2019年04月23日

カナグル(糖尿病治療薬)に腎保護作用がある?

カナグル(糖尿病治療薬)に腎保護作用がある?
 
Canagliflozin and Renal Outcomes in Type 2
Diabetes and Nephropathy  CREDENCE
                   論説は、Clinical Credence − SGLT2 Inhibitors,
                        Diabetes,and Chronic Kidney Disease
  

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 糖尿病治療薬のSGLT-2阻害薬は、糖尿病ばかりでなく心血管疾患の予防効果も認められていますが、更に腎機能保護の可能性が広がる勢いです。この事は私の以前のブログでも紹介しましたが、今回雑誌NELMにカナグルのstudyが出ました。かなり注目されており、色々なサイトでも紹介されています。
本論文の採用基準と除外基準が煩雑なため、suppleより纏めて下記のPDFに掲載します。


本論文を纏めてみますと

1) U型糖尿病はこの10年間で増加傾向ですが、それに伴って糖尿病性腎症による末期腎不全も増加
   しています。今のところU型糖尿病の腎機能低下を予防するのは、高血圧のACE-iとARBだけです。
   今回の研究は、糖尿病治療薬のSGLT-2阻害薬も腎蔵病の転帰を改善するとの想定で行われて
   います。
   本研究はCREDENCEと命名され、メーカーの協力の下でSGLT-2阻害薬としてカナグル(100mg)
   が採用されプラセーボ群と比較しています。
   対象はU型糖尿病で、蛋白尿陽性の慢性腎疾患を伴っている人です。

2) 採用基準(Inclusion Criteria)は
    ・30歳以上
    ・U型糖尿病で蛋白尿陽性の慢性腎疾患を伴う
    ・ヘモグロビンA1cは6.5~12.0%
    ・腎機能はeGFRが30~90
    ・蛋白尿はクレアチニン比で、つまり換算して0.3〜5.0gr/日
    ・降圧薬としてACE-iかARBを服用
   除外基準は煩雑なので、下記のPDFをご参照ください。
   4,401名が登録、平均年齢は63歳、33.9%が女性、平均のヘモグロビンA1cは8.3%、
   平均のeGFRは56.2、平均の尿蛋白はクレアチニン比で927(一日蛋白尿は推定で0.9gr)

3) 主要転帰は
   末期腎不全(透析、腎移植、eGFRが15以下)
   血液クレアチニン値が倍に増加
   腎疾患や心血管疾患に関連の死亡
  
4) 中間報告の結果、中途で試験は中止となっています。(予定されていた有効性に到達したため、
   1年早く中止となっています。それだけカナグルには効果があったと言う事でしょうか。)
   4,401人が登録しています。 経過は平均で2.62年です。
   主要転帰の相対的危険率は、カナグル群で30%の減少
   カナグル群とプラセーボ群で比較しますと、事象率(event rate)は43.2/1000人/年と
   61.2/1000人/年でした。
  末期腎不全は5.3%対7.5%、クレアチニン値の倍量は5.3%対8.5%
  心血管疾患の死亡は5.0%対6.4%でした。  腎関連死はカナグル群が34%減で危険率は0.66 
  心血管疾患、心筋梗塞、脳卒中はカナグル群の危険率は0.80、心不全の入院率は0.61でした。
  カナグル群ではA1cが0.3%減、血圧は3mmHg低下です。
  下肢切断の危険率は同じでした。

5) 本試験は腎不全のリスクが高いpopulation(分布)を選び、転帰もmajorな末期腎不全を想定して
   います。それにも拘らず、カナグル群は腎機能低下や心血管疾患の予防効果が認められました。
   機序としては腎の糸球体圧の低下などが推測されました。
   心血管疾患、心筋梗塞、脳卒中の低下は以前のCANVAS研究と同じ結果でした。
   また懸念されていた下肢切断(amputation)も、カナグル群とプラセーボ群で差はありません
   でした。

6) 同じ号(issue)に論説が載っています。
   本試験は全体的に良くできた研究と評価しています。
   また、決して過大に結論付けてもいないとしています。
   統計的に解析すると、カナグルを服用する事により2.5年間で末期腎疾患の複合的な主要転帰を
   22人中1人助けられるし、心血管疾患も25人中1人予防出来たとしています。
   (5年間で10人中1人は予防できる。重なっているかもしれませんが、心腎を含めれば5年間で
    5人中1人が助かるかもしれません。)
   Journal Watchの論評ではそれに見合う薬価か、との疑問も投げかけています。
 



私見)
 論説によるSGLT-2阻害薬の腎保護に対する機序を下記に掲載しますが、結論的には腎の糸球体圧の
 低下が主体の様です。ならばSGLT-2阻害薬全般に言える事かもしれません。
 誤訳するといけないので、論説の文を下記に掲載します。



 The underlying mechanisms of canagliflozin activity are probably
both renal and systemic. SGLT2 inhibition increases glucose and
sodium delivery to the distal renal tubule, which is sensed
by the juxtaglomerular apparatus as increased glomerular perfusion.
This leads to increased vasoconstriction of the afferent arteriole,
which decreases glomerular perfusion and intraglomerular pressure. Although these effects decrease the estimated GFR in the short term,
as was seen during the first weeks of the CREDENCE trial, over time
that effect stabilizes.




