2020年06月23日

新型コロナの無症状者の自然経過  ダイアモンド・プリンセス号

新型コロナの無症状者の自然経過
 ダイアモンド・プリンセス号
 
Natural History of Asymptomatic SARS-CoV-2 Infection



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 記憶にも新しいダイアモンド・プリンセス号における日本からの報告が、雑誌NEJMに掲載されて
いましたのでブログしてみます。



1) 乗客及び乗組員3,711名の内712名が、新型コロナに感染しました。
   更にその中の410名(58%)は、最初にPCR検査をした時点では無症状でした。

2) 先ず一陣としてPCR陽性で無症状の96名(乗客と乗組員)と、PCR検査で陰性のCabinmate
   (乗客)の32名を、ダイアモンド・プリンセス号より下船して基幹病院に入院しました。
   入院後に96名中の11名が新型コロナの症状が出現しています。PCR陽性判定後の平均で4日後
   でした。この場合は無症状と言うよりは発症前(presymptomatic)と考えられます。
   Presymptomaticの頻度は年齢とともに頻度が増加しています。
   cabinmateの32名の中で8名が、観察入院後72時間でPCR検査陽性となっています。
   最終的に90名が無症状のまま2度目のPCR検査で陰性となっています。

3) 結論
   最初のPCR検査から入院後のPCR検査の間隔は、平均で6日でした。
   最初の陽性判定から2回目の検査で陰性に回復した間隔は、平均で9日です。
   この回復期間の遅れは年齢と共に増加しています。
   多くの無症状者はそのまま無症状でした。(90/96+32;70%)




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 今一度上の図を参考にしますと
 ・3密の場合に感染者がいると言うセッティングでは、最初にPCR検査が陰性でもその後陽性に
  なる確率は29% (8/28)
 ・最初のPCR検査は陽性でありながら無症状の場合でも、その後に症状が出る場合は、11%(11/96)
  あります。





私見)
 クラスターが発生した場合は、やや高齢者においては、最初のPCR検査が陰性でもやがて陽性になる
 率は30%あるので再検査が必要です。
 また、無症状で陽性でもやがて10%の人に症状が出現します。
 前回のルーズベルト号のブログと比較しますと、クラスター、3密、高齢者の場合には当たり前ですが
 経過観察が必要です。
 また、高齢者の場合はウイルス学的に回復が遅くなります。




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インフルエンザ同様に、高齢者には様々な面で注意が必要です。
ついでながらネットの情報を下記に掲載します。






COVID-19_pandemic_on_Diamond_Prin.pdf












  
 
posted by 斎賀一 at 18:30| Comment(0) | 感染症・衛生

2020年06月22日

航空母艦ルーズベルト号・新型コロナ

航空母艦ルーズベルト号・新型コロナ
 
SARS-CoV-2 Infections and Serologic Responses
from a Sample of U.S. Navy Service Members


 
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 アメリカの航空母艦ルーズベルト号の乗務員が、3密の状況で新型コロナに感染しました。
対象者が若い人中心で、新型コロナ感染のケースとしてCDCのMMWRに報告されています。
前知識として、抗体検査のELISA法とmicroneuralization assayについて調べました。
下記のPDFをご参照ください。


本レポートを纏めますと

1) 乗組員4,800人中1,000人が新型コロナに感染しています。乗務員の382人がボランティアとして
   その後の調査に参加しています。なお、382名には以前に新型コロナに感染した人、今回感染した人
   及び未感染者が含まれます。(以前とは今回の調査の前のPCRの結果の事で、誤解のないように)
   382名中267名が、再度PCR検査を実施しています。(70%)
   平均年齢は30歳。 238名(238/382;62%)が以前または今回の感染を証明しました。
   その中で194名(194/238;81.5%)が何らかの症状を有していました。
   44名(44/238;18.5%)が無症状でした。 
   2名(0.8%)が入院しています。
   感染率はマスク装着の場合は55.8%に対して、未装着は80.8%でした。
   その他の3密を避けていたグループでは、概ね70%から55%に減少しています。

