2019年03月30日

卵と心血管疾患との関係

卵と心血管疾患との関係
 
Associations of Dietary Cholesterol or Egg Consumption
With Incident Cardiovascular Disease and Mortality
 


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 卵を摂取する事によりコレステロールの増加を招き、それが心血管疾患を引き起こすとの論文が雑誌
JAMAに載っていました。
原文はfreeですので下記に掲載しますが、批判的論調がmedscapeにも載っていますので、両方を
ブログにします。


原文を纏めますと

1) 1985~2016年間の住民のコーホー研究に基づいています。

2) 主要転帰は心血管疾患(冠動脈疾患、脳卒中、心不全、他の心血管疾患による死亡)及び全死亡

3) 対象は29,615名、平均年齢は51.6歳、44.9%が男性
   経過観察は17.5年間
   コレステロールの一日摂取量が300mg増えるごとに心血管疾患が増加して、リスクは1.17です。
   全死亡率も同様にリスクが1.18でした。
  一日に卵半量増えるごとに心血管疾患も6%ほど増加して、そのリスクは1.06です。
  但しコレステロール消費について統計処理した後では、卵と心血管疾患の発生にはもはや著明では
  ありませんでした。

4) 卵の摂取はコレステロールに25%影響を与えるのに対して、肉の摂取は42%関与する。
   食事におけるコレステロール又は卵の摂取と心血管疾患は関係があるが、この事は食生活の
   健全化(つまりコレステロールと卵の摂取に気を付けている)の問題とも関係してくる。
   卵からコレステロールを多く摂る事は有害かもしれないが、これは高カロリー食、肥満とも関係して
   きます。またこの事は卵の摂取が糖尿病のリスクとも関係している。

  
medscapeより纏めますと

1) 摂取した全てが血中コレステロールに反映するわけではなく、代謝や遺伝的背景が関与する。

2) 本研究は観察研究であり住民の報告なので、自ずから限界がある。

3) 卵には多くのコレステロールが含まれているが(200mg)、現在のガイドラインでは中程度の卵摂取
   を勧めている。

4) 一番の問題は卵を多く摂取する人は、同時に多くの肉類も摂っている。
   卵と一緒にベーコンも多く摂っているかもしれない。
   卵が真犯人とは限らない。

5) 本論文の利点は、経過観察が長い事と対象者が多い事だ。
   少なくともその意味で、本論文の結論に注目する価値はある。





私見)
 最近、ある回転寿司で飛切り美味しいあつあつの卵焼きを食べました。
 卵は心だと思います。
 デターは下記のPDFのグラフをご参照ください。 やや説得力があります。




1 卵.pdf

2 Dietary Cholesterol or Egg Consumption.pdf

3 観察研究.pdf













posted by 斎賀一 at 15:07| Comment(1) | 循環器

2019年03月28日

ヘリコバクターピロリ菌感染症

ヘリコバクターピロリ菌感染症
 
Helicobacter pylori Infection
  n engl j med 380;12 nejm.org March 21, 2019



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 雑誌NEJMに症例に沿った総説(vignette)が載っていましたので纏めてみます。


1) 日本ではピロリ菌関連の萎縮性胃炎(本雑誌にはhyperplasiaと記載していますが?)では
   約8年間で3%の胃癌が発生している。

2) 貧困、低栄養、などと相まって、ピロリ菌は冠動脈疾患とも関連している。
   その他、胃疾患以外では、鉄欠乏性貧血、血小板減少症、胃MALTOMA が関連疾患として想定
   されている。 但しエビデンスは少ないとの事です。

3) 非侵襲的診断(胃カメラの生検以外)としては

   ・便ピロリ抗原検査 感度及び特異度は 92%
   ・尿素呼気検査 感度及び特異度は 95% です。

   アメリカの学会ACGにおいては優越は示していないが、費用の点で便ピロリ検査を推奨している。
   血液検査のピロリ菌IgG抗体検査は、感染率が低い地域では特異度は30%であり、また抗体は
   数年間陽性が持続するので、ピロリ菌感染の活動期を決定するには特異度が80%である。
   よって学会では血液検査は推奨していない。

4) 酸分泌抑制薬のPPIは抗生剤に影響は及ばさないが、ピロリ菌に対しては抑制的に作用するので、
   診断や除菌後の判定から30日以内の使用は避けるよう勧告している。
   Maastrichtガイドラインではたった2週間ではあるがPPI服用の中断を推奨しており、症状がある
   人にはH2ブロッカー(ガスターなど)を推奨している。

5) アメリカの学会では、ピロリ菌陽性の人全てに除菌を推奨している。
   最近の香港からの報告では、60歳以上の人にも除菌の効果があるとの事ですし、韓国からの報告
   でも約6年間の経過観察で、胃癌治療後の異時性胃癌発生(別の部位での胃癌発生)を抑制出来た
   との事です。(日本での報告とは異なりますがこの件に関しては私の以前のブログをご参照下さい。)

6) 治療に関しては下記のPDFのグラフをご参照下さい。
   地域による耐性菌の頻度により異なりますが、ビスマス系とクラリス系を比較すると、有効率は
   87.7% 対 83.2% と差はありません。
   ペニシリン系を服用する場合には、事前に皮膚テストを推奨しています。
   rifaburin(抗結核薬のリファンピシン)が新たな治療薬として注目されています。
   日本ではvonoprazan(タケキャブ)が優位と報告されています。
   トロントの学会では全て10〜14日処方を勧めていますが、ACG学会では現在、追跡調査中との
   事です。






私見)
 日本のガイドラインとは若干異なりますし、私の戦略ともやや違和感があります。私の以前のブログを
 ご参照下さい。
 そうは言ってもNEJMの見解には重みがあります。今後も充分に検討いたします。
 「今日の臨床サポート」より図表をお借りしました。ただし日本の血液検査を用いた検診戦略には、私は
 あまり積極的ではありません。
 個々の患者さんに対応して、ご説明いたします。





ピロリ菌.pdf















posted by 斎賀一 at 16:25| Comment(0) | 消化器・PPI

2019年03月27日

胸部X線写真の診かた

胸部X線写真の診かた

土屋了介先生に感謝をこめて
 


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 先日のブログ(3月20日)に元国立がんセンター総長の土屋了介先生より頂いた書籍を掲載しようと
思いましたが、容量オーバーで入りませんでした。
今回、書籍を分割してみましたので、各人がダウンロード後にPDFで統合してください。
土屋了介先生から送っていただいた書籍は、現在入手が出来ません。
 (経緯は私のブログを見てください。)
私個人の財産ではないと思っています。
土屋先生に感謝を込めて、下記に掲載いたします。






胸部]線写真の診かた.pdf

胸部]線写真の診かた25~55.pdf

















posted by 斎賀一 at 18:16| Comment(0) | 喘息・呼吸器・アレルギー