2019年11月08日

 赤身肉・加工肉に関する新しいガイドラインの試み

 
赤身肉・加工肉に関する新しいガイドラインの試み
 
Unprocessed Red Meat and Processed Meat Consumption: Dietary
Guideline Recommendations From the NutriRECS Consortium
Ann Intern Med. 1 October 2019



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 雑誌Annals of Internal Medicineに、罪悪感を持たずに肉食を楽しみましょうという論文が掲載
されています(?)


意訳を顧みず纏めてみますと

1) アメリカのガイドラインでは、赤身肉・加工肉の食事を週一回に制限する事を提言しています。
   英国でも赤身肉・加工肉の摂取を70gr/日に制限するよう勧告しています。
   更にWHOは赤身肉・加工肉の発癌性を警告しています。
   しかし、本論文の筆者はこれらのガイドラインには問題点があると指摘しています。

   ・ハイリスクの人の観察研究である
   ・絶対的な効果についての結果に乏しい
   ・ガイドラインの筆者の利益相反に言及していない
   ・対象者の嗜好や価値について考察していない等です。
  
2) 本論文ではメタ解析を基に、独立した臨床、栄養、公衆衛生の専門家14名による新たなガイド
   ライン作成をしました。
   アメリカでは、肉の摂取は平均で2~4回/週とのデータがあります。
   肉の摂取量減少の定義を3回/週減らすとしました。
   つまり7回から3回/週又は4回から1回/週に肉食を制限したと定義して、従来通りの定義で
   大まかに2〜4回/週としました。

3) 赤身肉についての勧告
   弱いエビデンスながら、18歳以上の人は従来通り、赤身肉を摂取して良いとしています。
   14人の専門家による投票では論争があり、結果的に3人は摂取の制限を主張しています。
   (政府の諮問委員会のように絶妙な人員の配置です。)

   加工肉についての勧告
   同じように弱いエビデンスながら、18歳以上の人は従来通りに加工肉を摂取して良いとしています。
   又、この案件においても14人中3名は反対票でした。

   赤身肉・加工肉の発癌性について
   大変低い確率で、しかも明白なエビデンスはありませんでした。
   結論として、赤身肉・加工肉の制限における心血管疾患の予防やU型糖尿病の発生減少のエビ
   デンスは低い。

4) 結論
   色々な研究を検討したメタ解析ですが、それを厳格に専門集団が私心を捨てて新しい赤身肉・
   加工肉に対するガイドラインを作成しました。
   それが下記の勧告です。又統計学的説明は下記のグラグが明白に表しています。
   弱い勧告でエビデンスも明瞭でないが、「18歳以上の人は、従来通りに赤身肉・加工肉を摂取して
   いてもそれ程健康被害はない。」


5) 検討
   (この論文の一番面白い点です。かなり意訳してみます。)

   ・本来人間は雑食である。それの食生活を制限して意味があるのか。
   ・確かに一週間で一回の肉食ならば心血管疾患の予防に繋がるが、その効果も微弱である。
    しかも、肉食による体力の向上と貧血の改善というプラスの面も無視できない。
   ・更に発癌性を問題視しているが、調理方法にもよる。
   ・巷のガイドラインは環境問題や動物愛護の観点からの視点が色濃い。
    その価値を否定するものではない。しかし真のガイドラインを作成するには、それらから独立した
    立場が必要だ。
   ・厳格なコントロールとの比較を用いた研究が今後期待される。
    少し悲観的過ぎるが、しかしそのような研究は不可能に近い。
   ・多くの人は、自分の生活や文化の質を変えてまで食生活の改善を希望してはいないと、パネリスト
    は理解している。






私見)
 これだけ言いたい放題の反逆的な論文も気持ちがいいものです。
 さすが雑誌Annals of Internal Medicineです。
 これからも週2〜3回の肉料理と、たまには近くで美味しいステーキを堪能します。




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meat.pdf




 
 
 
posted by 斎賀一 at 21:26| Comment(0) | その他

2019年11月06日

創傷に対するドレッシング材

創傷に対するドレッシング材
           業務連絡用



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 以前のブログでも紹介しましたが、火傷、創傷や褥瘡に対するドレッシング材を選定してもらうため、
職員にストラテジー作成を頼んでおりましたが、草案が完成しましたのでブログに掲載します。
今流行の言葉を借りますと、本院の「身の丈に合った」ストラテジーに大変満足しております。
私を含めてドレッシング剤の名前を忘れてしまいますので、処置室に貼っておいてください。
下記にPDFで掲載します。