2) 短期的かもしれませんが、抗体を有する人の中で、感染の予防となる抗体のneutralizing
   antibodiesの率は最大で59.2%でした。
   ELISA法はアメリカで汎用していますが、これは新型コロナのスパイクに対する抗体のIgMとIgGを
   含めた全ての抗体(pan-immmunoglobulin)を調べています。
   従って以前または現在の感染も含めた検査ですし、これをもって感染の予防効果があるとは言い
   切れません。
   一方で続けて行われたmicroneuralization assayは、新型コロナ感染の予防効果がある抗体の
   有無を調べる検査です。
   ELISA法が陽性は2/3でしたが、これは現在ばかりでなく以前の感染も含まれます。
   ELISA法が陽性の中でmicroneuralization assayも陽性なのは、59.2%でした。(135/228)
   つまりELISA法が陽性の約半分が、感染予防効果のあるneutralizing antibodiesも陽性となり
   それは症状発現後の40日以上も同定出来ました。
   PCR法の陽性率は36.7%(98/267)です。






私見)
 本報告には限界(limitation)がありますが、私なりに結論を纏めますと
 ・残念ながら、3密状態では無症状の人からの感染もある。
 ・マスク、手洗い、密接と密集の回避、により感染をかなり予防できる。
  其々が約55%削減できますので、組み合わせる事により理論的には10%近くまで減少出来そう
  です。
 ・若い健康な人に重症感はありません。
  発熱が約半数程度ですが、味覚障害と嗅覚障害が多い事にも注意が必要な様です。




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 インフルエンザの流行期には、この結果を参考にして検査の手順を構築したいと思っています。
 どの新型コロナの検査が本院で出来るか未定ですが、患者さんの動線も含めまして、職員の皆さんと
 ストラテジーを考えましょう。









新型コロナ Navy Service Members.pdf

エライザ.pdf1.pdf

Use of a Blockade-of-Binding ELISA and Microneutralization Assay to Evaluate Zika Virus.pdf








posted by 斎賀一 at 19:24| Comment(1) | 感染症・衛生

2020年06月19日

新型コロナにおけるマスクの重要性・WHOより

新型コロナにおけるマスクの重要性・WHOより
 
Advice on the use of masks in the context of COVID-19



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 昨日のNHKの番組で、可視化された伝搬方法が良く分かりました。
しかし、若干誤解が生じないかと危惧する点もありました。
WHOより、マスクの重要性を指導するガイドラインが載っていますので纏めてみました。


1) 新型コロナの伝搬の仕方は、主に飛沫感染と接触感染です。
   飛沫感染は密接(close contact)が1メートル以内の場合に起きます。
   感染者が咳、クシャミをすれば口、鼻、目からウイルスは侵入します。
   特別な環境(密集、密閉)の状態ではair borne(空気感染)の可能性も出てきます。
   しかしエアロゾル発生手技(aerosol-generating procedures)の無い状態で、一般的な
   空気感染が生ずるかは現在でも検討中です。
   エアロゾル中のウイルスに感染させる能力があるかも疑問視されています。
   実験でのジェット噴霧は一般的ではありません。
   エアロゾルから付着したウイルスにどれだけの感染力があるかも、はっきりしたエビデンスは
   ありません。

2) 感染は症状のある人との密接で起こります。
   無症状の人からの感染も否定は出来ませんが、はっきりしたエビデンスはなく媒介物からの感染も
   考えられ、バイアスが係っている可能性もあります。
   症状がある人や症状の出る直前の人からはウイルスが多く排出しますが、症状の後期には減少
   します。無症状患者は6~41%と幅が広いです。
   無症状の人からもウイルスの排出は認められていますので感染の伝搬の可能性はありますが、
   有症状の人から比べるとかなり低いと考えられています。
   なお、中国からの報告では無症状感染者からの感染は14%でした。一般的には症状が出現して
   8日間でウイルスの放出はなくなります。それより長引く排出例もありますが、感染力に乏しい
   ウイルスと考えられます。

3) マスクは重要な個人防護ですが、手洗い、密接を避ける(physical distancing)、ゴーグルの
   使用とのコンビネーションが重要です。
   サージカルマスクが原則ですが、fabric(織布マスク、布マスク)も代替となりえます。
   その際は何層になっているかが問題で、少なくとも3層が必要です。
   予防効果の面でも、患者に対してマスクを装着させることが必須です。
   その場合は感染者に代替として、布マスクでも有効です。
   織布マスクでは手洗い、physical distancingを併用する必要があります。






私見)
 ややおおらかなWHOのガイドラインは殺伐とした今にとって、ほっとします。
 WHOと言えば山一證券の野澤正平氏の言葉が思い出されます。

 「私が悪いんです。社員は悪くはありません。社員は一生懸命、頑張ってくれています。」

 私も勇退する時は、野澤社長の様に心に残る言葉を残したいものです。






WHO-2019-nCov-IPC_Masks-2020.4-eng.pdf










posted by 斎賀一 at 18:19| Comment(2) | 感染症・衛生