血尿に対するガイドライン
Microhematuria: AUA/SUFU Guideline
アメリカの泌尿器学会(American Urological Association)から、血尿に対するガイドラインが出て
いますのでブログしてみました。
本ガイドラインは泌尿器科の立場ですので、当然趣は悪性腫瘍に軸足があります。
本院ではプライマリーのため、幅広い観点より本ガイドラインを参考に独自の解釈を含めまして、ストラ
テジーを組んでみました。職員の皆さん、参考にして下さい。
・テステープで潜血反応が陽性の場合は、速やかに沈渣を作り検鏡をします。
検鏡では、強拡大で1視野あたり3個の赤血球以上を陽性とします。
一見厳しい基準のようですが、尿が薄い場合は赤血球が融解してしまうために基準を下げています。
たった1回の尿検査で精度は95%なので、繰り返さなくても良いようです。
採尿時には注意が必要です。
最初の尿は捨てて(約10cc)中間尿を採ります。
男性の場合は可能な限り中間尿ですが、女性の場合は極力中間尿でなければ、診断確率が下がり
ます。
運動後の採尿は避けてください。
尿比重が低くない事も条件ですので、検尿時に尿比重も記載しておいてください。
・尿沈渣で確定し、陽性ならば必ずエコー検査を実施し、泌尿器科や婦人科の疾患、特に悪性疾患を
鑑別しなければなりません。
血尿を引き起こす職業も、問診する必要があります。
・抗血小板薬や抗凝固薬を服用しているからと言って安易に除外せず、同様に検索する必要があります。
ある報告によりますと、血尿患者の5.8%に膀胱癌が見つかり、その中の15.3%は抗血小板薬か
抗凝固薬を服用していました。
・尿路感染症による血尿と診断しても、必ず治療後の再検で血尿が無くなっている事を確認してください。
この場合も婦人科疾患を除外する必要があります。
そのために1か月後の再々検査が必要で、繰り返している場合は尿路感染症の再発と同時に、婦人科
疾患の可能性も想定してください。
・尿蛋白陽性や尿沈渣で円柱、赤血球の破壊像があれば腎疾患を鑑別してください。
その際にも腎蔵の悪性腫瘍を鑑別しなくてはなりません。
尿路系の悪性腫瘍でも腎機能が低下しているケースがあり、危険率は1.39との事です。
(つまり内科的腎機能低下の疾患であるCKDでも、必ずエコー検査は必要です。)
・最初の血尿の評価後に経過観察するにあたり、先ず患者のリスクの層別化が必要です。
◌低リスクは6カ月に1回の検査
禁煙: 男性は40歳以下で、女性は50歳以下 強拡大で3~10
◌中リスクは尿の細胞診とエコー検査
喫煙: 60歳以下 強拡大で11~25
高リスクは細胞診と画像診断
ヘビースモーカー: 60歳以上 強拡大で25以上
・最初に細胞診検査をする必要性はない。
・腫瘍マーカーは推奨しない。
・繰り返す血尿はエコー検査並びに画像診断が必要
・家族歴の問診も必要
・血尿が陰性になっても1年以内の再検は必要
・経過観察中に肉眼的血尿を認めたら、診断と評価はリセットして再検査を要する。
私見)
本院は尿路感染症と腎疾患が主体ですが、悪性腫瘍を念頭に置いた本ガイドラインも大いに参考に
しましょう。
血尿 SUFU Guideline - American Urological Associ.pdf