2019年01月08日

ステロイド性骨粗鬆症

ステロイド性骨粗鬆症
 
Glucocorticoid-Induced Osteoporosis
n engl j med 379;26 nejm.org December 27, 2018



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 雑誌NEJMに、ステロイド性骨粗鬆症の症例による総説が掲載されていましたので纏めてみました。
米国では成人患者のおよそ1%がステロイド製剤を処方されており、50歳以上では3%にまでなるとの
事です。


1) ステロイド関連の骨折は治療3か月以内で増加し、そのピークは12か月に到達します。
   一般に考えられている以上に早期に出現します。
   プレドニン換算で2.5mgから7.5mgに増加すると、50%の骨折リスクの増加となります。
   30mg/日で累積5g以上では、そのリスクは3~14倍となります。
   但し高用量のステロイド吸入では、そのリスクは1.10程度との報告です。
   ステロイドによる骨粗鬆症の機序は、下記のPDFをご参照ください。

2) ステロイドを中止すると、急激に骨折のリスクは低下する。
   現に中止により、骨量は6カ月すると明らかに増加している。
   ステロイドの間歇投与や過去の服用歴などでは、骨折のリスクは低下している。
   従って治療に際しては、なおざりにせず、きめ細かく治療戦略を練る事が大事だとしています。
   少なくともステロイドを使用している患者に対しては、40歳になった時点で骨量を判定し、骨粗鬆症
   の予防薬を検討する事が必要がある。

3) カルシウムとビタミンDのサプリは、少量のプレドニン(5mg/日)に対するリスクは軽減するが、
   高用量の場合は(平均23mg/日)効果が無い。

4) 予防の薬物療法は、50歳以上か閉経後の女性に対してのエビデンスがあり適応となるが、若い人に
   関してはガイドラインはない。
   ビスホスホネートが第一選択
   NNTは31である。 (ビスホスホネートを服用した31人に対してその効果は1人)
   ビスホスホネートの副作用(顎骨壊死、非定型骨折など)は、3〜5年服用で0.01%である。
   エビスタも適応がある。

5) 運動、転倒の予防、カルシウムとビタミンDのサプリなどを指導する。




私見)
 日本のガイドラインとほぼ同じですが、下記のPDFもご参照ください。
 最近では10年後のリスク評価もガイドラインに含まれているので、アクセスを下記に載せました。
 職員の皆さん、私の以前のブログ「骨粗鬆症」を検索して、復習してください。
 また、この機会に骨粗鬆症の薬剤に関しても纏め、勉強しました。
 下記のPDFをご参照ください。




 ◆ 参考文献

   Medical Practice v35 n11 2018
   Medical Practice v29 n11 2012
   今日の臨床サポート;骨粗鬆症の薬理(多大なご迷惑をお掛けします)
   その他



   下記のネットで10年リスクを計算してください。

   https://www.sheffield.ac.uk/FRAX/tool.aspx?country=3





骨粗鬆症の文献より.pdf

骨粗鬆症の薬剤.pdf

ステロイドの作用.pdf

ステロイド性骨粗鬆症 10年ぶりにGL改訂.pdf

骨粗鬆症の一例.pdf

循 骨粗鬆症に対してPTH intactの測定を.pdf

















posted by 斎賀一 at 19:47| Comment(0) | 整形外科・痛風・高尿酸血症

2019年01月05日

赤ワインは片頭痛の誘発因子(trigger)

赤ワインは片頭痛の誘発因子(trigger)

Alcoholic beverages as trigger factor and the effect on alcohol
consumption behavior in patients with migraine



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 赤ワインは片頭痛の原因とされています。今回、その他のアルコール飲と比較しながら、
片頭痛の赤ワインの役割を調べた論文が掲載されています。


纏めてみますと、


 1) データはアンケートを主体にして2,197名の片頭痛患者を調査しました。
    (コントロールを設定しないのは、不可能に近い事と判定が困難との事です)
    アルコール飲がtriggerと報告したのは35.6%です。
    片頭痛患者の中で、25%は片頭痛を予測してアルコール飲を途中で止めたり、
    決して飲んでいませんでした。10%の人は、アルコール飲が片頭痛を誘発すると他人から
    言われたことがあり、自分では経験が無くてもアルコール飲を控えていました。
 
 2) アルコール飲が原因の場合の中で、赤ワインが一番多く77.8%です。
    しかし、間違いなく片頭痛を起こす頻度はたったの8.8%でした。
    原因triggerとして、赤ワインは英国、白ワインはフランスとイタリア、ウォッカはロシアが
    多く見られましたが、勿論アルコールの消費量のバイアスが掛かっています。

 3) 種類に関係なく全てのアルコール飲での片頭痛発作開始時間は、1/3が3時間以内で、
    90%が10時間以内です。「二日酔い」よりも早期に発作が起こる事より、triggerと
    二日酔いは独立した因子で別の生理学的機序が関与しているものと推測されます。
    (二日酔いは血中アルコール濃度が低下する時に起ります)

 4) 誘発に関してアルコール飲にあまり一貫性が無いのは、単独の誘発因子ではなく、
    その他の因子(不眠、疲労、ストレス、生理など)が変動して関与しているからと思われる。
    結果は下記のPDFを参照ください。



私見)
 赤ワインは原因と言うよりは、単なる一つの誘発因子(trigger)で複合的な因子が変動しながら
関与しているものと思われます。
 この私は片頭痛持ちで、アルコールに関して下戸です。その割には赤ワインが好きで、小瓶に分けて
一日少しだけ嗜んでいます。ご参考まで。



赤ワイン.pdf

赤ワイン片頭痛 .pdf









posted by 斎賀一 at 15:23| Comment(1) | その他

2019年01月04日

心房細動におけるCHA2DS2-VAScスコアーの評価

心房細動におけるCHA2DS2-VAScスコアーの評価
 
Effect of Variation in Published Stroke Rates on the Net
Clinical Benefit of Anticoagulation for Atrial Fibrillation



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 心房細動の合併症で一番心配なのは脳梗塞ですが、その予防のために抗凝固薬(ワーファリン、DOAC)を服用します。服用する基準としては、危険因子の評価としてCHA2DS2-VAScスコアーが今
では一般的ですが、住民の母集団(population)によりその適応の価値が異なるとのデータがでました。
 欧米ではスコアーが2以上で抗凝固薬が適応となり、スコアー:0では服用の適応なしとしています。
問題はスコアー:1の場合ですが、これに関しては論争があります。

今回の論文ではスコアーが2の時で未治療の場合、年間でどの程度脳梗塞が発生するかを調べました。
ATRIA研究では0.8/100/年、SPORTIF研究及びSwedishコーホー研究では2.2/100/年、Danishコーホー研究では3.7/100/年でした。
上記により解析しますと、抗凝固薬の適応はpopulationにより0,1,2と異なる結果となりました。





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私見)
 j-watch-cardiologyのコメントによりますと、「本研究の主たる薬剤はワーファリンであった。
しかし現在ではDOACの方が効果も副作用に関しても有用だ。また本研究は、リスクの低い〜高いpopulationの差が出た結果である。 結論的には、服用に際してスコアー1〜2が特に重要である。」

 本院でも従来通りにスコアー2で服用の適応とし、1では患者さんとのコンセンサスが必要なようです。


詳細は下記のブログを参照ください。


  「葦の髄から循環器の世界をのぞく」

  http://blog.livedoor.jp/cardiology_reed/archives/77428865.html





af chad.pdf

心房細動の抗凝固療法の適応を決めるとき.pdf










posted by 斎賀一 at 20:30| Comment(0) | 循環器