2020年03月21日

 新型コロナウイルスと高血圧治療薬の関係:ACE-2

 
新型コロナウイルスと高血圧治療薬の関係:ACE-2

1;Are patients with hypertension and diabetes mellitus
at increased risk for COVID-19 infection
 
2;Patients taking ACE-i and ARBs who contract COVID-19
should continue treatment, unless otherwise advised
by their physician


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 雑誌LANCETから、新型コロナ患者には降圧薬のACE阻害薬と、ARBの服用を注意するようにとの
論文が掲載されました。混乱が広がっており、専門家への問い合わせが各国で起きているそうです。
権威あるアメリカの学会AHAは、早速コメントで高血圧患者は引き続きACE阻害薬とARBの服用を
中断せず、継続服用するように勧めています。


先ず雑誌LANCETから纏めますと、


 1) 新型コロナの重症例を調べた研究では、基礎疾患として、高血圧(23.7%)、
    糖尿病(16.2%)、冠動脈疾患(5.8%)、脳血管疾患(2.3%)でした。
    その後の研究でも、同様の傾向です。注目すべきは、高血圧の治療薬としてはACE阻害薬が
    多く処方されていました。

 2) コロナウイルスは、以前のSARA-COVと新型のSARS-COV-2ともに、細胞侵入はACE-2を
    通して標的細胞に付着する事が証明されています。
    糖尿病患者が高血圧で、ACE阻害薬やARBを服用すると、ACE-2が過剰に細胞表面に
    表出してきます(upregulation)。
    つまり、それだけ新型コロナウイルスに感染しやすい状態となっています。

 3) 個人の感受性と、ACE-2の多様性が関係しています。
    しかし、現段階でははっきりしたエビデンスが乏しいのですが、可能ならば
    新型コロナの流行期には代替薬のCCBが勧められる。


次にアメリカの学会AHAからのコメントを纏めますと、


 1) 既に高血圧、心血管疾患で、ACE阻害薬とARBを服用している全ての患者は、
    継続服用を推奨する。

 2) 現時点では新型コロナ患者が、ACE阻害薬とARBを服用する事による利点と、副作用に関する
    明白なエビデンスは認められていない。



私見)
 研究結果により変更する事もありますが、現時点では私も含めてARBは継続服用といたします。
 尚、レニン・アンギオテンシン系とACE-2に関してブログで解説します。


1 新型コロナ 血圧糖尿病.pdf

2 Patients taking ACE-i and ARBs who contract COVID-19 should con.pdf







posted by 斎賀一 at 19:13| Comment(0) | 感染症・衛生

新型コロナウイルスとACE-2に関して

新型コロナウイルスとACE-2に関して

院内勉強用



 当初、新型コロナ感染症が武漢でオーバーシュートしている時に、中国政府が情報を隠蔽し、
医師の訴えをもみ消そうとしたにもかかわらず、中国の医師団の懸命な医療活動と、
基礎研究の進展には、遠い国の日本の開業医としても驚嘆します。短時間で新型コロナウイルスの
感染形式が判明しています。
(新型コロナがどこから発生したのか言っている場合でしょうか。
 医療を含めた世界の全てが協力する時期です。)
キーワードは、レニン・アンギオテンシン系(RAS系)のACE-2受容体です。
(何時もRAS系の形式は迷路の様で忘れてしまいます。最初より整理しました。)



          0321.PNG



アンギオテンシンT変換酵素(ACE-1)を阻害するのが、ACE阻害薬です。
アンギオテンシンUがAT1に作動するのを阻害するのが、ARBです。
簡単に言えば、血圧と炎症にとって、若干悪玉がAT1で、善玉がAT2です。
上の右の図で説明しますと、ACE阻害薬を服用すると、ブラジキニンが多く溜まってしまいます。
ブラジキニンは、肺に刺激をあたえて咳を誘発します。
現在では、ARBとACE阻害薬の両者において、心血管疾患に対する評価は同等といわれており、
薬価もほぼ同じです。本院では主にARBを処方しています。

RAS系を、新型コロナのために更に詳しく見てみますと、

 
          0321-2.PNG
  

   
RAS系でも大まかに言って、炎症にとって悪玉の青系と、善玉の赤系があります。
緑のAT2は中間でしょうか。ACE(ACE1)は悪玉なので、ACE阻害薬を用います。
問題のACE2は、全般的に炎症を抑える善玉です。


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コロナウイルスの棘の部分(S-蛋白)が粘膜表面のACE2受容体に結合し、
更に、TMPRSS2が活性化させてコロナウイルスは体内に侵入します。
右の赤印が、活性を阻害する慢性膵炎治療薬のカモスタットです。現在有力な治療薬の候補です。


コロナウイルスとACE2受容体に関しては論争があります。

 1) ACE阻害薬を使用すると、ACE2受容体が多くなり、コロナ感染の機会も多くなる。

 2) コロナ感染で善玉のACE2が消費され(down regulation)、肺の炎症が促進される。
 
 3) 反対意見としては、ACE2のノックアウトマウス(ACE2が作動しないようにしてあるマウス)に
    ウイルスのS蛋白を注射しても肺の損傷は起きないが、普通のマウスにS蛋白を注入すると、
    肺障害がおきる。
    つまり、ウイルスの侵入とは関係なく、S蛋白とACE2受容体の特異的反応が
    肺損傷に関与している可能性があるとしています。

 4) もっと前向きな見解として、ACE阻害薬によってACE2受容体が破壊されれば、寧ろACE阻害薬を
    服用した方が良いとする中国の研究者もいます。



私見)
 現段階では、アメリカのAHAの勧告通りに本院でもARBの服用を推奨してまいります。
 ワクチンも治療薬も、このACE2受容体がキーポイントとなりそうです。


ace3 (2).pdf

Renin_ANSE18_WM.pdf

新型コロナ ace.pdf

降圧薬.pdf







posted by 斎賀一 at 18:47| Comment(0) | 感染症・衛生