2019年03月26日

アブレーション(心房細動治療)の効果;CABANA研究

アブレーション(心房細動治療)の効果;CABANA研究
 
Effect of Catheter Ablation vs Antiarrhythmic Drug Therapy
on Mortality, Stroke, Bleeding, and Cardiac Arrest Among Patients
With Atrial Fibrillation The CABANA Randomized Clinical Trial
JAMA Published online March 15, 2019



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 心房細動の患者さんは無症状の場合もありますが、一方でQOL低下を含めた症状のある方もいらっしゃいます。
心房細動に対するリズムコントロール(正常の洞リズムに戻す)には、薬物療法とカテーテルアブレー
ションがあります。
この両者を比較した研究CABANAが、雑誌JAMAに掲載されていますのでブログにしました。


纏めてみますと

1) 10か国で行われ、2009~2016年、2,204名の有症状の心房細動患者を登録しています。
   65歳以上又は、65歳以下ではリスクが1つ以上ある人が対象です。
   カテーテル群が1,108名で、薬物療法群(抗不整脈)が1,096名です。

2) 主要転帰は全死亡、後遺症のある脳卒中、重篤な出血、心停止
   2次転帰は13項目です。
   心血管疾患の入院、心房細動の再発などですが、多項目な為下記のPDFにsuppleを掲載します。

3) 結果に対して注意が要る点は、cross-overです。(薬物療法でも途中でアブレーションを実施して
   いますし、アブレーションでも薬物療法を併用しています。そのため両群での比較には、統計上ITT
   解析で比較をしています。ITT解析に関しても下記のPDFをご参照ください。)
   つまりcross-overがあるのでITT解析により出来るだけ公平に両群を比較検討していますが、
   残念ながら本研究に関してはこの点を勘案しなくてはなりません。その結果、予想以上にアブレー
   ション効果が低くなっています。

4) 2,204名、平均年齢は68歳、37.2%が女性、発作性心房細動が42.9%、持続性心房細動が
   57.1%です。

  ・アブレーション群を見ますと
   登録後平均29日後にアブレーションを実施していますが、90.8%が実施し、本人及び家族の意見や
   身体検査で実施を中止しているのが、9.2%ありました。
   アブレーションはblanking periodの間で25例が再度実施しており、blanking period以降で
   少なくとも1回以上アブレーションを実施したのは190例です。
   合計215例(19.4%)が再度アブレーションを実施しています。
   (アブレーション後の3か月間は手術の成果にもかかわらず、炎症のためblanking periodと呼ばれ
   る心房細動が起きる事が多く、抗凝固薬の継続は欠かせません。更にもう3か月間を加え、6カ月間
   は継続することが推奨されています。   by 沖重 薫氏より)
   またblanking periodの間では44.6%が抗不整脈薬を服用していましたが、blanking period後
   では抗不整脈薬を服用していたのは、たったの26.5%でした。

  ・薬物療法群を見ますと
   抗不整脈を1剤が545名、2剤が296名、3剤が106名、4剤以上が22名でした。
   薬物療法群では301名(27.5%)が、結局アブレーションを実施しています。
   経過観察は48.5カ月です。

5) 主要転帰では、アブレーション群で89名(8.0%)、薬物療法群で101名(9.2%)です。
   14%の減少で危険率は0.86でした。
   2次転帰に関して、全死亡はアブレーション群で5.2%、対薬物療法群で6.1%でした。
   入院率は51.7%対58.1%です。心房細動の再発率は49.9%対69.5%で、アブレーションにより
   48%減少です。下記のグラフをご参照ください。
   blanking後の心房細動、心房粗動、心房性頻脈の発生の危険率は、アブレーションは薬物群と
   比較して0.53でした。
   再発率に関してはblanking periodの終了から計算しています。
   アブレーションによる重篤な副作用は
   心タンポナーデ(0.8%)、軽度血腫(2.3%)、偽動脈瘤(1.1%)
   薬物群での副作用は、甲状腺障害が1.6%、催不整脈が0.8%でした。






私見)
 cross overが多く、統計学上ITT解析やper protocol解析を駆使しなくてはなりません。
 (最も不得意とする分野です。)
 グラフを含めて下記のPDFをご参照ください。
 結論的にはアブレーションの方が優位ですが、cross overがあるため、その事を勘案しなくては
 ならない様です。





CABANA研究 本論文より.pdf

ITT解析(治療意図の原理による解析)とper protocol解析.pdf

統計 itt.pdf












posted by 斎賀一 at 21:29| Comment(0) | 循環器

2019年03月23日

心房細動に対するカテーテルアブレーションの効果

心房細動に対するカテーテルアブレーションの効果

Effect of Catheter Ablation vs Medical Therapy on Quality of Life
Among Patients With Atrial Fibrillation
The CABANA Randomized Clinical Trial



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 心房細動におけるアブレーション治療は進歩しており、治療の主体となっています。
機械の改良に加えて、心房細動の病巣である肺静脈周辺の剥離同定の進歩も挙げられているそうです。
しかし、アブレーション後の再発に関しては左程、進展が無いようで、アブレーションに関するQOL
(患者サイドの満足度?)の方に関心が移っているようです。今回、雑誌JAMAから、アブレーションと
QOLの関係を調べた論文が掲載されました。CABANA研究です。


