2019年11月22日

コルヒチン(痛風治療薬)の心筋梗塞後の効果

コルヒチン(痛風治療薬)の心筋梗塞後の効果
 
Efficacy and Safety of Low-Dose Colchicine
after Myocardial Infarction
   This article was published on November 16, 2019, at NEJM.org.
 


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 コルヒチンは抗炎症作用のため、最近では痛風発作予防に汎用されています。
以前は発作時に6錠と、多く服用するので副作用の下痢も見られましたが、最近では1錠と少量の服用
でも発作予防効果が認められています。以前の私のブログでも紹介しましたが、心筋梗塞にも少量のコルヒチンでもある程度効果があるようです。
しかし心筋梗塞の発症予防となりますと、さすがにコルヒチンは役不足な感じですが、今回雑誌NEJMから心筋梗塞発症後における心血管疾患の発生予防効果に的を絞った研究が発表になっています。


纏めてみますと

1) 対象者は心筋梗塞発症後30日の人です。
   ベースラインは下記のPDFをご参照ください。
   少量コルヒチン(一日0.5mg)の服用群と、コントロール群に振り分けています。
   主要転帰は、・心血管疾患における死亡 ・蘇生された心停止 ・心筋梗塞 ・脳卒中 
            ・狭心症の緊急入院(PTC実施)
   更に副作用も調べています。

2) 結果
   コルヒチン群は2,366人でコントロール群は2,379名です。
   経過観察期間は平均22.6カ月
   主要転帰の全体ではコルヒチン群が5.5%、コントロール群が7.1%で危険率は0.77でした。
   各主要転帰に関しては、下記のPDFをご参照ください。
   副作用に関しては、下痢がコルヒチン群で9.7%、コントロール群で8.9%でした。
   また、肺炎の合併症はコルヒチン群で0.9%、コントロール群で0.4%でした。
   これは免疫学的な変化が原因としています。




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3) 炎症反応
   炎症の程度を測る場合に、血液検査では高感度CRPと白血球数が目安になりますが、コルヒチン群
   とプラセーボ群では明白な差は認められませんでした。
   経過が短期であったことと、検査をした母集団が少なかったことに起因すると解釈しています。
    (これも下記のPDFをご参照ください。)

4) 結論
   ベースラインとしてスタチン、抗血小板薬、PTCの実施などの治療を十分に施されているという条件
   があります。その上でコルヒチンは、心筋梗塞後の心血管疾患の予防効果があると結論づけられ
   ました。






私見)
 古い薬が次から次へと復権です。
 今の足元を固めて、調子に乗らないで自分の立ち位置をわきまえて前に進みたいと思っています。







1 コルヒチン NEJM.pdf

2 心筋梗塞.pdf

3 コルヒチン文献.pdf










posted by 斎賀一 at 20:52| Comment(1) | 循環器

2019年11月21日

フッ素の安全性についてのレポート

フッ素の安全性についてのレポート
            Medscapeより
              Fluoride at High Levels 'Presumed' a Neurodevelopmental Hazard



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 アメリカ国家毒性プログラム(NTP)から、フッ素に関する報告草案が発表になりました。
結論的には、フッ素は人体の認知機能の発達に悪影響を及ぼす可能性があるとの事です。


纏めますと

1) 飲料水に1.5ppm以上という高濃度のフッ素を配合した場合には、悪影響が想定される。
   低濃度の場合には、小児の認知機能発達に影響があるとは考えられてはいない。
   根拠として7つのややクオリティの低い論文により結論付けられているが、クオリティの高い論文は
   結論には限界があるとしている。

2) 現在アメリカでは67%の住民がフッ素含有の水道水を使用しており、歯磨きや食品にも含まれて
   いる。

3) 2016年のNTPの報告によると動物実験ではエビデンスは中等度ではあるが、動物における学習と
   記憶の欠損が認められた。
   また直近2年間の研究でも、子供における神経機能の発達に悪影響を認めたとの数編の論文が
   ある。
   雑誌JAMAによると、妊娠中のフッ素摂取により子供の3〜5歳時におけるIQの低下を報告して
   いる。
   昨年のEnvironmental Internationalでも、高濃度のフッ素がADHDを増加させたとのショッキ
   ングな報告もしている。

4) 現在NTPの研究チームが、149の人体における論文と339の動物実験論文を調査中である。
   成人では研究に制約があるが、小児においては高濃度のフッ素はIQの低下の懸念があるとして
   いる。

