2019年06月29日

熱中症・再考

熱中症・再考
 
Heatstroke
  N Engl J Med 2019;380:2449-59.



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 熱中症に関して恥ずかしながら私は誤解していた点があり、今回の雑誌NEJMを通読して考えを新たにしましたので、纏めてブログにしてみました。



1) 熱中症は熱の蓄積が発散を上回る時に発生しますが、安静時において高温多湿や熱波に晒される
   場合と、運動による発熱の過剰産生の場合があります。
   つまり古典的(受動的)と活動性(労作時)の2種類があります。

2) 古典的熱中症
   基礎疾患のある高齢者に多い。
   最近ではヒートアイランドや、地球温暖化も大いに関与している。
   年少児は体の大きさに比較して循環血液量が少なく、熱の発散には不適である。
   乳幼児が暑い時期に車の中に閉ざされると、数時間で命の危険が及ぶ。

3) 労作時熱中症
   散発的に発生する。通年性つまり何時でも起こる。
   以前に同様な運動をしていても、ある時に発生する事もあり油断は禁物
   運動開始から60分以内でも発生する。コーチ、相手の選手、モチベーション、イベントの種類
   (周りの音楽など)により影響を受けてしまう。
   アルコール飲も危険因子

4) 発生機序は古典的と労作時では異なります。
   以下省略

5) 診断
   三大症状として、・発熱 ・神経症状 ・古典的は高温多湿、労作性は運動
   頻脈、多呼吸、低血圧は一般的である。
   皮膚は労作性ではウエットで、古典的ではドライです。
   体温の測定が重要で、40.5°以上が問題となる。
   (マラソンランナーはゴール後に体温が高いのは常識)
   直腸温が基本であるが、測定の不適切や他の方法での検温などで診断が遅れると、誤診に繋がる。
   神経症状は熱中症では避けられないが、体温が40.5°以下では回復する。
   しかし、小脳性運動失調、構音障害、認知障害、順行性健忘症は、数週間から数か月持続する
   ことがある。
   多臓器障害は24~48時間後に出現するので、注意が必要
   ある研究では熱中症後の死亡率は、一般と比較して数年後に増加とのデータあり。
   (熱中症を起こした高齢者は予後が悪い事を示唆しています。)

6) 鑑別診断
   髄膜炎、脳炎、てんかん、薬物中毒

7) 治療
   基本は体温の低下管理です。目標は39°以下。
   (本院では高温発熱時には、二次施設への転送が基本です。)
   解熱剤は無効であり、有害でもある。
   点滴治療は本質ではなく、クーリングである。
   当然ながら脱水に対しては点滴500ccを2本/1時間
   補水及び点滴量は30cc/kgが基本量で、尿量管理は50cc/kg/時間以上
   クーリングが基本で、3分で1℃下げるのを目標とする。
   氷は必ずしもないので4°以下の十分量な水を体に注いで、5分で0.5°下げるのを目標に
   しても良い。
   効果は不定だが、高齢者には冷たい水のimmersion(水風呂も可?)も有効
   海外にはクーリングのデバイスが進化しています。






私見)
 熱中症には二つのタイプがあり、病態生理的に異なっているようです。
 基本的には熱の蓄積ですので、治療はクーリングが大事です。
 直腸温の測定とクーリングに関して、職員の方と議論しましょう。
 (クーリングのデバイスも改良されています。)
 以前の私のブログもご参照ください。



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 拙訳をPDF化して下記に掲載しました。




熱中症の分類.pdf

熱中症最新事情.pdf










posted by 斎賀一 at 16:17| Comment(2) | その他

2019年06月26日

5mm以下の大腸ポリープについて;その3

5mm以下の大腸ポリープについて ; その3
 
大腸小・微小病変に対するcold polypectomyの意義と課題
  胃と腸第12巻第12号2017年11月号



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 大腸ポリープの小・微小病変に対してcold polypectomy(CP)が脚光を浴びており、多くの施設で
適応されています。
雑誌 胃と腸・2017 に特集号が組まれていましたので、再読して纏めてみました。


1) 高周波切開凝固装置を使用せずに、生検鉗子で行うCPをCFP(cold forcepts polypectomy)
   と言い、スネアを用いて行うCPをCSP(cols snare polypectomy)といいます。
   一般的にポリープ切除の適応は、CFPは5mm以下でCSPは10mm以下が対象です。

2) 利点としては出血や穿孔の合併症は殆ど無く、抗凝固薬を服用している人でもその合併症は一般の
   患者さんと同程度との事で、安全性が確立しています。

3) 問題点として
   ・安全とされているが初心者でも行える手技か
   ・5mm以下でもごく稀に浸潤癌があるが、取り残しはないのか
   ・断端遺残や再発はないのか
   ・病理診断に充分に耐える検体か




私見)
 下記の文献及び雑誌「 胃と腸 」より、纏めてPDFで掲載します。
 詳しくは雑誌「 胃と腸 」を購読してください。



 画像で見ぬく消化器疾患 ; 大腸    医学出版
 胃と腸  消化器疾患の分類 2019増刊号   医学書院





cold polypectomy.pdf










posted by 斎賀一 at 19:02| Comment(1) | 消化器・PPI

2019年06月24日

5mm以下の大腸ポリープについて;その2

5mm以下の大腸ポリープについて ; その2
 
Incidence of Advanced Colorectal Neoplasia in Individuals
With Untreated Diminutive Colorectal Adenomas Diagnosed
By Magnifying ImageEnhanced Endoscopy



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 5mm以下の微小大腸ポリープ(diminutive)を切除(polypectomy)しないと、5年後にどうなって
いるかという論文が、日本の研究者より発表になっています。


纏めますと

1) 最初に大腸ファイバーでスクリーニングをして、ポリペコトミーを実施しなかった1,378名を対象に
   5年後(60.9カ月)の経過観察を行っています。
    グループA ; 未治療のdiminutive polyp  361名
    グループB ; ポリープの無い人       1,017名

2) advanced colorectal neoplasia (進行型の結腸腫瘍) ; ACN
     グループAのACNの発生は  1.4%
     グループBのACNの発生は  0.8%
    5年後に当該ポリープ(index polyp)からACNは進展していません。
    上記の様にdiminutive polypがあると、新たに別の部位に若干の頻度の多さでACNが発生
    していますが、統計的には有意差はありませんでした。
 
3) 喫煙により、グループAは危険率が1.43でACNが発生します。
4) 結論として、5mm以下のポリープに関しては過度な経過観察は必要がないとしています。





私見)
 大腸ポリープのある人に対して、禁煙を指導すべきとしています。







2 Incidence of Advanced Colorectal Neoplasia in Individuals With .pdf











posted by 斎賀一 at 21:36| Comment(1) | 消化器・PPI