2019年10月31日

降圧利尿薬が治療の第一選択薬

降圧利尿薬が治療の第一選択薬

Comprehensive comparative effectiveness and safety of
first-line antihypertensive drug classes: a systematic,
multinational, large-scale analysis



1031.PNG
 

       

 現在のガイドラインでは降圧薬の第一選択薬は、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、β遮断薬(含αβ遮断薬)の中で何れでも良いとされています。  (下記のPDFを参照)
単剤少量より開始して、漸増しながら2〜3剤を併用していきます。

 今回の雑誌LANCETの論文は、降圧利尿薬が第一選択薬として最適との内容です。


纏めてみますと

1) (古典的になった有名な)ALLHAT研究ですら幾つかの降圧薬のガチンコ勝負であって、決して
   降圧薬のクラス別での比較ではない。しかもALLHAT研究に登録されている人は、事前に降圧薬
   服用の既往があった。
   最近のACC/AHAのガイドラインも2000年以前の研究成果を盛り込んでいる。
   多くの研究ではCa拮抗薬とACE阻害薬は同等の効果としているが、そのエビデンスは希薄である。

2) 以前の多くの論文はOHDSという統計処置を用いていたが、今回の論文では大量のデータを最新の
   統計処置であるLEGEND-HTNを使用している。
   しかも、今回は個々の降圧剤でなく、降圧剤のクラス分けでの比較である。

3) 55の研究(study)から主要転帰(急性心筋梗塞、心不全の入院、脳卒中)と、46個の副作用(血管
   浮腫、咳嗽、電解質異常、痛風、下痢、腎疾患など)を調べています。

4) 結果はクラス比較でも、半分以上は主要転帰に差はありませんでした。
   しかし降圧利尿薬(ナトリックスなど)はACE阻害薬と比較しますと、急性心筋梗塞では危険率が
   0.84で、心不全の入院は0.83、脳卒中は0.83と明らかに降圧利尿薬が優位でした。
   また降圧利尿薬は、Ca拮抗薬の非ジヒドロピロジン系(ヘルベッサー、ワソラン)よりも優位でした。
    (下記のグラフを見ますと、全てに対して降圧利尿薬がやや優位)
   ジヒドロピロジン系(アムロジン、ノルバスク、カルブロック、アテレックなど)は、非ジヒドロピロジン
   系と比較しますと、主要転帰は優位でした。
   ジヒドロピロジン系のCa拮抗薬、ARB、ACE阻害は何れも明白な差はありませんでした。
    (下記のPDFを参照)

5) 46個の副作用について、降圧利尿薬は低カリウム血症の危険率が2.8で、低ナトリウム血症も誘発
   していました。
    (下記のグラフをご参照ください。カリウムが一番注意の様です。)






私見)
 降圧利尿薬は電解質異常、糖尿病誘発、痛風などと代謝系の副作用が心配で、第一選択としては
 個人的にはやや控えめでしたが、昔からの復権でしょうか。 ALLHAT研究のさらなる進化でしょうか?
 (個人的には尿酸が高く心配しながら降圧利尿薬を併用していますが、かなり有効で血圧も安定化して
 います。) 






1 本論文より.pdf

2 降圧薬について.pdf









posted by 斎賀一 at 15:47| Comment(0) | 循環器

2019年10月29日

インフルエンザ治療薬・ゾフルーザの逆襲

インフルエンザ治療薬・ゾフルーザの逆襲
 
Genentech Announces FDA Approval of Xofluza
 (Baloxavir Marboxil) for People at High Risk of
Developing Influenza-Related Complications



1029.PNG

 

 ゾフルーザは塩野義製薬が創製し、開発してきました。
本薬の開発および販売は、現在、Rocheグループ(米国Genentech社を含む)との提携下で進めて
おり、日本と台湾における本薬の販売は塩野義製薬が、それ以外の国における本薬の販売はRoche
グループが行います。この米国Genentech社のPhase III CAPSTONE-2 studyの発表を受けて、
米国FDAが内容を承認したとの報道がありました。



使用に関する承認内容は
 ・合併のない急性インフルエンザ
 ・12歳以上
 ・症状が出現して48時間以内
 ・基礎疾患であるため、インフルエンザがハイリスクになる人
  CDCのハイリスクは喘息、慢性肺疾患、糖尿病、心疾患、肥満、65歳以上です。
 
ゾフルーザの副作用の内容報告は
 ・下痢が3% 細気管支炎3% 嘔気2% 副鼻腔炎2% 頭痛1%

効果は
 ・ハイリスク患者でプラセボーとの有症状期間の比較では、ゾフルーザが73時間に対して
  プラセボーは102時間
 ・有症状期間をタミフルと比較しますと、ゾフルーザが73時間で、タミフルが81時間と差はありません。
 ・B型インフルエンザでは、ゾフルーザが75時間に対して、プラセーボは101時間と有効でした。

不明確な点として
 ・12歳以下と体重が40kg以下の場合、安全性と効果は現在確立されていません。
 ・妊娠と胎児への影響は不明
 ・授乳の安全性は不明
 ・併用薬、サプリ、漢方薬との相互作用は不明

服用に関して
 ・食事の影響は無いので食前、食後に関係なく服用は可
 ・乳製品、カルシウム剤、下剤、制酸剤(潰瘍治療薬)、鉄剤、亜鉛、セレン及びカルシウムや
  マグネシウムを含むサプリとの併用は避ける。





 
私見)
 ゾフルーザの立ち位置が見えてきた感じです。
  ・12歳以上の人で、服用が1回で済むことを望む人
  ・基礎疾患のあるハイリスクの人
  ・65歳以上の人
  ・出来たら体重は40kg以上ある人


 小児に関してはタミフルが基本ですが、イナビルの懸濁吸入も上市されており、今後は職員と使用方法
 を検討します。
  (院内ではgood ideaとの評判です。)






インフ m.pdf









posted by 斎賀一 at 19:43| Comment(2) | インフルエンザ

2019年10月28日

FDAが糖尿病治療薬・フォシーガの心不全治療を承認

FDAが糖尿病治療薬・フォシーガの心不全治療を承認
        <短 報>




 以前のブログでも紹介しましたが、雑誌NEJM発表のDECLARE研究に基づき、糖尿病治療薬である
フォシーガの心不全に対する治療が、アメリカのFDAより承認されたというロイター報道がありました。
(ブログのフォシーガで検索)

 U型糖尿病患者で心血管疾患のリスクがある場合は、心不全での入院が増加するという事を踏まえて
の承認です。
U型糖尿病患者が狭心症や脳梗塞を発症する前段階で、心不全は重要な疾患の1つと捉えられて
います。
糖尿病そのものが、ポンプとしての心臓の機能低下を誘発する可能性があります。心不全の約半数がHFrEF(心機能の駆出率が低下している場合の心不全)ですが、この場合に有効との事です。
FADはある種の心不全と腎不全に対して、フォシーガの適応を迅速に承認したとの事です。





私見)
 上記の様に、ある種の心不全と腎不全に対して承認したと言う事で、全てでない点がミソのようです。






Farxiga approved in the US to reduce the risk of hospitalisation for heart f.pdf


SGLT.pdf









posted by 斎賀一 at 19:59| Comment(0) | 糖尿病