2019年09月11日

小児における今季インフルエンザ・ガイドライン

小児における今季インフルエンザ・ガイドライン
 
Recommendations for Prevention and Control
of Influenza in Children, 2019–2020



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 先日ブログした成人用のガイドラインとほぼ同様ですが、若干意味合いが異なっていますので纏めて
みました。



1) 今季は4価ワクチンです。

2) ワクチンは、10月の末には終了しておくことが理想である。

3) ワクチンの予防効果は、6カ月から8歳までは64%であるが、9~17歳では28%であった。
   全体としてはA(H1N1)では65%、A(H3N2)では25%、Bでは48%の効果だった。

4) アメリカでは、昨年の小児のインフレエンザ関連死亡例は116例で、66%が入院後でした。
   (逆に34%は入院前に死亡しています。)
   平均年齢は6.1歳です。約半数は基礎疾患がありませんでした。
   70%がワクチン未接種です。 入院率はBの方がAより多い。

5) 卵アレルギーの小児も安全にインフルエンザワクチンを接種できる。
   接種の前に卵アレルギーの検査を実施しなくても良い。
   但し、過去に接種したワクチンも含めて、アナフィラキシー既往の有無についての問診が必要
   である。

6) 妊娠の初期、中期、後期において、如何なる時期にもワクチン接種は安全に実施できる。
   妊婦がインフルエンザワクチンを接種すると、生まれてきた乳児に対にても生後6カ月までワクチンの
   効果は72%まで認められる。(胎盤を通過するため)
   妊娠初期での接種でも、安全性が証明された論文がある。
   (以前の小規模の研究では、妊娠初期での接種は流産の危険があるとしていましたが、のちに同じ
   研究者による規模を拡大した後の研究では、安全性が証明されたとの事です。)
   インフルエンザに罹患した母親の授乳は勧奨しています。
   母乳を通して、インフルエンザ抗体が新生児に移行すると考えられているからです。
   しかも、母親がタミフルを服用していても授乳は勧めています。
   但しゾフルーザはエビデンスが無いため勧めていません。

7) ワクチン接種の時期
   接種後のワクチン効果の減弱はA(H1N1)やBよりもA(H3N2)の方が多い。
   減弱率はA(H1N1)で6~11%/月、A(H3N2)とBでは7%/月です。
   ある研究によると、接種後180日間でも54~67%の効果があるとしています。
   またある研究では、接種後111日間は効果があったとしています。
   (概ね4か月間は効果が持続しているようです。)
   インフルエンザが流行している限り、翌年の6月までは接種を続ける必要があるとしています。
   つまり、小児の場合も出来る限り早期での接種を勧めています。

8) 治療薬に関してはタミフル、リレンザはインフレエンザ症状を36時間まで短縮します。
   タミフルは1~5歳の乳幼児の急性中耳炎を軽減します。
   早期の治療が予後に良いとの指摘は以前と同じですが、症状が出現してから遅れて治療した場合の
   効果は明白でない様です。しかし基礎疾患のある小児や重症感のある場合は、48時間経過してから
   でも治療を勧めています。
   生後2週間の新生児に対しても、アメリカのFDAは許可しています。
   更に利点があれば、未熟児に対しても有効との事で投与を指示しています。
   タミフルの10代における神経症状の出現は日本で報告がありますが、その後の調査では証明されま
   せんでした。
   迅速診断では陰性でも、症状優先でインフルエンザの治療をすべきとしています。
   (勿論、患児の層別化が必要です。)

9) タミフル、リレンザ、イナビルに関して耐性はほぼ心配ないようです。
   ゾフルーザに関して、処方頻度が増加するに従って耐性も増加するとの報告が日本から発信されて
   います。
   アメリカではゾフルーザに関しては調査中としていますが、今シーズンに関しては小児でも許可
   しています。
   もしもシーズン中において耐性の報告があれば、注射剤のラピアクタ点滴も考慮されるべきとして
   います。






私見)
 小児に関して、基本はワクチン接種、治療薬はタミフルでしょうか?







インフルエンザ 小児 ガイドライン.pdf








posted by 斎賀一 at 19:25| Comment(1) | インフルエンザ

2019年09月09日

実地医家への警告・Choosing Wiselyより

実地医家への警告・Choosing Wiselyより
 
Choosing Wisely list  American Society for Clinical Pathology



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 最新版の"Choosing Wisely"が発表になっていますので、ブログに掲載します。
本院に関連のある項目のみ抜粋してみます。


6) 炎症性疾患で診断が不明の場合、赤沈(血沈)は行わずに寧ろCRP検査を行うべきである。
   炎症が発生して24時間以内にCRPは上昇し、炎症が終焉すれば一両日中に正常化するが、赤沈は
   反応が遅れるし炎症が線維化過程にならない限り正常化しない。
   (現在では赤沈は汎用されていません。しかし不明熱や膠原病の場合、あるいはその他疾患によって
   は治癒判定は、今でもCRPより有効です。)

