拡張期血圧も大事です
Effect of Systolic and Diastolic Blood Pressure
on Cardiovascular Outcomes
N Engl J Med 2019;381:243-51.
当たり前の結果と思われかねませんが、私にとっては重大な警鐘ですのでブログで纏めてみました。
収縮期血圧は心臓の収縮によって生ずる血圧ですが、拡張期血圧は大動脈が収縮する際(元に戻る)に生ずる血圧です。つまり大動脈が鉛の様に硬ければ拡張期血圧は限りなく低くなります。
脈圧(収縮期血圧と拡張期血圧の差)が多かったり、拡張期血圧が低い事は動脈硬化が進んでいる可能性があると患者さんに説明していました。
現にフラミンガム研究を利用した10年リスク計算でも、拡張期血圧は無視しています。そうは言っても拡張期血圧は複雑な要因が互いに絡まって成り立っています。
今回の雑誌NEJMの論文ではその点に注目しての臨床医に対する警鐘と思われます。
簡単に纏めますと (一部日本語版をコピー)
1) 最近改訂されたいくつかのガイドラインでは、高血圧治療の閾値が異なる(140/90 mmHg 以上と
130/80 mmHg 以上)ため、理解をより困難にしています。
一般外来患者集団の成人 130 万人のデータを用いて、8 年間において収縮期高血圧と拡張期
高血圧の負担が心筋梗塞、脳梗塞、脳出血からなる複合転帰に及ぼす影響を評価した。
対象者は18歳以上で、2007年 1 月~2008年 12 月の間に、少なくとも1回は血圧を測定した事
のある人です。転帰の評価は2009年 1 月から2016年 12 月までとしています。
血圧の測定は自動血圧計を用いています。判定方法に関しては下記のPDFに掲載しました。
収縮期高血圧の持続的負担(140 mmHg 以上、ハザード比1.18)と拡張期高血圧の持続的負担
(90 mmHg 以上、ハザード比 1.06)によって、複合転帰が独立して予測された。
(つまり拡張期高血圧もそれなりに危険である。)
低い高血圧閾値(130/80 mmHg 以上)を用いた場合と、高血圧の閾値を用いずに収縮期血圧と
拡張期血圧を、予測因子として用いた場合でも同様の結果が得られた。
(つまり高血圧のガイドライン基準に関係なく、血圧は低ければ低い方が良い。)
高齢者では、拡張期血圧と転帰との間に J カーブの関係が認められましたが、統計学的処置を
しますと、収縮期高血圧の影響がより大きいことも判明しました。
注意点としては、本研究では冠動脈疾患の患者が少ない傾向でした。
拡張期血圧と J カーブの関係は、高齢者や既に冠動脈疾患を有する人、細動脈疾患を有する臓器
障害のある人に認められた所見でした。
2) 結論として
収縮期血圧の上昇のほうが転帰への影響が大きかったが、収縮期高血圧と拡張期高血圧は高血圧
の定義(140/90 mmHg 以上または 130/80 mmHg 以上)を問わず、いずれも独立で有害心
血管イベントのリスクに影響を及ぼした。
私見)
詳細は本論文のグラフを下記にPDF化しましたので、ご参照ください。
収取期血圧の危険率は1.18で、拡張期血圧は1.06と収縮期血圧の方が重要で間違いはないの
ですが、年齢と伴に冠動脈疾患や腎疾患などの細動脈疾患を有する人は、拡張期血圧にも注意が
必要です。
(心血管を有する患者さんには、低くても高くても注意が必要です。)
拡張期血圧が90以上の場合は放置せずに眼底、尿検査にて細動脈硬化症の有無もチェックする
事が大事な様です。
血圧NEJM.pdf