2019年11月19日

脳血流自己調節能について考察

 脳血流自己調節能について考察
         <業務連絡用>




 高血圧と脳循環の関係は、脳血流自己調節機構を理解する事が大事なようです。
色々な文献から考察してみました。
中学の理科の授業で習いました下記の関係式を思い出してください。

    電流 = 電圧 ÷ 抵抗     電圧 = 電流 × 抵抗

      
脳循環血液量も同じ関係です。

    脳血流 = (平均動脈圧―内頚静脈圧 )÷ 脳血管抵抗
  
内頚静脈圧は、ほぼ0と考えて良いようです。
平均動脈圧とは、収縮血圧から拡張血圧を引いて、その差の1/3を拡張期圧に足したものです。
今回は脳内圧の上昇の病態(脳腫瘍や血腫)がないと想定します。



         1119.PNG


上記の図譜で理解してください。取りあえず文献をコピペして説明します。

脳灌流圧は脳圧、静脈圧などにも影響されるとは言え、著明な脳圧(頭蓋内圧)亢進や静脈圧上昇が
ないかぎり動脈圧にほぼ平行する。
 図1は縦軸に脳血流量、横軸に脳灌流圧(ここでは平均動脈血圧で代用)を取り、その関係を示した
ものである。正常状態においては平均動脈血圧が50−150mmHgの間では、灌流圧が上昇すれば
脳血管は収縮し、下降すれば拡張して脳血流はほぼ一定に維持される。
(脳循環の自動調節能autoregulation)
ただし灌流圧が急激かつ強度に上昇すれば脳血流は増加し、急激かつ著明に下降すれば低下して
しまう。この下降により脳血管不全(いわゆる脳貧血)といわれる病態が生じる。
 高血圧緊急症とは、単に血圧が異常に高いだけの状態ではなく、血圧の高度の上昇(多くは180/
120mmHg以上)によって、脳、心、腎、大血管などの標的臓器に急性の障害が生じ進行している病態と
定義されています。
一方、高血圧が持続する患者ではこの自動調節能を保つ閾値が右側にシフトする。
高血圧患者ではかなり高い血圧値でも全く自覚症状を訴えなかったり、逆に軽度の血圧下降でもめまい、
脱力などを訴えやすいのはこの右側シフトのためと考えられる。
つまり、高血圧性脳症は、急激または著しい血圧上昇により脳血流の自動調節能が破綻し、必要以上の
血流量と圧のために脳浮腫を生じる状態です。
高血圧脳症は一般に高血圧の既往がない場合は160/100mmHg以上で、高血圧者では220/
110mmHg以上の血圧で出現します。
すなわち、高血圧者ではautoregulationの閾値が血圧の高い方にシフトしており(図1)、過度の血圧
上昇に対してある程度保護的に変化しています。






私見)
 脳血流自己調節能の図も文献により若干異なります。(下記に文献による図譜を掲載します。)
 図譜とは理想的モデルの表示で、仮想空間でしかありません。
 患者個々により病態は異なる事を認識して注意する必要がありそうです。





◆参考文献

    高血圧管理からみた脳卒中の予防と治療;篠原幸人;
     日本臨床V 64, SupPl 6, 2006
    高血圧緊急症・切迫症の場合 ;山脇健盛
     診断と治療 V 98 N 1 2010
    RENAL AUTOREGULATION IN CHRONIC HYPERTENSION
     N Engl J Med, Vol. 347, No. 16 October 17, 2002






血圧を脳循環.pdf










posted by 斎賀一 at 21:58| Comment(0) | 循環器