1 創傷.pdf

2 褥瘡の治療.pdf

3 本院ドレッシング材.pdf







posted by 斎賀一 at 18:37| Comment(1) | その他

2019年11月05日

腎機能低下患者でもメトグルコはSU剤より有効

腎機能低下患者でもメトグルコはSU剤より有効
 
Association of Treatment With Metformin vs Sulfonylurea
With Major Adverse Cardiovascular Events Among
Patients With Diabetes and Reduced Kidney Function

JAMA September 24, 2019 Volume 322, Number 12



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 糖尿病の治療ガイドラインによると、第一選択薬はメトグルコです。
安価、低血糖の心配が少ない、体重増加がない等の利点からです。
 1998年のUKPD研究によりメトグルコの復権がなされました。更に2016年のアメリカFDAのガイダンス変更により、腎機能のeGFRが45まで低下していても適応ありとなりました。(私のブログの“メトグルコ”で検索してください。)

 以前より、メトグルコの副作用として乳酸アシドーシスが懸念されています。
 (診断方法に関して下記のPDFを再度掲載します。検査方法を忘れていると、本院のチコちゃんに叱ら
れますので、再度職員の皆さん復習してください。)
メトグルコと乳酸との関係(コリ回路)については、色々なネットで検索し図譜を拝借しました。
失礼ながら出典は省略します。下記に纏めましたので参考にして下さい。

 腎機能が中等度低下した患者さんにもメトグルコを服用して良いとなりましたが、その場合の有効性に関してはエビデンスがありませんでした。
今回、雑誌JAMAより、メトグルコとSU剤(本院ではアマリール、グリミクロン)の単剤によるガチンコ勝負が載っていましたので、ブログしました。



纏めますと

1) 糖尿病治療で、メトグルコとSU剤を新規に開始した人を登録しています。
   研究の開始180日間は、他の糖尿病治療薬を服用していない条件です。
   更に腎機能が低下傾向の糖尿病患者を選定しています。
   腎機能のeGFRが60以下か又はクレアチニンが男性で1.5mg/dL以上、女性で1.4mg/dL以上
   までに低下してからの、メトグルコとSU剤のガチンコ勝負です。

2) 主要転帰はMACE(メイス;主要心血管イベント;急性心筋梗塞での入院、脳卒中、
   一過性脳虚血発作、心血管疾患による死亡)です。
   (最近ではMACEを採用する論文が多いようです。MACEについて、下記のPDFに掲載します。)
   2001~2016年までの登録で、4年間の経過観察です。
   96,725名が登録されましたが、統計学的処置の比較では
   新規メトグルコ群は24,679名、SU剤群は24,799名です。
   平均年齢は70歳、平均HbA1cは6.6%、平均eGFRは55.8です。

3) 結 果
   メトグルコはSU剤と比較して、主要転帰のMACEのリスクは0.8、心血管疾患の入院リスクは0.87、
   心血管死亡リスクは0.7でした。
   年間の累積危険率は、下記のグラフをご参照ください。

         
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4) 結 論
   腎機能の軽度〜中等度低下患者でも、メトグルコはSU剤に比較してMACEを予防できる。
   原因として、SU剤による低血糖の副作用も関与しているものと推測されています。





私見)
 取りあえず、メトグルコが基本である事には変わりはないようです。
 以前のブログでも紹介しましたメトグルコと腎機能の関係論文を下記に掲載します。



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         JAMA Internal Medicine Published online June 4, 2018



メトグルコが第一の手ですが、次の一手は何を選択すべきでしょうか。
 何事も「故きを温ねて新しきを知る」でしょうか
 今後も職員に対して「古きを尊び新しきを求める」姿勢で頑張ります。

  (現実はそんなに甘い物ではありません。ダラダラと現状維持でしょうか・・・?)





1 メトグルコと乳酸の関係.pdf

2 本院における乳酸アシドーシスの検査.pdf

3 MACE.pdf












posted by 斎賀一 at 21:46| Comment(1) | 糖尿病