力な診断ツールですが、早期の診断では13%との報告もあり、確定診断に
対しての時期には問題が残ります。
また抗核抗体も70%が陽性です。
95%が女性で、小児や30歳以下では稀としています。
以下は「今日の臨床サポート」を纏め、下記にPDFでも掲載させて頂きます。
・PBCは中高年女性に好発し、胆道系酵素上昇と血清IgM高値ならびに抗ミトコンドリア抗体(AMA)陽性
を特徴とする。織学的には、慢性非化膿性破壊性胆管炎(chronic non-suppurative destructive
cholangitis、CNSDC)を特徴とし、小葉間胆管が破壊されることにより慢性進行性に胆汁うっ滞を
呈する疾患である。
・胆道系酵素(ALP、γ-GTP)の上昇を認め、抗ミトコンドリア抗体(AMA)が約90%の症例で陽性である。
IgMの上昇を認めることが多い。
・肝組織では、肝内小型胆管(小葉間胆管ないし隔壁胆管)に慢性非化膿性破壊性胆管炎(chronic
non-suppurative destructive cholangitis、CNSDC)を認める。
中高年女性に好発し皮膚瘙痒感で初発することが多い。
・皮膚瘙痒感、黄疸、食道胃静脈瘤、腹水、肝性脳症など肝障害に基づく自他覚症状を有する症候性
原発性胆汁性胆管炎(symptomatic PBC、sPBC)と、無症状の無症候性(asymptomatic)PBC
(aPBC)に分類される。
・PBC の進展は緩徐進行型、門脈圧亢進症先行型、黄疸肝不全型、の3型に大きく分類される。
・ウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid、UDCA) が第1選択薬である。
進行した症例では肝移植が唯一の救命手段となる。
・欧州肝臓学会(EASL)、米国肝臓学会(AASLD)にて「primary biliary cirrhosis」から
「primary biliary cholangitis」へ変更されることが認められた。
わが国においても「原発性胆汁性肝硬変」の病名が「原発性胆汁性胆管炎」に変更された。
・シェーグレン症候群、関節リウマチ、慢性甲状腺炎などの自己免疫性疾患に肝障害を認めた場合にも
原因疾患として想起する。診断の際は、50〜60%は無症状であるとの報告がある。
・血液所見で慢性の胆汁うっ滞所見(ALP、γ-GTP の上昇)と AMA陽性(間接蛍光抗体法またはELISA
法による)(感度 95%、特異度98%)、CT検査等で他疾患が除外され、更に肝組織学的検査で特徴的
所見(CNSDC、肉芽腫、胆管消失)が確認されればPBCの診断となる。
・現実的には、ALPが正常値上限の1.5倍を認め、AMA抗体が1:40倍以上を認めた場合は、ほとんどの
場合でPBCの診断となる。
・わが国におけるPBCの全国調査によると、無症候性PBCの10年生存率は98.6%、20年生存率は
95.9%と良好であるが、症候性に進行したPBCでは不良である。
・血清総ビリルビン値は、予後因子として最も重要な因子である。
・自己免疫性肝炎の病態を合併したPBCにおいては、ステロイド薬が有効である。
私見)
病理の文献と私のブログも掲載いたします。
◆参考文献
・病理診断アトラス ベクトル・コア
・消化器病理の見かたのコツ 羊土社
・一発診断 文光堂
・UPTODATE
・今日の臨床サポート
11 PBC まとめ.pdf
12 PBC 病理.pdf
13 原発性シェーグレン症候群_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_ (3).pdf
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13 原発性シェーグレン症候群_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_ (5).pdf
14 PBCの検査 (2).pdf
14 PBCの検査 (3).pdf