10) 甲状腺疾患を最初に診断、評価する際に色々な検査を行うのは無意味である。
   TSH(甲状腺刺激ホルモン)を先ず検査して、その次に追加検査を検討するのがリーズナブルで
   ある。TSHは、潜在性疾患の場合も異常値として捉えることが出来る。
   (患者さんには何回も採血をしなくてはなりませんが、ご了承ください。)

13) 急性膵炎の診断にアミラーゼ測定は意味がない。寧ろリパーゼ測定が有効
   急性膵炎の場合にアミラーゼは尿に排出されるが、リパーゼは再吸収され循環する。
   よってリパーゼは、膵障害時にアミラーゼよりも異常値が長時間認められる。
   アミラーゼは発症後3〜6時間以内で急に上昇し最高値となり、5日間で消褪する。
   一方リパーゼは24時間以内に最高値となり、8〜14日間も継続して異常値を示す。
   ガイドラインではリパーゼのみの測定を勧奨している。
   両方を測定するのは費用対効果の観点から推奨しない。
   (本院では両方を測定しています。)

14) ピロリ菌の診断には血液検査でなく、便ピロリ検査か呼気試験を勧める。
    各種のガイドラインも同じように勧奨している。
    (本院ではPPIを服用している患者さんには、血液検査を行う事もあります。)

21) クレアチニン単独での意味合いは少ない。
    慢性腎疾患(CKD)にはeGFR(腎機能)の測定にクレアチニンを採用するか、尿中蛋白/クレアチ
    ニン比を用いて評価する。
    (本院ではシスタチンCを代用しています。)

25) プロカルシトニンは安易に検査をすべきでない。
    (賛否両論がありそうですが、患者の層別化が必要なようです。 ※本文参照)

27) C型肝炎ウイルス抗体検査は繰り返す必要はない。





  
私見)
 アメリカのダイナミズムには、やはり感心します。





ASCP-Choosing-Wisely-List.pdf










posted by 斎賀一 at 19:38| Comment(0) | 小児科

2019年09月07日

糖尿病治療薬・GLP-1受容体作動薬(ビクトーザ)は胆道疾患に注意

糖尿病治療薬・GLP-1受容体作動薬(ビクトーザ)は胆道疾患に注意
 
Effects of Liraglutide Compared With Placebo on Events of Acute
Gallbladder or Biliary Disease in Patients With Type 2 Diabetes at
High Risk for Cardiovascular Events in the LEADER Randomized Trial



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 ビクトーザと持効性インスリン(ランタス)の合剤が上市されたのを機に、本院でも採用の予定ですが
胆道疾患に注意が必要との論文が掲載されましたので、ブログしました。


纏めますと

1) U型糖尿病で心血管疾患のリスクが高い人、9,340名を登録しています。
   ビクトーザ1.8mgを投与した群の4,668名と、コントロール群4,672名に振り分けています。
   観察期間は3.5年から5年です。 (平均で3.8年)

2) 結果は
   全体の胆道系疾患の発生はビクトーザ群で141例で、コントロール群で88例でした。

   内訳として
   ・無症状の胆嚢結石はビクトーザ群で16例、コントロール群で5例です。
   ・有症状の胆嚢結石はビクトーザ群で52例、コントロール群で40例
   ・総胆管結石はビクトーザ群で51例、コントロール群で33例 
   ・閉塞性黄疸はビクトーザ群で25例、コントロール群で16例

   結局、胆道系疾患はビクトーザ群で1.6倍の頻度となります。



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3) 急性膵炎の頻度では差がありませんでした。
   ビクトーザ群で18例、コントロール群で23例でした。

4) ビクトーザ群で胆道系疾患を併発した場合は体重減少が5.3kgに対して、併発症がないコントロール
   群の体重減少は3kgでした。
   体重が1kg減少する毎に、4%の胆道系疾患のリスクが増加するようです。

5) 胆石は体重減少により増加するとのデータは、以前からありました。
   糖尿病患者がダイエットや腸管切除の手術をした場合に、胆道疾患が増加するという報告もあります
   が、ビクトーザによる体重減少だけでは説明がつかないとしています。
   その他として、胆嚢の収縮低下、空腹時間の延長、が想定されています。





私見)
 ビクトーザと合剤の新薬を下記に紹介します。
 GLP-1受容体作動薬の効果は、ガイドラインでも既に紹介されています。
 インスリンとの合剤が上市されたことで、処方の幅が増えた感じです。
 胆石のある方は勿論ですが、十分な胆道系の観察が必要なようです。






1 本論文.pdf

2 どんなおくすり?ビクトーザ.pdf

3 ビクトーザ.pdf

4 ゾルトファイ.pdf

5 ゾルトファイ成分量.pdf












posted by 斎賀一 at 17:12| Comment(1) | 糖尿病