2019年11月18日

高血圧緊急症

高血圧緊急症
 
Acute Severe Hypertension
    n engl j med 381;19 nejm.org November 7, 2019



1118.PNG

           


 雑誌NEJMに、急性の重症高血圧症についての総説が載っていましたので纏めてみました。

1) 急性の重症高血圧に対して、アメリカではhypertensive emergencyやhypertensive urgency
   という病名が使われています。
   (日本では高血圧緊急症とか悪性高血圧と言われています。)
   急な血圧上昇により、臓器障害が生じた場合と定義されています。
   臓器障害とは、特に心臓、腎臓、細動脈(眼底所見)を指します。
   また血圧の急な上昇とは180/110以上ですが、血圧が正常であった人が急に160/100に上昇した
   場合にも、臓器障害を起こす可能性はあります。

2) 高血圧緊急症は短期的な予後ではなく、長期的な合併症の危険率が上昇すると言う問題点があり
   ます。
   高血圧緊急症で入院した人はその後以前の(通常の)血圧に戻っても、後に心血管疾患を発症する
   危険率が50%との研究もあります。
   また別の研究では、外来診療患者で急に血圧が180以上に上昇した場合には、高血圧緊急症で
   入院した人と同様に、6か月後に心血管疾患の発症が0.9%と、同等の危険率との報告もあります。

3) 正確な血圧測定はなかなか難しい
   電子血圧計と聴診器使用の血圧計は、共にカテーテル挿入の正確な血圧と比較しますと、低めとの
   事です。
   電子血圧計と聴診器使用の血圧計とを比較しますと、同程度の精度でした。

4) 高血圧緊急症の誘因
   一番は怠薬(noadherence)が原因です。
   その他として
    ・食塩の摂り過ぎ ・鎮痛解熱剤(NSAIDs) ・ステロイド剤 ・脳卒中 ・心不全  等

5) 臓器障害の評価
   症状で注意する点は
    ・頭痛 ・非定型の胸痛 ・呼吸困難 ・めまい ・立ちくらみ ・鼻血
   検査する項目は
   ・心電図 ・尿 ・眼底 ・トロポニン ・時に頭部MRI

6) 治療
   治療の原則は脳循環自動調節能の機序が基本です。
   (この点は次回のブログで学習しましょう。)
   高血圧緊急症の場合も正常者と脳循環自動調節能は同じ状態ですが、カーブが右上方に移動して
   います。 
   そのため高血圧緊急症では、血圧が高くても脳浮腫にならないよう耐性が成り立っています。
   しかし、血圧が高い状態でも簡単に脳血液循環の低下になり易い状態でもあります。




         1118-2.PNG

   
  次回のブログで解説します。


  最初の1時間で20~25%血圧を低下させる。その次の段階は、2〜6時間かけて160/100にする。
  リバウンドを避ける意味で引き続き経口薬を服用するが、その開始時期に関してはエビデンスがない。
  一般的には経静脈投与から6時間後とする。
  高血圧緊急症で外来受診した1/3の人は、30分間の安静で血圧は180以下に低下する。
  もしも安静に依っても血圧の低下が認められない時で臓器障害が無いものとしたら、経口薬の追加を
  実施するのも選択肢である。この経過では経静脈投与は必要ない。
  本論文著者はペルジピンを推奨しています。  (経静脈治療は省略、下記のPDF参照)
  30分毎にチェックして再投与も可能
  その他、カプトリル、ヘルべッサー、ラベタロール、ニトログリセリン貼付剤を挙げています。
  (下記に日本での内容を「今日の臨床サポート」から抜粋しPDFにしました。ご参照ください。)
  コントロールされたらアムロジン、ARBを再開する。不十分な場合は降圧利尿薬を追加する。






 私見)
 急に血圧が上昇し心配で本院に来院される患者さんの多くは、来院時には血圧は安定していたり、
 本院で安静にしていると安定してきたりします。
 過剰な心配をしなくてもと指導してきましたが、急な血圧の上昇は将来の危険因子かもしれません。
 十分に注意して臓器障害をチェックする必要がありそうです。








本論文.pdf

1 高血圧緊急症. 臨床サポートより.pdf

2 ペルジピン.pdf

3 ラベタロール.pdf

4 ニトログリセリンテープ.pdf










posted by 斎賀一 at 21:50| Comment(0) | 循環器

2019年11月15日

原因不明の胃潰瘍

原因不明の胃潰瘍
 
Clinical features and natural history of idiopathic peptic ulcers:
 a retrospective case–control study



1115.PNG



 胃潰瘍の原因はピロリ菌と鎮痛解熱剤(NSAIDs)が主体ですが、最近ではピロリ菌の治療効果と
感染の低下により、ピロリ菌関連の胃潰瘍は減少傾向と言われています。

 今回イタリアから、原因不明の消化性潰瘍(IPUD;idiopathic peptic ulcer disease)についての
論文が発表されました。


纏めますと

1) 2002~2018年にかけて、内視鏡検査を受けた9,212人を対象に検討しています。
   ピロリ菌、NSAIDs、稀な疾患を除外した原因不明の消化性潰瘍;IPUDと定義しています。
   潰瘍のあった380人の内95人がIPUDでした。
   IPUD群と潰瘍のないコントロール群を比較しています。

2) 危険因子としては
   年齢の危険率は3.520、男性は3.126、入院している場合は2.968、
   薬剤の多剤併用の場合は2.808でした。

3) 治療としては潰瘍治療薬のPPIが有効で、40~60日間服用で治癒は97.6%でした。






私見)
 論評では原因不明と言っても、その原因を追究する事が重要としています。
 しかし、現段階では高齢者の薬剤の多剤併用は、胃にとって何らかの負担かもしれません。
 取りあえず、UPTODATEより一般的でない潰瘍の原因を調べました。(unusual peptic ulcer)
下記にPDF化しました。







1 Clinical features and natural history of idiopathic peptic ulcers_ a retrosp.pdf

uptodate unusual-causes-of-peptic-ulce.pdf














posted by 斎賀一 at 21:01| Comment(0) | 消化器・PPI

2019年11月14日

小児の外科における5つのべからず

小児の外科における5つのべからず

Five Things Physicians and Patients Should Question


1114.PNG



 アメリカの小児学会より、小児における外科手術の際の注意事項が発表になりましたので、私の関心のある点だけ意訳しました。
患児の保護者用にもなっていますので参考にして下さい。






1 意訳.pdf

本論文.pdf








posted by 斎賀一 at 12:24| Comment(0) | 小児科