纏めますと、


 1) リスクが1以上ある有症状の心房細動患者2,204名を登録しています。
    2009~2016年間調査しています。
    アブレーション群が1,108名で、薬物療法群が1,096です。

 2) アブレーション施行後の12か月以降の調査です。
  
    ・AFEQTスコアー(0~100) ;QOLに関するもの(点数が多い方が良い)
    ・MAFSIスコアー(0~40)  ;心房細動の症状(点数が多ければ症状あり)
    ・重症度スコアー(0~30)  ;点数が多ければ重症度です。    

    以上の3つのスコアーで、アブレーション群と薬物療法群を比較しています。
 
 3) 結果は、
    平均年齢は68歳、63%が男性です。
    発作性心房細動が43%で、持続性心房細動が57%でした。
    平均経過観察期間は48.5カ月です。1,968例(89%)が登録し、研究対象となりました。
    
    施行後の12カ月の時点は、
    
     AFEQTでは、アブレーション群が86.4対薬物群が80.9
     MAFSIでは、アブレーション群が6.4対薬物群が8.1
     重症度では、アブレーション群が5.0対薬物群が6.5
    
    結論的には、QOLも患者の自覚症状もアブレーション群の方が優位でした。



私見)
 本院でのアブレーションをお勧めする基準は、

   ・発作性心房細動 ・心電図でP波が大きい ・心エコーで左房拡大がそれ程でない

 以上で、2次施設にご紹介しています。
 
 心房細動も、患者さんの満足度を重視する時代になったのでしょうか。
 何事も早期発見、早期治療のようです。
 アブレーションに関する文献を下記に纏めましたので、本院でのコンサルタントを受ける前に
 参考にして下さい。
 アブレーションの種類に関しては、下記の日本における特集号を参照ください。

 
 参考文献
    Medical Practice ;2014 V31 N10
    N Engl J Med 2016;374:2235-45
    N Engl J Med 2015;372:1812-22.

  その他の日本の特集号も直接下記のPDFにて掲載しました。


1 Catheter Ablation vs Medical Therapy.pdf

2 心房細動とアブレーション.pdf

3 nejm1.pdf

4 nejm2.pdf

5 心房細動に対するクライオバルーン アブレーション.pdf

6 心房細動治療の新時代.pdf

7 初心に返れ!心房細動診療.pdf







posted by 斎賀一 at 14:54| Comment(1) | 循環器

2019年03月22日

利尿薬のアルダクトンAの効果の性差

利尿薬のアルダクトンAの効果の性差

 
Sex Differences in Outcomes and Responses to Spironolactone
in Heart Failure With Preserved Ejection Fraction:
A Secondary Analysis of TOPCAT Trial



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 アルダクトンA(spironolactone)はカリウム保持作用のある利尿薬です。
ループ利尿薬(ラシックス、ダイアート)は利尿効果が高いのですが低カリウム血症を起こす事があり、
アルダクトンAを併用すれば、低カリウムを防ぐため相乗効果があります。従って心不全に対する治療
としても重要です。またアルダクトンAは、難治性の高血圧症に対する裏ワザとしても有効です。
しかしこのアルダクトンAはその効果、副作用(高カリウム血症)に関して紆余曲折がありました。
雑誌NEJMからの有名な2つの文献を、下記のPDFに掲載しましたので参照ください。

今回、駆出率が保たれている女性の心不全患者では、入院率の減少が認められたとの論文が発表に
なりました。この研究は2014年のTOPCATstudyのその後の報告です。
 (元文献は下記のPDFのNEJMに掲載しました。)


纏めてみますと

1) 安定した心不全患者のHFpEFを対象
   つまり、HFpEFとは心不全症状はあるが心エコーで駆出率が45%以上ある人です。
    (HFrEFは駆出率が45%以下に低下している人)
   アルダクトンA を投与した群と、コントロール群に分けて調べています。

2) 主要転帰は  ・心血管死 ・心停止 ・心不全による入院
   二次転帰は  ・全死亡率 ・全入院率です。

3) 結果は、1,767名中882名が女性 (49.9%)
   主要転帰においては性に差は無かったが、全体的に限定的ですが全死亡率に関しては、女性で
   アルダクトンA群に効果があった。 (危険率 0.66)





私見)
 アルダクトンAは十分にモニタリングして少量を漸増する限りは有効な薬剤と認識しています。
 HFpEF患者ではその進行に対する予防薬はないといわれていましたが、今回の論文から推測しますと、
 女性に関して高血圧の合併があれば、HFpEFでアルダクトンAも選択肢と言えそうです。
 尚、糖尿病性腎症に関してアルダクトンAは適応がありますが類似のセララは投与禁止となっています。
 しかし、近々適応があるカリウム保持利尿薬が上市されるとのことです。




1 アルダクトンa.pdf

2 nejm 1 .pdf

3 nejm 2.pdf

4 本論文.pdf








posted by 斎賀一 at 21:06| Comment(0) | 循環器