2020年04月20日

新型コロナはPerfect Storm(完璧な嵐)ではない

新型コロナはPerfect Storm(完璧な嵐)ではない
 
Not a Perfect Storm − Covid-19 and the Importance of Language



20420.PNG




 今現在、アメリカは中国を追い越して、新型コロナ患者と死者数が世界で一番となってしまいました。
アメリカの報道では、新型コロナをPerfect Stormと譬えているとの事です。

 今回雑誌NEJMのコラム(PERSPECTIVE)に、「新型コロナをPerfect Stormと表現しては本質を
見失ってしまう。」とする論文が載っています。
Perfect Stormとは、アメリカ映画からの言語で嵐とハリケーンに見舞われた漁船の話です。
下記のPDFをご参照ください。
医学以外の論調の英文は入試を思い出して気乗りしませんので、簡単に意訳だけと話を膨らませて
ブログします。


・パンデミックをPerfect Stormと言う言語で片づけてしまうと、現状の分析から今後の対策までも
 なおざりになってしまう。更に議論を深める事もできない。
 新型コロナの流行には環境的、社会的、政治的問題が複雑に関与しています。
 流行は異常で、予測不可能な組み合わせの結果です。

・今までにも、がんやエイズなどの病気に関してのケアを妨げ、患者を疎外する恐怖と汚名を生み
 出します。
 同様に、Perfect Stormという比喩は、私たちの概念を誤って指示する可能性があります。
 実際の災害でもインフラの問題や貧困の差などが関与してくる。
 麻薬までも色々な因子が重なって社会問題として捉えているが、Perfect Stormとしてしまうと、
 核心的な製薬会社の関与の視点が欠落してしまいます。
 Perfect Storm と片づけると、積極的に見える公衆衛生の言葉の力を与えるのではなく、権限を
 削いでしまいます。

・人畜感染症では気候変動、衛生環境における追跡調査が必要です。
 パンデミックでは医薬品とワクチンが決め手と考えられますが、本来は流行の予防が大事です。
 エイズは致命的な病気でしたが、エイズの活動家の協調的な政治的行動によりワクチンがない場合
 でも、致命的なパンデミックの流れを変えることができることを実証しました。

・病気をコントロールするために、治療に頼るよりも初期段階での広がりを防げます。
 しかし現実は流行が出現する前に予測せず、予防する能力を軽視しています。
 病気の追跡と監視、科学研究、公衆衛生インフラへの長期的な投資が、次の新たな脅威を封じ込める
 鍵であることが明らかとなっています。
 単に人間行動の制限だけでなく、インフラを含めたシステムの再構築を勧める事により、パンデミックの
 予防は無限に低コスト化を図れます。 




 
私見)
 世界がパンデミック対応に戦争状態です。
 グローバル社会の弊害も指摘されています。各国の国内事情により混乱も増幅しています。
 残念ながら日本においても医療制度の脆弱さ、行政指導の欠点、危機管理の政治的な問題点などが
 あぶり出されています。更には本院における診療態勢の不備も院長自ら認識させられました。

 未だに楽観論者の私は、紫外線が新型コロナを終息に導いてくれると信じています。
 しかしパンデミックは必ず又襲ってきます。

 未だ日本では「破壊的なPerfect Storm」ではありません。
 本院も日々検討しシステムの改善に努めたいと思います。
 医療崩壊は内部からも起きるかもしれません。
 
 




perfect so.pdf









posted by 斎賀一 at 18:28| Comment(1) | 感染症・衛生

2020年04月18日

心不全の診断・BNPとProBNP

心不全の診断・BNPとProBNP
         <業務連絡用>



20418.PNG




 心不全の血液検査のマーカーとして以前はBNPを採用していましたが、採血管の問題でProBNPを
多用しています。最近、迅速検査機器の導入によりBNPも復活しました。
其々に注意事項がありますが、一般的には 4×BNP=ProBNP です。 (個人的には5×)
 現在ProBNPが500以上で心不全とし、1000以上で治療の見直しとしていましたが、BNPの場合は
100以上で心不全、200以上で治療変更と考えます。
詳しくは下記のグラフです。
 

本院では慢性患者さんの定期採血としてProBNPを採用し、新患又は労作時呼吸困難の患者さんは
迅速でBNPを調べ、50以上で心不全の更なる検査を行っていきましょう。

下記に以前まとめた手書きを掲載します。






心不全の診断・BNPとProBNP - コピー.pdf

BNP 手書きメモ.pdf












posted by 斎賀一 at 15:42| Comment(1) | 循環器

2020年04月17日

安定冠動脈疾患の初期治療法の比較

安定冠動脈疾患の初期治療法の比較
 
Initial Invasive or Conservative
Strategy for Stable Coronary Disease
   N Engl J Med 2020;382:1395-407.
 


20417.PNG 
        


 冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)の治療目標は、発作の軽減とQOLの改善です。
これまでの研究では、薬剤コーティングのカテーテル治療 (冠動脈内ステント留置)であるPCIによって
施行後7カ月の緊急性の入院は減少しましたが、死亡率と心筋梗塞の発生は抑えられていません。 
 しかし、5年間で観察しますと効力は認められています。
多くの研究が軽症者も含めているため、本当の意味での有効性が期待される、中等度から重症例に
関しての明白なエビデンスがありませんでした。

 今回、中等度から重症例(画像診断を用いたストレステストで判定)で安定している冠動脈疾患に対して
のISCHEMIA研究が、雑誌NEJMに掲載されています。



纏めますと

1) 最初に侵襲的戦略(血管造影と可能であれば血行再建)と薬物療法を行う群と、最初に薬物療法
   のみによる保存的戦略を行い、薬物療法が失敗した場合に血管造影を行う群とを比較した研究
   です。
   全例が冠動脈CT血管造影法を施行しています。偽事例と狭窄が50%以上の重症例を除外する
   ためです。
   採用基準と除外基準に関しては、下記のPDFをご参照ください。

2) 主要転帰は、心血管系の原因による死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、心不全、蘇生された心停止に
   よる入院の複合としています。
   主な副次的転帰は、心血管系の原因による死亡または心筋梗塞としました。

3) 経過観察の平均は 3.2 年間で、主要転帰のイベントは侵襲的戦略群では 318 件
   保存的戦略群では 352 件発生した。
   累積イベント発生率は、6ヵ月の時点で侵襲的戦略群 5.3%、保存的戦略群 3.4%であり、5年の
   時点でそれぞれ 16.4%と 18.2%であった。
   治療による心筋梗塞発生(procedural)が侵襲的戦略群は6カ月の時点で多いが、経過と共に自然
   発生する心筋梗塞(non-procedural)は侵、襲的戦略群の方が保存的戦略群より少なくなる。

4) 中等度または重度の虚血を有する安定冠動脈疾患の患者において最初に侵襲的戦略を行う場合、
   最初に保存的戦略を行う場合と比較して、虚血性心血管イベントや全死因死亡のリスクを低下させる
   というエビデンスは、中央値 3.2 年間では認められなかった。      (一部、日本版コピペ)






私見)
 本研究は実地医家にとってはやや限定的です。
 中等度以上の冠動脈疾患に対しては、ステント治療後も薬物治療を施しつつ、十分に注意して管理
 しなくてはなりません。






冠動脈疾患における侵襲的治療と保存的治療との健康状態の転帰の比較.pdf










posted by 斎賀一 at 21:16| Comment(0) | 循環器