熱中症・再考
Heatstroke
N Engl J Med 2019;380:2449-59.
N Engl J Med 2019;380:2449-59.
熱中症に関して恥ずかしながら私は誤解していた点があり、今回の雑誌NEJMを通読して考えを新たにしましたので、纏めてブログにしてみました。
1) 熱中症は熱の蓄積が発散を上回る時に発生しますが、安静時において高温多湿や熱波に晒される
場合と、運動による発熱の過剰産生の場合があります。
つまり古典的(受動的)と活動性(労作時)の2種類があります。
2) 古典的熱中症
基礎疾患のある高齢者に多い。
最近ではヒートアイランドや、地球温暖化も大いに関与している。
年少児は体の大きさに比較して循環血液量が少なく、熱の発散には不適である。
乳幼児が暑い時期に車の中に閉ざされると、数時間で命の危険が及ぶ。
3) 労作時熱中症
散発的に発生する。通年性つまり何時でも起こる。
以前に同様な運動をしていても、ある時に発生する事もあり油断は禁物
運動開始から60分以内でも発生する。コーチ、相手の選手、モチベーション、イベントの種類
(周りの音楽など)により影響を受けてしまう。
アルコール飲も危険因子
4) 発生機序は古典的と労作時では異なります。
以下省略
5) 診断
三大症状として、・発熱 ・神経症状 ・古典的は高温多湿、労作性は運動
頻脈、多呼吸、低血圧は一般的である。
皮膚は労作性ではウエットで、古典的ではドライです。
体温の測定が重要で、40.5°以上が問題となる。
(マラソンランナーはゴール後に体温が高いのは常識)
直腸温が基本であるが、測定の不適切や他の方法での検温などで診断が遅れると、誤診に繋がる。
神経症状は熱中症では避けられないが、体温が40.5°以下では回復する。
しかし、小脳性運動失調、構音障害、認知障害、順行性健忘症は、数週間から数か月持続する
ことがある。
多臓器障害は24~48時間後に出現するので、注意が必要
ある研究では熱中症後の死亡率は、一般と比較して数年後に増加とのデータあり。
(熱中症を起こした高齢者は予後が悪い事を示唆しています。)
6) 鑑別診断
髄膜炎、脳炎、てんかん、薬物中毒
7) 治療
基本は体温の低下管理です。目標は39°以下。
(本院では高温発熱時には、二次施設への転送が基本です。)
解熱剤は無効であり、有害でもある。
点滴治療は本質ではなく、クーリングである。
当然ながら脱水に対しては点滴500ccを2本/1時間
補水及び点滴量は30cc/kgが基本量で、尿量管理は50cc/kg/時間以上
クーリングが基本で、3分で1℃下げるのを目標とする。
氷は必ずしもないので4°以下の十分量な水を体に注いで、5分で0.5°下げるのを目標に
しても良い。
効果は不定だが、高齢者には冷たい水のimmersion(水風呂も可?)も有効
海外にはクーリングのデバイスが進化しています。
私見)
熱中症には二つのタイプがあり、病態生理的に異なっているようです。
基本的には熱の蓄積ですので、治療はクーリングが大事です。
直腸温の測定とクーリングに関して、職員の方と議論しましょう。
(クーリングのデバイスも改良されています。)
以前の私のブログもご参照ください。
拙訳をPDF化して下記に掲載しました。
熱中症の分類.pdf
熱中症最新事情.pdf