2019年12月27日

脳卒中の再発予防のための血圧管理

脳卒中の再発予防のための血圧管理
 
Effect of Standard vs Intensive Blood Pressure
Control on the Risk of Recurrent Stroke
      短 報



 脳卒中発症後の再発を防ぐには、血圧管理を積極的(目標血圧を120以下)にしても、標準的(目標
血圧を140以下)とあまり差は無かったとの報告が日本からありました。


1) 最近脳卒中に罹患した人約1,300人を登録しています。
   その内訳は85%が脳梗塞、15%が脳出血です。
   積極降圧治療は、目標血圧を120/80以下、標準降圧治療は目標血圧を140/90以下として
   います。

2) 観察期間は平均4年です。
   観察期間の結果、平均血圧は積極群で126.7、標準群では133.2mmHgでした。
   脳卒中の再発は、積極群で6.2%、標準群で8.2%と、統計学上あまり差はありませんでした。
   しかし脳出血では積極群で0.2%、標準群で1.7%に対して、
   脳梗塞では積極群で6.0%、標準群で6.5%でした。
   つまり脳卒中の予防に関しては、積極的治療によって脳出血は軽減できるが、脳梗塞は変わりは
   ありませんでした。

3) 降圧治療の副作用がなければ、目標血圧を120以下にする事が脳卒中の予防に繋がるとして
   います。







Effect of Standard vs Intensive Blood Pressure Control on the R.pdf











posted by 斎賀一 at 20:37| Comment(1) | 脳・神経・精神・睡眠障害

 抗凝固薬と骨折の関係

 
抗凝固薬と骨折の関係
 
Association of Anticoagulant Therapy With Risk of
Fracture Among Patients With Atrial Fibrillation
        短 報



 以前より、抗凝固薬のワーファリンは骨折の危険があると言われていましたが、それを否定する論文も
ありやや混沌としています。

今回の論文では、そうは言ってもワーファリンよりもDOACの方が、骨折に関しても安全とする報告です。


1) 心房細動の167,275名を対象にしています。 女性が38%、平均年齢は69歳です。

2) 平均17カ月の経過観察です。
   大腿骨骨折は817例、入院の必要な骨折は2,013例、全骨折は7,294例でした。
   入院の必要な骨折はDOACがワーファリンよりも少なく、危険率は0.87
   全骨折もDOACは危険率が0.93でした。
   DOAC間での相違はありませんでした。

3) 経過観察期間は短いようですが、骨粗鬆症の危険のある患者にはやはりDOACの方が優先される
  だろうとしています。







af.pdf

ワーファリン 骨折 1.pdf

ワーファリン 骨折 2.pdf










posted by 斎賀一 at 20:21| Comment(0) | 循環器

2019年12月25日

COPDの急性増悪の予防のためのβ-ブロッカー

COPDの急性増悪の予防のためのβ-ブロッカー
 
Metoprolol for the Prevention of Acute Exacerbations of COPD
N Engl J Med 2019;381:2304-14.



1225.PNG




 COPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者さんは増加傾向でしかも高齢者のため、心血管疾患を合併している事が多くあります。心房細動、冠動脈疾患、心不全には心臓の過剰の興奮や負担を軽減する意味で
βブロッカーを処方しますが、このβブロッカーが呼吸機能の低下に繋がらないか以前より懸念されていま
した。
しかし、最近の多くの研究ではβブロッカーが心血管疾患の軽減に繋がり結局はCOPDの入院、死亡などの急性増悪を予防しているとの報告がなされています。
そうは言っても実際の臨床現場では、依然としてCOPD患者に対して呼吸機能低下を心配し、βブロッカー
を控える傾向が続いています。
この点を以前の私のブログでも紹介しましたが参考文献も併せて下記に掲載しますので、職員の皆さん復習してください。


 今回、雑誌NEJMにβブロッカーのメトプロロール(セロケン-L)がCOPDの急性増悪を予防できるかを
調べた研究(BLOCK COPD試験)が発表になっていますので纏めてみました。
(最近はセロケン-Lを本院では処方していません。アーチスト、メインテートが多いようです。剤型が多い
 ためです。)


1) COPD患者では基礎疾患である心血管疾患が誘因となり、急性増悪による入院や死亡が起き易い。
   しかもその危険率は5倍に上がる。

2) 40〜85 歳の COPD 患者をβ遮断薬(徐放性メトプロロール)群とプラセボ群に割り付けた。
   しかも過去 1 年間の増悪歴または在宅酸素療法の処方・使用歴があることで示された、リスクの
   高い患者を登録しています。
   β遮断薬の投与をすでに受けている患者やβ遮断薬使用が確立された適応のある患者は除外して
   います。
   主要評価項目は、投与期間中の COPD の初回増悪までの期間としました。

3) 結果として、532 例が無作為化されています。患者の平均(±SD)年齢は 65.0±7.8 歳であり、
   平均 1 秒量(FEV1)は予測値の 41.1±16.3%でした。
   初回増悪までの期間の中央値はメトプロロール群 202 日、プラセボ群 222 日で、群間に有意差は
   認められなかった(メトプロロールのプラセボに対する危険率は 1.05 )
   しかし、メトプロロールは、入院に至る増悪のリスクがより高い結果でした。 危険率 1.91
   つまり、増悪による入院は、メトプロロールの投与を受けた患者のほうが多い結果でした。
   下記のB図が入院に至る増悪を示します。
    (以上、日本版をコピペ)


 
          1225-2.PNG

          1225-3.PNG


           

     
4) 考察
   βブロッカー投与の一番の懸念である呼吸機能検査では、βブロッカー群とプラセボ群では差はありま
   せんでした。
   また、6分間歩行と副作用報告でも差はありませんでした。
   しかし呼吸困難やCOPD症状の増悪はβブロッカー群の方が多く中途での服用離脱がありました。
   この事は呼吸機能検査(スパイロメーター)では測れない症状があると言う事です。
   心筋梗塞や心不全になって間も無いCOPDの患者さんにβブロッカーを処方するのは多くの研究で
   支持されていますが、十分な検討が今後も必要であるとしています。






私見)
 臆病な私は、従来通りアーチストやメインテートをほんの少量、おまじないで処方しようと思っています。








1 慢性閉塞性肺疾患(COPD)にβ-遮断薬は有効_ _Font Size=_6_斎賀医院壁新聞_Font_.pdf

2 ブログのまとめ.pdf

3 看護師.pdf

4 β遮断薬.pdf











posted by 斎賀一 at 19:44| Comment(0) | 喘息・呼吸器・アレルギー