慢性閉塞性肺疾患(COPD)にβ-遮断薬は有効
β-Blocker Therapy and Risk of Chronic Obstructive Pulmonary
Disease – A Danish Nationwide Study of 1・3 Million Individuals
Disease – A Danish Nationwide Study of 1・3 Million Individuals
呼吸器症状はβ-2刺激薬で軽快します。その作用機序は気管支の拡張を促すためです。
交感神経のβ受容体にはβ-1、β-2、β-3がありますが、β-2刺激薬が喘息やCOPDの治療薬となります。 一方でβ-1遮断薬は心臓の興奮を抑制したり、降圧作用から、心筋梗塞や高血圧の治療薬として処方
されます。
高齢化社会のために、COPDと冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)が合併している患者さんが多くなって
います。その場合にβ受容体に対して刺激するのか遮断するのかが問題ですし、一方を使用した時に
副作用が出ないか懸念されていました。
最近ではCOPDの患者さんにβ-1遮断薬を使用していても心筋梗塞の悪化はなく、むしろ予後が良いと
言う論文が散見されています。
今回の論文も心血管疾患のために長期に渡り選択性β遮断薬(β-1ブロッカー)を服用する事により
COPDの急性増悪の減少を認めています。
混乱しますので、下記のグラフを先ずご参照ください。
1) COPD入院歴のない30〜90歳の301,542人のβ遮断薬の新規使用者と、1,000,633人の他の
降圧薬の新規使用者が本研究に含まれ、デンマーク国立患者登録簿で、COPDの入院かCOPD
死亡の追跡調査を1995年から2015年に行いました。
2) 6ヵ月以上継続してβ遮断薬で治療された人は、他の降圧薬で治療された人と比較して、追跡調査中
のCOPD入院のリスクが低かった。 (危険率 0・80)
β遮断薬投与群でCOPD入院のリスクが低下していたが、各疾患での内訳は虚血性心疾患
(0・72)、心不整脈(0・76)、喘息(0・69)、高血圧(0・91)、および肺循環の疾患
(肺塞栓症および肺性)(0・72)でした。
つまり、追跡調査期間中の全死因死亡率およびCOPD死亡リスクは、他の降圧薬で治療したグルー
プと比較して、β遮断薬で治療したグループの方が低かった。 (0・56)
3) 結論として、β遮断薬による治療は、他の降圧薬による治療と比較して、COPDによる入院および
死亡のリスクを軽減するようです。
入院率が19.7%減、COPD死亡が44%減、という結果です。
4) 考察として、β遮断薬がCOPDの急性増悪の頻度を軽減したと結論付けています。
その機序は明白ではない様ですが、動物実験ではβ遮断薬を長期に与えるとβ受容体が増加する
レギュレーションが起こるとしています。
更にβ遮断薬の抗炎症作用、喘息モデルでの気管支分泌物の低下なども認められています。
5) この研究の問題点としては、健康な患者も含まれていると言う点です。
しかし、一般的に喫煙者や軽度のCOPD患者に対して、β遮断薬を投与することを躊躇する医師が
多いが、心血管疾患の患者に選択的β遮断薬を処方していても、COPDの悪化には繋がらないとして
います。
私見)
以前の他の論文も下記のPDFに掲載します。
また、心配なのでuptodateからも引用してみました。
本院での結論として
・COPD患者さんの心血管疾患にはβ遮断薬としては、選択的β-1遮断薬のメインテートかアーチストを
用いる。
・心血管疾患を有する患者さんが喘息やCOPD増悪を呈した場合は、低用量のβ-2刺激薬の吸入剤を
用いる。
短期作用薬としてはメプチンキッドを選択、妊婦に対してはサルタノールを少量吸入
薬剤の一覧表は下記のPDFをご参照ください。
受容体の復習も下記のPDFで行ってください。
1 COPD本論文.pdf
2 α β 受容体.pdf
3 本論文 β-Blocker Therapy and Risk of Chronic Obstructive Pulmonary Disease.pdf
4 β遮断薬の使い方|看護roo![カンゴルー].pdf
心筋梗塞 吸入薬 Inhaled short acting b agonist use in COPD.pdf
その他文献 β-Blockers are associated with a reduction in COPD.pdf