5) アメリカのCDCはフッ素を水道水に入れた事は20世紀の快挙としているが、どの程度のフッ素が
   どの環境で適量なのか判明する事は出来ない。
   「抗生剤を医師が処方するから副反応に注意をするのであり、処方しなければその必要性はなく
   なる。」つまりフッ素を使用するなら量と関係なく注意をすべきである。


      「You can repair a cavity, but you cannot repair a brain」
         (かなり挑戦的な文言です。)






私見)
 以前の私のブログをご参照ください。特に2017-01-04のブログを掲載します。
 又関連資料も再度掲載します。
 それ以上の私のコメントは控えます。

 あるテレビ番組で歯磨きをした後にブクブクをしない方が虫歯予防になるという外国の報告をして
 いました。・・・ どんなもんでしょう?







1 Fluoride at High Levels 'Presumed' a Neurodevelopmental Hazard.pdf

2 ブログより.pdf

3 フッ素4.pdf

4 フッ素3.pdf

5 フッ素1.pdf










posted by 斎賀一 at 13:50| Comment(1) | 小児科

2019年11月19日

脳血流自己調節能について考察

 脳血流自己調節能について考察
         <業務連絡用>




 高血圧と脳循環の関係は、脳血流自己調節機構を理解する事が大事なようです。
色々な文献から考察してみました。
中学の理科の授業で習いました下記の関係式を思い出してください。

    電流 = 電圧 ÷ 抵抗     電圧 = 電流 × 抵抗

      
脳循環血液量も同じ関係です。

    脳血流 = (平均動脈圧―内頚静脈圧 )÷ 脳血管抵抗
  
内頚静脈圧は、ほぼ0と考えて良いようです。
平均動脈圧とは、収縮血圧から拡張血圧を引いて、その差の1/3を拡張期圧に足したものです。
今回は脳内圧の上昇の病態(脳腫瘍や血腫)がないと想定します。



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上記の図譜で理解してください。取りあえず文献をコピペして説明します。

脳灌流圧は脳圧、静脈圧などにも影響されるとは言え、著明な脳圧(頭蓋内圧)亢進や静脈圧上昇が
ないかぎり動脈圧にほぼ平行する。
 図1は縦軸に脳血流量、横軸に脳灌流圧(ここでは平均動脈血圧で代用)を取り、その関係を示した
ものである。正常状態においては平均動脈血圧が50−150mmHgの間では、灌流圧が上昇すれば
脳血管は収縮し、下降すれば拡張して脳血流はほぼ一定に維持される。
(脳循環の自動調節能autoregulation)
ただし灌流圧が急激かつ強度に上昇すれば脳血流は増加し、急激かつ著明に下降すれば低下して
しまう。この下降により脳血管不全(いわゆる脳貧血)といわれる病態が生じる。
 高血圧緊急症とは、単に血圧が異常に高いだけの状態ではなく、血圧の高度の上昇(多くは180/
120mmHg以上)によって、脳、心、腎、大血管などの標的臓器に急性の障害が生じ進行している病態と
定義されています。
一方、高血圧が持続する患者ではこの自動調節能を保つ閾値が右側にシフトする。
高血圧患者ではかなり高い血圧値でも全く自覚症状を訴えなかったり、逆に軽度の血圧下降でもめまい、
脱力などを訴えやすいのはこの右側シフトのためと考えられる。
つまり、高血圧性脳症は、急激または著しい血圧上昇により脳血流の自動調節能が破綻し、必要以上の
血流量と圧のために脳浮腫を生じる状態です。
高血圧脳症は一般に高血圧の既往がない場合は160/100mmHg以上で、高血圧者では220/
110mmHg以上の血圧で出現します。
すなわち、高血圧者ではautoregulationの閾値が血圧の高い方にシフトしており(図1)、過度の血圧
上昇に対してある程度保護的に変化しています。






私見)
 脳血流自己調節能の図も文献により若干異なります。(下記に文献による図譜を掲載します。)
 図譜とは理想的モデルの表示で、仮想空間でしかありません。
 患者個々により病態は異なる事を認識して注意する必要がありそうです。





◆参考文献

    高血圧管理からみた脳卒中の予防と治療;篠原幸人;
     日本臨床V 64, SupPl 6, 2006
    高血圧緊急症・切迫症の場合 ;山脇健盛
     診断と治療 V 98 N 1 2010
    RENAL AUTOREGULATION IN CHRONIC HYPERTENSION
     N Engl J Med, Vol. 347, No. 16 October 17, 2002






血圧を脳循環.pdf










posted by 斎賀一 at 21:58| Comment(0) | 循環器