2020年03月31日

小児における新型コロナウイルス感染症

小児における新型コロナウイルス感染症



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 雑誌のNEJMに、中国における小児例の報告論文が2編掲載されています。



1)SARS-CoV-2 Infection in Children

 纏めますと

 ・2020年3月10日時点での新型コロナ感染患者数は、中国のCDCによりますと72,314名で、その内
  10歳以下の小児例は1%以下と少ないようです。

 ・武漢で16歳以下のコロナ感染患者の治療を、中央政府から唯一認められた病院でデータ解析をして
  います。症状のある患児及び患者家族と濃厚接触のある、無症状の小児が対象です。
  2020年2月26日までに1,391人を検査して、171人(12.3%)が新型コロナと確定診断されて
  います。

 ・年齢は生後1日から15歳までです。
  27人が無症状でした。 (16%)
  咳(49%)、発熱(42%)、39℃以上の高熱(9%)、肺炎は111人(65%)で、その内無症状が12人、
  6人がリンパ球減少で、それ以外に検査では異常ない。
  3人が人工呼吸器を使用、生後10カ月の乳児が死亡(腸重積で入院中で多臓器不全の状態)

 ・初期のデータと同じで小児の場合は軽症が多いが、無症状で肺炎を起こしている場合があり注意が
  必要です。




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私見1)
 小児は軽症で治癒率も良好ですが、感冒症状の発熱、咳、咽頭発赤は、なんと半分しか認められず、
 一見軽い感冒かと間違いそうです。しかも肺炎(ウイルス性)は60%強もあり、無症状肺炎は7%と
 油断は許されない様です。



2)Detection of Covid-19 in Children in Early January 2020 in Wuhan, China

纏めますと

・2020年1月に初期の確定診断した6例を提示しています。
 6例中4例が肺炎と診断されています。

・全員が入院後に軽快しています。(平均7.5日)

・流行の初期に、既に小児例が認められています。




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                                    文献suppleより


私見2)
 上の表から分かる事は、コロナ感染が流行り始めた時期にインフルエンザも流行していました。
 その際に武漢の病院の小児科外来では、新型コロナの患者はインフルエンザの5から10分の1程度の
 発生と推測されます。
 今後日本で新型コロナのオーバーシュートが起きたら、日本の本年度のインフルエンザ発生(20例/週)
 から考えて20/5〜10の規模と想定すると、小児でも2~4例/週 外来受診することになります。
 しかも、一見軽度の感冒症状を纏っているかもしれません。







SARS-CoV-2 Infection in Children.pdf

新型コロナ 小児 2.pdf  












posted by 斎賀一 at 19:01| Comment(0) | 感染症・衛生

2020年03月30日

胃過形成ポリープの切除後の経過

胃過形成ポリープの切除後の経過
 
Risk of neoplastic change in large gastric hyperplastic polyps
and recurrence after endoscopic resection




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 胃のポリープは大きく分けて3つあります。 (詳しくは下記のPDFに纏めてみました。)
  ・過形成ポリープ(狭義) ・胃底腺ポリープ  ・腺腫性ポリープ
本院では腺腫性ポリープと2cm以上の過形成ポリープは生検しています。
 (胃底腺ポリープも本態は腫瘍性であり、5mm以上では1~6%の癌化率と言われています。)
過形成ポリープはピロリ菌感染、萎縮性胃炎との関連が指摘されています。
一般的に過形成ポリープは良性ですが、2~5%に癌化の可能性も報告されています。
過形成ポリープの45%に臨床症状があり、その内訳は
・貧血が80%、・上部消化管出血が11%、 ・鉄欠乏貧血が9%と、ポリープからジワジワと出血している
事を示唆します。

 今回1cm以上の大きい過形成ポリープを切除(ポリペクトミー)した後の経過観察を、11年以上行った
論文が載っていました。 



纏めてみますと

1) 対象者は1cm以上の過形成ポリープで、ポリペクトミーした後の2007~2018年間の経過観察
   です。
   108名の患者で検体は145例です。

2) 結果は、再発は51%(74/145)、悪性化は 10.4%でした。
   悪性化のリスクとしては、2.5cm以上が危険率 10.24
   腸上皮化生の危険率が 5.93でした。
   再発率に関しては、肝硬変が独立因子として挙げています。 (危険率4.82)

3) 過形成ポリープが2.5cm以上では悪性化する可能性があり、5.0cm以上では既に悪性となっている
   リスクが高い。又ポリペクトミー(切除)しても再発は50%もあります。
   生検で腸上皮化生を伴っている場合は、注意が必要です。





私見)
 胃ポリープに関しては種類があること、危険率も異なる事を理解してください。
 一般的に病変とは、既存の組織の衣を着て現れます。下図の表面の粘膜のsurface mucous
 epitheliumが表層の腺窩上皮です。Glandsが胃底腺です。腺窩上皮から発生したポリープが
 過形成ポリープで、Glandsの胃底腺から発生したのが胃底腺ポリープです。
 何れも多くが良性ですが、腫瘍性の形態を帯びているのが腺腫性ポリープで大きさに関係なく切除の
 対象としています。
 詳しくは下記のPDFと文献をご参照ください。




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◆参考書籍と文献

 ・消化管の病理 第2版  藤盛孝博   医学書院
 ・胃と腸 2016年増刊号   消化管拡大内視鏡診断
 ・胃と腸 53(11): 1522-1528, 2018
 ・胃と腸 47(8) :  1192-1199, 2012




1 過形成ポリープ文献集.pdf

2 本論文.pdf

3 WOSについて.pdf  

 







posted by 斎賀一 at 18:09| Comment(0) | 消化器・PPI

今季のインフルエンザは終息

今季のインフルエンザは終息
        <業務連絡>




 今季のインフルエンザは終息したものと考えます。
以前のブログでも記載しましたが、発生がしていない時に検査をすると一定の割合で偽陽性が生じます。
今週からインフルエンザの検査は、本院では行いません。
 なんというか、国策で開業医には新型コロナの検査をさせてもらえません。
恨み節ではありませんが、本院は本院なりの方針で頑張りましょう。
院内感染対策のイラストが載っていましたので、参考にして下さい。





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新型コロナ 施設対策.pdf











  
  

posted by 斎賀一 at 17:29| Comment(0) | インフルエンザ