2020年05月29日

小児の鼻のACE2レベルと新型コロナ その2

小児の鼻のACE2レベルと新型コロナ その2
 
Nasal ACE2 Levels and COVID-19 in Children
 


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 前のブログ、その1で紹介しました論文の論説が同じJAMAに載っていますので、掻い摘んで纏めて
みます。


1) 小児の新型コロナ患者(index case)との接触の機会は、30~49歳と比較すると同じか若干多い
   傾向ですが、60歳と比較するとやや少ない傾向です。
   この事から言える事は、小児が殊更に新型コロナ患者との接触が少ないから罹患率が低いとは言え
   ない様です。

2) 上気道である篩骨洞の外科手術標本を調べると、ACE2は1.3%しか表現していませんが、ACE2と
   TMPRSS2を同時に表現しているのは0.3%でした。

3) その1の論文からも、小児では鼻の単一細胞でのACE2の表現は少なく、新型コロナの感染の頻度
   が低い事を裏付けています。

4) ACE2は新型コロナの感染機会を増加させる悪玉の印象ですが、本来は以前のブログでも紹介
   しましたが炎症を消褪させる善玉の働きをします。
   下気道でのACE2の低下は、肺組織の障害を増悪させてしまいます。
   その1の論者は、鼻腔のACE2の低下がそのまま下気道には当てはまらないとしています。
   下気道でのACE2の調整は(regulation)色々であるとしています。
   今後は小児における下気道でのACE2の表現を調べる事が重要と思われる。
   また、鼻腔でのACE2を低下させることが治療に直結するかもしれない。






2 鼻 ACE-2 小児.pdf










posted by 斎賀一 at 20:29| Comment(0) | 感染症・衛生

小児の鼻のACE2レベルと新型コロナ その1

小児の鼻のACE2レベルと新型コロナ その1
 
Nasal Gene Expression of Angiotensin-Converting
Enzyme 2 in Children and Adults


    
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 子供には新型コロナが感染しにくく重症例が少ないとの報告がありますが、今回雑誌JAMAに上気道、この場合は鼻の粘膜のACE2のレベルに注目した短報がありましたのでブログしてみます。


1) 本研究は、喘息のマーカーを鼻の粘膜から調べる目的で始められています。
   2015~2018年間の4~60歳にかけて、鼻の粘膜をブラッシュで採取しRNA安定液に保存して
   ありました。
   305症例です。
   鼻の粘膜におけるACE2発現量を、下記の年齢別に調べました。
   ・10歳以下 ・10~17歳 ・18~24歳 ・25歳以上の4グループです。

2) 結果は下記のグラフのとおりで、明らかに年齢により直線的に増加しています。
   この結果は喘息の有無に関係がありませんでした。




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3) 若い小児では鼻の粘膜にACE2の発現が少ない事から、新型コロナの侵入が抑えれているとして
   います。





私見)
 そうありたいものです。
 今季のインフルエンザには万全を期しましょう。







1 小児 鼻 ACE2.pdf












posted by 斎賀一 at 19:46| Comment(0) | 感染症・衛生

新型コロナウイルスの侵入・分子生物的解析

新型コロナウイルスの侵入・分子生物的解析
    <業務連絡用>
The Molecular Targets of SARS-CoV-2


    

 新型コロナに関する医学・科学的進展は目を見張るものがあります。
門外漢には理解の外ですが、ネットで素人でも分かりやすく解説した総説が載っていましたのでブログ
します。
職員の皆さん、次回のブログのため予習しておいてください。そして、再度私の以前のブログも参照して
ください。


1) 新型コロナウイルスがヒトの細胞に侵入する形式には二通りあります。
   一つは膜癒合(membrane fusion)で、これが以前にブログしたACE-2受容体関連です。
   もう一つはウイルスが直接侵入する細胞内取り込み(endocytosis)です。




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2) 今回は主に膜癒合(membrane fusion)について解説します。




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   新型コロナウイルスを人の細胞が認識し受容して侵入させるには、ウイルス側の棘であるspike
   protein(S)が重要です。このSに対して人の細胞側の受容体にはACE-2と、代替としてCD147が
   あります。一方でTEPRSS2とFURINは、ウイルスと結合した受容体を分解し切断する酵素
   (protease)です。つまり受容体でウイルスを捕捉した後にproteaseで切断し、細胞内に取り
   入れます。

3) 細胞の表面に存在するACE-2は普段は制御(regulator)されていますが、新型コロナウイルスの
   感染により降雨後の竹の子のようにニョキニョキと細胞表面に現われてきます。

4) TEPRSS2はコロナウイルスのspike protein(S)とACE-2の両方を切断する酵素proteaseです。
   その結果ウイルスは細胞内に取り込まれます。
   最近の研究によりますと、肺が新型コロナに感染するとTEPRSS2の活性化が起きるようです。
   膵炎治療薬のカモスタットがTEPRSS2の活性化を抑制するため、治療の期待がもたれています。

5) FURINはHIV、インフルエンザ、エボラ、コロナ、などのmembrane protein(M)を切断します。
   FURINは不活化ですが、新型コロナのspike protein(S)の遺伝子配列の中に活性化する部位が
   あるとの報告です。

6) CD147はACE-2と同じようなspike protein(S)に対する受容体です。
   リンパ球に新型コロナが感染すると、ACE-2の活性化が低下します。
   この事からも、CD147はACE-2の代替受容体と思われます。
   CD147に対する抗体は、ウイルスの感染抑制に効果があります。








563489-SARS-CoV-2.pdf

a 新型コロナウイルスとACE-2に関して_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_.pdf

b 新型コロナウイルスとRAAS(特にACE-2)希望の星 _ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_.pdf














posted by 斎賀一 at 18:50| Comment(0) | 感染症・衛生