1 カナグル本論文.pdf

2 カナグル supple2.pdf

3 SGLT2阻害薬一覧.pdf








posted by 斎賀一 at 22:13| Comment(1) | 糖尿病

2019年04月22日

顕微鏡的血尿と膀胱癌の関係

顕微鏡的血尿と膀胱癌の関係
 
The Prevalence of Bladder Cancer During Cystoscopy for
Asymptomatic Microscopic Hematuria



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 血尿には肉眼的血尿(患者さんが見た目で判断できる血尿)と、顕微鏡的血尿(試験紙か顕微鏡で
分かる程度の軽微な血尿)があります。
この顕微鏡的血尿の場合に、膀胱癌がどの位潜んでいるかを示した論文がアメリカより出ています。
本論文では顕微鏡の強拡で、1視野で3個以上の赤血球を顕微鏡的血尿としています。


纏めますと

1) 顕微鏡的血尿に対して細胞診を実施し、膀胱がんを精査しています。
   2010~2018年間のコロンビア大学での研究です。
   年齢、性差、喫煙歴、下腹部の放射線照射歴も登録して調べています。
   ただし肉眼的血尿、腎疾患、感染症、結石などは除外しています。

2) 顕微鏡的血尿の患者2,118名を登録しました。
   25名の膀胱癌患者を診断しています。(1.2%)  進行癌はありませんでした。
   女性は0.8%で男性が1.9%の割合です。
   50歳以下の444人には、一人も膀胱癌がいませんでした。

3) 顕微鏡的血尿の場合には、喫煙歴と年齢が重要な因子となります。
   統計処置をしますと、顕微鏡血尿の場合に50歳以下で喫煙歴のない人では、膀胱癌の可能性は
   0.3%に対して、80歳以上で現在も喫煙している人では、12.5%の頻度となります。


 現在のアメリカでのガイドラインは顕微鏡的血尿の場合に35歳以上で細胞診を勧めているが、NEJM Journal Watchのコメントでは、50歳以上に改訂すべきとしています。





私見)
 逆に50歳以上で試験紙で血尿が認められたら顕微鏡検査、腹部エコー、更には細胞診と勧める必要が
 あるようです。また喫煙歴の問診も大事です。
 下記に関連文献を掲載しますので、職員の方は参考にして下さい。






1 The Prevalence of Bladder Cancer During Cystoscopy for Asymptomatic Microsco.pdf

2 膀胱癌.pdf

3 US検診における腎泌尿器癌の現状と早期発見のコツ.pdf

4 尿沈渣.pdf












posted by 斎賀一 at 19:45| Comment(0) | 泌尿器・腎臓・前立腺

2019年04月20日

アセトアミノフェンは高齢者にも安全

アセトアミノフェンは高齢者にも安全
 
Acetaminophen Safety: Risk of Mortality and Cardiovascular
Events in Nursing Home Residents, a Prospective Study



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 本院でのアセトアミノフェンはカロナール、コカール、アルピーニ座薬がありますが、安全性が高い解熱鎮痛薬(NSAIDs)として汎用されています。
しかし、海外では多用、多量使用のため最近では問題視されています。
また喘息、腎障害、肝細胞障害、骨折、血液疾患、ワーファリンとの相互作用などの副作用に関しても、
報告されるようになりました。

上記の懸念に対して、アセトアミノフェンの安全性を高齢者で検証しようとした論文が出ましたので、ブログにします。
高齢者は薬の副作用も出やすい事が想定されますので、本論文では対象者を施設(nursing home)に入居している人を対象にしています。
論者は述べていますが、最近のアセトアミノフェンに対する副作用報告は極めて稀な例が多く、過剰評価しているとしています。


纏めてみますと

1) アセトアミノフェンの常用量での副作用を調べました。
   対象は施設(nursing home)に入居している5,429名の高齢者で、平均年齢は86.1歳です。
   73.9%が女性

2) 死亡率、心筋梗塞、脳卒中の発生を解析しています。
   2,239名がアセトアミノフェンを服用しています。 (コントロール群と同等の分布populationで
   振り分けています。)
   平均で2,353±993mg/日服用  (本院ではせいぜい1,000mgです。)
   死亡率は、アセトアミノフェン服用者で22.34人/100人/年に対して
   非服用者では22.16人/100人/年と差はありません。 死亡率の危険率は0.98となります。
   心筋梗塞においても関連性はありませんでした。
   但し糖尿病のある人では、アセトアミノフェン群は脳卒中の危険率が3.19でした。

3) 高齢者は一般的に多剤併用しており、代謝上副作用の出現の危険もありますが、アセトアミノフェン
   は、鎮痛薬としては安全性の点で第一選択枝だとしています。
   但し糖尿病患者に関しては、今後の研究が待たれるとも記載しています。





私見)
 未だ疑惑は晴れないと思いますが、依然としてアセトアミノフェンは解熱鎮痛薬ファーストの地位
 のようです。





アセトアミノフェン Acetamin ophen Safety.pdf