2019年09月30日

N95マスクとメディカルマスクの比較

N95マスクとメディカルマスクの比較
 
N95 Respirators vs Medical Masks for Preventing
Influenza Among Health Care Personnel



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 インフルエンザのシーズンとなりました。
予防には注意が必要ですが、医療従事者においては特にマスクの着用が必須です。
以前のサーズ問題の時から、マスクは厳格なN95が必要との事で本院も大量に備蓄してありますが、
最近ではインフルエンザの予防には、通常のマスク(medical mask又はsurgical mask)でも十分な
効果があるとされています。 (以前に私もブログで紹介しましたが、N95で検索してください。)
今回、それを証明した論文が掲載されています。


纏めますと

1) 2011~2015年にかけて、医療従事者2,862名を対象にN95マスクと通常マスクに振り分けて、
   調べています。  
   女性が82.8で、平均年齢が43歳です。
   (ナースが主体のため女性が多いようですし、若干若い方が多い気がします。)

2) 主要転帰は、検査でインフルエンザが確診した例
   二次転帰は、インフルエンザ様疾患、検査で確診した呼吸器感染症です。

3) インフルエンザ感染の確診はN95が8.2%、通常マスクが7.2%でした。

4) 結論としては、N95マスクと通常マスクとの差はありませんでした。






私見)
 対象者はインフルエンザ・ワクチンの接種をしています。
 先ずはワクチン接種を行いましょう。






n95.pdf











posted by 斎賀一 at 20:15| Comment(0) | インフルエンザ

2019年09月28日

アナフィラキシー治療の評価

アナフィラキシー治療の評価
 
Evaluation of Prehospital Management in a Canadian
Emergency Department Anaphylaxis Cohort


       
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 主として、食物アレルギーによるアナフィラキシーの治療はエピペン注射が中心です。
アナフィラキシーとは、全身症状(嘔吐、喘鳴、血圧低下など)を意味しますが、蕁麻疹程度の軽症の場合は抗ヒスタミン薬や経口ステロイド薬を用いる事が多いようです。しかし問題は、軽症と思ってもアナフィラキシー症状が引き続き発現する事もあり、油断は出来ません。アナフィラキシーの既往のある方は、エピペンを常時携帯しておかなくてはなりません。

 アナフィラキシーで救急外来を受診、もしくは入院の前にどの様な治療をしていたかを調べた論文が、
カナダから発表になっています。


纏めますと

1) 3,498例のアナフィラキシー患者を調べています。
   80.3%が小児です。
   救急外来、もしくは入院前にエピペン使用は31%、抗ヒスタミン薬使用は46%、経口ステロイド薬
   使用は2%でした。

2) 集中治療室及び病棟への入院を危険率で調べますと、エピペンが0.23、抗ヒスタミン薬が0.61、
   経口ステロイド薬が2.84でした。

3) 基本は迅速なエピペン注射が大事です。
   またエピペン注射と抗ヒスタミン薬を併用する事により、
   救急外来でのエピペン注射の2回法を回避する事が出来ます。一方経口ステロイド薬は副作用も
   あり、治療としては勧められないとしています。





私見)
 私の経験では、喘鳴を伴うアナフィラキシーのショック状態で、ステロイドの点滴療法を行い奏功した
 例が多々あります。
 但し、経口ではステロイドの効果が遅延するものと思われます。
 また食物アレルギーの治療に抗アレルギー薬が抗ヒスタミン薬(ポララミン)と同じ、とのエビデンスも
 少ないようです。

 本院では、食物アルルギーの患者さんには下記のような戦略を考えています。
 ・原則、抗ヒスタミン薬のポララミンを持参
  アナフィラキシーの心配がある患者さんにはエピペンも携帯
 ・代替としては、ポララミンとボスミン鼻用スプレーを複数の場所に置いておく。
  この場合は、安価で誰でも直ぐに治療が可能です。
 ・私の推奨はポララミン、エピペン、ボスミン鼻用スプレーの全てを準備しておく。


 私のブログより、アナフィラキシーで検索して参考にしてください。





Anaphylaxis.pdf









posted by 斎賀一 at 15:22| Comment(0) | 小児科

2019年09月26日

喘息患者の高血圧治療

喘息患者の高血圧治療
 
Treatment of Hypertension in Patients with Asthma
N Engl J Med 2019;381:1046-57.



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 高血圧と喘息は、全身性炎症疾患としても捉えられています。
つまり炎症性サイトカインの影響で、互いに疾患の進展と増悪が誘発されます。
雑誌NEJMに、基礎医学的な内容と実地の医療の問題が提起されていましたので、簡単にブログに
します。



1) インターロイキン6がCRPに関与して動脈硬化及び呼吸機能の1秒率の低下を引き起こす。

2) 気管支喘息はタイプ2−高炎症と、タイプ2−低炎症の二つのコードのタイプがあります。
   このタイプU−低炎症は高齢、肥満、遅発性喘息、非アトピーに関連していますが高血圧にも関与
   しているコードで、気管支喘息と高血圧を繋げる因子です。インターロイキン17も関連因子として
   想定されています。これらのサイトカインが炎症を誘発し平滑筋を活性化して動脈硬化、高血圧や
   喘息を悪化させます。

3) 高血圧と喘息の治療薬には総合的に注意が必要である。
   ・βブロッカー(β遮断薬)
    心不全や心筋梗塞ではβブロッカーが用いられますが、選択的βブロッカーでは呼吸器系には
    影響が少なく心配する必要は無い。しかし容量が増えると喘息の急性増悪に繋がる。



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 短期的にはβブロッカーが一秒率の低下を惹起する場合があるが、長期での選択的βブロッカーの使用
では呼吸機能には影響が少ない。
但し喘息がコントロールされている場合で、不安定の状態では注意が必要
   (本院ではアーチスト、テノーミン、メインテートを処方しています。)



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  ・降圧剤
   降圧利尿薬とカルシウム拮抗薬は、喘息患者に使用可能であるがARBが最も適応がある。
   喘息のコントローにも寄与しています。
   尚、喘息でβ刺激剤を用いますと低カリウム血症に注意が必要ですが、降圧利尿薬を併用する場合
   は特に慎重にしなくてはなりません。
   またカルシウム拮抗薬は呼吸筋の弛緩に関与する可能性がありますが、実際は期待する程の効果
   は無いとの事です。
  ・喘息治療薬のβ刺激剤
   短期作用薬のSABAを頻回使用の際には、血圧に注意が必要となります。
   (長期作用薬のLABAでは高血圧患者でも使用可能とされています。)






私見)
 薬の相互作用も問題ですが、疾患間の関係も高齢化社会では重要な問題です。
 シンプリ イズ ザ ベスト とはいかないようです。






本論文.pdf














posted by 斎賀一 at 16:15| Comment(0) | 循環器