痛風のガイドライン・2020年版
2020 American College of Rheumatology Guideline
for the Management of Gout
アメリカの学会ACRより、本年度の痛風のガイドラインが発表になっています。
簡単に要点だけを纏めてみました。
1) 尿酸降下薬の導入は痛風結節がある事、レントゲンにて痛風に関与する関節の破壊像の存在、
1年間に2回以上の痛風発作がある事
1年間で1回程度の発作でも、最近発作が起きた場合には尿酸降下薬を導入する場合もある。
エビデンスとしては、フェブリクを服用すると発作を41%から30%に減少できる。
発作が1回だけの場合は、下記の条件で尿酸降下薬を導入する。
・中等度以上の慢性腎臓病(CKD) ・尿酸値が9mg/dl以上 ・尿路結石
痛風発作の症状がない高尿酸血症の人にも、条件付きで尿酸降下薬を導入する場合がある。
エビデンスとしては、尿酸値が9mg/dl以上の人は5年以内に稀に20%の人が痛風発作を起こす。
よって慢性腎臓病、尿管結石、心血管疾患のある場合でも尿酸降下薬の導入を、積極的には推奨
していない。
2) ザイロリックとフェブリックをステージ3の慢性腎臓病(CKD)に推奨
その場合、ザイロリックは100mg/日以下から、フェブリックは40mg/日以下から漸増すべきで
ある。
3) 予防として、コルヒチン、鎮痛薬(NSAIDs)、経口ステロイドを併用する事を推奨する。
尿酸降下薬を導入したら、3~6カ月間は併用の継続を勧めている。
特に中止後に発作が起こる場合は継続が必要
4) 発作の期間中に尿酸降下薬を導入する事は構わない。
発作が終息してからと言われていたが、尿酸降下薬を開始する方が利点が多い。
5) 尿酸値の治療目標は6mg/dl
尿酸降下薬の服用を永続的に継続する事もある。
尿酸降下薬を中止したとして、5年間で尿酸値が7以下で、発作が無い場合は僅か13%であった。
6) ザイロリック
尿酸降下薬の第一選択薬である。アジア系の人にはアレルギー反応が多いようだ。
本来は事前にHLA-B*5801の検査を推奨している。
100mg/日以下より導入し、漸増していく。
7) フェブリック
ザイロリックの代替薬である。
アメリカのFDAより心血管疾患のある人に対して、一時警告が発せられた。
現在では統計的問題であると言われているが、処方する場合は患者とのコンサルトが必要となる。
8) ユリノームなどの尿酸排出薬
一日の尿酸の排出検査が必要となる。
尿のアルカリ化薬の併用も大事
9) 痛風発作の治療
・コルヒチンは、低用量と高用量では効果が同じである。
勿論高用量の方が副作用が多い。
・患部のアイシングは効果的
・経口ステロイドも有効
・点滴、局注も代替可
10) ライフスタイル
・節酒は時に効果がある。
ビールを飲むと尿酸値が0.16mg/dl上昇する。
しかし、アルコールを飲み過ぎると24時間以内に痛風発作が40%増加するとのデータもある。
(40%起こるのでなく、増加率の問題)
・プリン体の摂取制限も時には効果がある。
良く知られている事だが、量が問題で一般的に効果は左程ではない。
・フルクトース(甘味のドリンクなど)は制限したほうが良い。
フルクトースを1gr/体重kgを摂取すると、尿酸値が2時間以内に1~2mg/dl上昇する。
・果物の食べ過ぎに注意する。
・ダイエットも必要かもしれない。
・ビタミンCの摂取は良い。
11) 基礎疾患として併用薬がある場合
・降圧利尿薬は避けた方が良い。
・ARBはニューロタンが選択薬であるが、降圧効果を優先すべきである。
・少量アスピリンは場合により中止も選択肢とする。しかし基礎疾患が大事
・脂質異常症ではスタチンよりフィブラート系が良い。しかしスタチンの方が利点が多く、
必ずしも推奨はしていない。
以上の項目は、繰り返しますが利点がある場合のみでかなり限定的です。基礎疾患の治療が当然
優先になります。
私見)
以前の私のブログもご参照ください。
実地医療に則したガイドラインです。
痛風.pdf