2019年06月01日

喀痰中に好酸球が少ない軽症喘息ではステロイド吸入は効果がない

喀痰中に好酸球が少ない軽症喘息ではステロイド吸入は効果がない

Mometasone or Tiotropium in Mild Asthma
with a Low Sputum Eosinophil Level
This article was published on May 19, 2019,at NEJM.org



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 喘息患者の約半数は吸入ステロイドが無効との報告があります。又、そのような患者の炎症には、
好酸球が関与しているとは限らない様です。しかし、一般的にガイドラインは喘息患者の全員に
吸入ステロイドを勧奨しています。
軽症持続性気管支喘息はステップ治療のUですが、今後重症化の危険も秘めており、重要なステージ
でもあります。


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今回のNEJMの研究では、軽症持続性の喘息患者を対象に喀痰中の好酸球の多寡により(2%を
境界に)吸入ステロイドの効果を調べています。
持続性のβ刺激薬(LABA)は単独で使用する事は禁忌ですので、それに代わる持続性の
ムスカリン拮抗薬(LAMA)を採用しています。
吸入ステロイド剤としてはモメタゾン(アズマネックス)、LAMAとしてはスピリーバ(チオトロピウム)
を採用しています。

纏めますと、

 1)  42 週間の二重盲検クロスオーバー試験において、12 歳以上の軽症持続型喘息患者
     295 例をモメタゾン(吸入ステロイド)を投与する群、スピリーバ(チオトロピウム、
    長時間作用性抗コリン薬)を投与する群、プラセボを投与する群に割り付けた。
    患者を、喀痰中好酸球比率(2%未満,2%以上)によって分類した。
    二重盲検クロスオーバー試験とはやや複雑なプロトコール(試験デザイン)ですが、
    下記に概略を示します。
 
 
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    好酸球が低い群と、多い群に先ず振り分けます。次にピリオッド1では吸入ステロイド
   (モタメゾン)とプラセボを12週、次にピリオッド2では、チオトロピウム(スピリーバ)
    とプラセボを12週、最後にプラセボの2剤を12週間としています。
    其々の最初の4週間の間に起きた喘息症状の変化は、前のピリオッドにカウントしました。
 
 2) 患者の 73%が好酸球低値であり、うち 59%で試験薬の反応に差がみられた。
    しかし、モメタゾン、またはスピリーバへの反応にプラセボとの有意差は認められなかった。
    酸球低値で治療反応に差がみられた患者のうち、モメタゾンへの反応のほうが良好で
    あったのは 57%であり、プラセボへの反応のほうが良好であったのは 43%であった。
    一方、チオトロピウムへの反応のほうが良好であったのは 、60%であったのに対し、
    プラセボへの反応のほうが良好であったのは 40%であった。
    
    好酸球高値の患者では、モメタゾンへの反応のほうがプラセボへの反応よりも有意に良好で
    あったが(74% 対26%)、チオトロピウムへの反応は、プラセボへの反応よりも有意には
    良好でなかった(57% 対 43%)。
    しかし、年齢が高い層ではチオトロピウムの効果は良好であった。

 3) ステップ2は1週間で2回以上の発作と定義されていますが、ガイドラインでは毎日の
    ステロイド吸入を勧めています。しかし、ステップ2の喘息患者の3/4は好酸球が低値です。
    タイプU(好酸球優位の喘息)でなければ吸入ステロイドは効果がありません。
    勿論、本研究でもタイプUでは吸入ステロイドは効果がありました。
    その一方で、以前から喘息患者は気道の炎症が遍在(どこでも認められる)しているので、
    気道のリモデリング(構造の変化)を防ぐ意味で、吸入ステロイドは必要とされていました。
    しかし、本論文の著者は「リモデリングは実際には稀で、喘息でヤイノヤイノと言われている
    ほどには起きていない」としています。

 3) 全体的な結論としては、軽症持続型喘息患者の大部分は喀痰中好酸球比率が低値であり、
    モメタゾン、またはチオトロピウムへの反応にプラセボとの有意差は認められなかった。
    むしろ、毎日の吸入には、副作用の方が懸念されると結んでいます。



私見)
 本院では、喀痰中の好酸球の検査は一般的には行っていません。
 末梢血での好酸球は、喀痰中の好酸球を反映しないとも言われていますが、本論文から引用しますと、
末梢血で4%以上の場合に、喀痰中にも好酸球が多いかもしれません。
取りあえず、最低限に吸入ステロイドの使用の際には、末梢血を参考にしてから喀痰中の好酸球の検査
とします。
 

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本論文より.pdf






posted by 斎賀一 at 16:56| Comment(0) | 喘息・呼吸器・アレルギー