2020年05月20日

新型コロナにBCGは効果ない・イスラエルより報告

新型コロナにBCGは効果ない・イスラエルより報告
 
SARS-CoV-2 Rates in BCG-Vaccinated
and Unvaccinated Young Adults


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 新型コロナにBCGの効果があるかもしれないとの期待があり研究が進んでいますが、雑誌JAMAより
イスラエルでの調査では、効果は無いとの短報(letter)が載っていました。


纏めますと

1) BCGワクチンは、結核に対する効果は認められています。
   細胞免疫のT細胞を活性化したり自然免疫にも効果があり、結核以外の感染症にも期待されて
   います。
   特にインフルエンザワクチンとの相乗効果も推定されています。

2) イスラエルでは国家プロジェクトとして、1955年から1982年にかけて乳児にBCGワクチンを全員
   接種する方針をたてました。この結果90%以上の接種率を達成しています。
   1982年以降は目標達成したとして、BCGの接種は中止しています。 (移民は別です。)

3) BCGプロジェクト中止の3年前に生まれた人と中止3年後に生まれた人を対象に、新型コロナに
   対する効果を調べました。
   新型コロナ流行の2020年1月から5月にかけて、PCR検査を実施した人を登録しました。
   1979〜1981年に生まれた接種群(3,064人、平均年齢40歳)と
   1983~1985年に生まれた接種をしていない群(2,969人、平均年齢35歳)を
   比較しています。

4) BCGワクチンの接種群では、11.7%に当たる361人がPCR陽性でした。
   これに対して接種を受けていない群では、10.4%に当たる299人が陽性でした。




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5)結論
  BCGワクチンを子供の頃に接種しても、大人になって新型コロナに対しての予防効果は無いと結論
  されました。
  但し、新型コロナが若い人では重症例が元来少ないので、この研究の限界があるともしています。






私見)
 日本で新型コロナの死亡例が少ない根拠にはならない様です。







コロナ BCG JAMA.pdf









posted by 斎賀一 at 18:31| Comment(0) | 感染症・衛生

2020年05月18日

新型コロナによるニュー・ノーマルの選択

新型コロナによるニュー・ノーマルの選択
 
Choices for the “New Normal



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 新型コロナによってもたらされると想像されるニュー・ノーマルの世界を展望した論文が、雑誌JAMAに
掲載されています。


1) 人間の遺伝子は30,000個あるのに、新型コロナの遺伝子はたったの15個です。
   しかし、そのウイルスが人間社会に及ぼした影響は甚大です。

2) 新型コロナの研究、情報の獲得の早さは近来においても目を見張るものがあります。
   しかし、そのスピードに慣れない医療関係者も多いのです。
   それは今までの常識から離れ、また臨床家の経験則から導かれる勘ではなく、しっかりした手順が
   必要となります。

3) アメリカでは11の医学の団体が協議して、その都度ガイドラインを作成し、それを報道機関に周知
   して全国に行き渡るようにしています。
   専門家が最も知りたいのは、皮肉にも新型コロナに関する専門的情報です。
   (日本では首長が先を争って報道しているのとはえらい違いです。
   日本の学会も連携してガイドラインを作成し、一般国民に分かりやすく報道してもらいたいと思い
   ます。政府も専門家委員会だけに固執せず、広く意見の集約をして下さい。迅速さと集約性に劣り
   ます。
   長渕剛の歌を思い出します。「あなたが悪いわけではない。海の青さが深いから。」)

4) 医療従事者の自己防護服の欠乏から、その準備が必要です。
   また医療従事者の安全と精神的ストレスからの解放も重要となります。

5) ヒポクラテスの時代は恐竜の様に化石となり、オンライン診療が患者にとっても有利な時代となる
   でしょう。その改革が始まろうとしています。

6) 今後も色々なパンデミックの危険は発生します。
   公衆衛生が最終的にその任務を全うできるだろうか?

7) 時代の不公平性が表面化します。
   アメリカで黒人の死亡率が高いのは、情報が当初行き渡らなかったためです。
   しかしその後の反応は、今までに経験しなかった迅速さでひろまりました。
   ソーシャルディスタンス、マスク、都市封鎖などです。
   これらの対策は、新薬やワクチンより社会全体では有効です。

   新型コロナによって今までは見えなかった遠いヒマラヤが望めたように、地球という天体はその浄化
   作用を自ら持っています。それが一時なのかはだれも分かりません。


  社会から疎外された人々が、新型コロナの影響を強く受けてしまいます。
  全ての人が思いやりと尊敬を受けなければなりません。
  それに対する再分配が何時可能となるのでしょうか。
  時代の流れがニュー・ノーマルを形作るのではないのです。それは社会の意志です。
  社会がその意志で変わるのを、新型コロナウイルスは待ち続けます。






私見)
 ニュー・ノーマルとは時の流れに身を任せるのでなく、全ての人の意志で決まる事としています。
 時代に乗り遅れるのではなく、本院の皆さんの意志で決定しましょう。







Choices for the “New Normal”.pdf











posted by 斎賀一 at 20:05| Comment(0) | 感染症・衛生

医師の退職について・この時期

医師の退職について・この時期 
I Want to Retire, But I Can't Quite Say Goodbye



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 当然ながら、この時期に多くの医師が働き方を考え始めています。
世間では医療従事者に感謝の気持ちを表すブルーライトアップもされており、コロナと戦っている私の
ような末端の開業医ですら有難いと思います。
 Medscapeに、コロナで燃え尽きた医師に対するアドバイスが載っていましたので纏めてみました。
格調高い論文なので、私の意訳は簡単にします。


主旨を纏めてみますと

1) 定年を間近に控えた多くの医師が、新型コロナによってフルタイムの勤務からパートに切り替えよう
   としています。
   完全に退職する事を望む医師は20%以下で、何らかの形で臨床家を続けていたいと思っています。
   それは収入の面と生きがいの点です。

2) 現在のまま医院(オフィス)を続けていても経費の面でも、厳しい環境には変わりはないようです。
   完全な退職は多くの臨床家が危惧しています。
   朝目覚めたら何もない人生は、お金の点ばかりでなく多くの物を失う心配があります。
   医学と離れて作家になり成功した人もいます。田舎で自分の医療を構築して地域医療に貢献し、
   やりがいを見つけた医師もいます。

3) 定職を離れると言う事は、保険を含めた不安定な状態になります。
   それらを総合的に判断する必要があります。
   できるなら50歳代で人生プランを建てた方が賢明です。完全退職ではなく段階的なパートタイム
   への移行を勧めます。

4) (最後のこの論文の核心部分です。間違えるといけないので原文も掲載します。)
   あなたが医療を好きならば、いったい何が好きなのか、そしてそれを最大限に実現できる場所を
   見つけてください。それがパートタイムの場合でも。


  His advice: Figure out what it is that you love about medicine and try to
  find a situation that allows you to maximize that. It's something you
  probably need to start thinking about in your 50s, not in your 60s.
  Try to find out if you can go into a track where you can transition to
  part-time.







私見)
 新型コロナで退職を考えている人に対して、論者は説教じみた事は一言も語らずに温かい視点で語って
 います。医療従事者の全てに語っています。

 さて、お前はどうするかって?

   
              「ブタもおだてりゃ木に登る」







I Want to Retire, But I Can't Quite Say Goodbye.pdf








posted by 斎賀一 at 19:19| Comment(0) | その他