2019年07月16日

火傷の管理・その1

火傷の管理・その1
 
Management of Burns
   N Engl J Med 2019;380:2349-59.



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 雑誌NEJMに火傷の総説が載っていましたので纏めてみました。


1) 重症な火傷の場合は、救急と同じ様に適切かつ迅速なABC療法が大事である。
    (airway, breathing, and circulation)

2) 火傷の治療は、その皮膚障害の深さに関係する。



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   Nejmの論文中の図譜も参照してもらいたいのですが、取り敢えず上図を見て説明します。
   皮膚は表皮、真皮、皮下組織に分かれます。
   表皮はバリアーの働きがあり、水分の蒸発を防ぎ、細菌などの外敵の侵入を阻止します。
   真皮はバリアーの働きはありませんがコラーゲンなどを含んでおり、皮膚の強靭さを形作って
   います。更に神経、汗腺、毛囊などの付属器もあります。
   火傷の程度は一度、二度、三度としています。
   一度火傷は表皮に損傷が留まっています。二度火傷は真皮にまで到達していますが、皮下組織まで
   は波及していない場合です。 (本院では二度まで対応します。)
   一度ではバリアー機能は正常ですので、皮膚は乾燥しており発赤のみで治療も軽くて良いのです
   が、二度ではバリアー機能は消失しているので、水泡を形成したり滲出液が出てきます。
   更にそこにある末梢神経によって疼痛が強いです。
   受傷後に、損傷の辺縁の基底細胞が再生してきます。それがサイトカインを刺激して、創傷治癒を促
   します。ケラチノ細胞は湿潤環境では素早く移行して損傷部位を覆いますが、乾燥状態だと遅延して
   しまいます。
   付属器が保たれていると、ケラチノ細胞の移動も広がり易くなります。
   特に付属器の中の毛囊が損傷治癒に貢献します。しかし高齢者は若い人に比べて毛囊は少ないし、
   皮膚は薄いので損傷治癒の過程が遅延します。また、二度火傷では損傷が深いので皮膚付属器の
   残存が少なくなっており、損傷治癒が遅れる原因となります。
   結論的には、湿潤環境である事と皮膚付属器が温存されている事がサイトカインの誘発を適切に
   行って、治癒を早く促してくれます。皮膚の損傷が浅い事と毛のダメージが少ない事が大事です。



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3) 治癒過程が2〜3週間も遅れると、瘢痕治癒が起きてしまいます。
   従ってどの程度の火傷でも、2週間経過したら皮膚移植の適否の判断をしなくてはなりません。

4) 最初に損傷部位はソープと水で綺麗に洗浄すべきです。
   汚れた組織や水泡は除去(debridement)して局所的に軟膏剤を塗布して湿潤環境にします。
   もしも抗生剤含有の軟膏剤を使用する場合は、1日に1〜2回はドレッシング材の交換をしなくては
   いけません。
   但し手のひらや足の裏の水泡は、快適さのためにそのままにしておく場合もあります。
   損傷部位が清潔と判断できれば、5日間はドレッシング剤をそのままにしておくことも可能です。
   しかし、瘢痕形成はどの程度の火傷でも起きますので、2週間後には開放して皮膚移植の適否を
   判断する必要があります。

5) 三度の火傷は省略します。





私見)
 私の誤解と再確認
 ・湿潤環境はサイトカインと白血球誘導に必要だけでなく、周りからの再生細胞の移動のために必須
  です。
 ・その再生細胞のために、毛囊は重要な働きをしています。
  毛のダメージを判断するのが肝要です。  (毛深い人がうらやましい)
 ・どんなに軽症と思っても、2週間後には治癒の再評価が大事であることを患者さんに理解してもらう。






火傷 本論文より.pdf





















posted by 斎賀一 at 21:57| Comment(1) | その他