2019年01月18日

イコサペント酸(EPA製剤)は高中性脂肪血症の心血管疾患を軽減する

イコサペント酸(EPA製剤)は高中性脂肪血症の心血管疾患を軽減する
 
Cardiovascular Risk Reduction with
Icosapent Ethyl for Hypertriglyceridemia
n engl j med 380;1 nejm.org January 3, 2019



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 脂質異常症は心血管疾患のリスク因子ですが、中性脂肪(TG)は悪玉コレステロール(LDL-コレステロール)とは異なった独立リスク因子と捉えられています。
中性脂肪を低下させるナイアシン系やフィブラート系の薬剤は、心血管疾患の軽減にはエビデンスが不十分だとされています。
日本のJELIS研究では、スタチン系にEPA製剤1.8gを追加する事により心血管疾患を19%軽減されたとする報告が以前にされています。

 今回は雑誌NEJMよりREDUCE-IT研究の報告がされています。


纏めてみますと

1) 対象者は45歳以上で心血管疾患の既往のある人か、50歳以上で糖尿病と他の危険因子を有し
   既にスタチンを服用している人です。
   空腹時トリグリセリド値 135〜499 mg/dL、低比重リポ蛋白コレステロール値41〜100 mg/dLを
   対象にしています。

2) 精製されたEPA製剤2gを1日2回(1日量 4g)投与する群と、プラセボを投与する群に無作為に
   割り付けました。
   主要評価項目は、心血管死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、冠血行再建、不安定狭心症
   の複合としています。

3) 8,179 例を登録し、4.9年間追跡しました。
   主要評価項目のイベントはEPA群の 17.2%で発生したのに対し、プラセボ群では 22.0%でした。
   心房細動や心房粗動による入院の割合は、EPA群のほうがプラセボ群よりも高かった。
    (3.1% 対 2.1%)
   重篤な出血イベントは、EPA群の 2.7%とプラセボ群 2.1%の発生でした。

4) 考察として
   ・心房細動に関する入院率がプラセボ群よりEPA群で多い結果となっていますが、その頻度は極めて
    少ないとの事です。
   ・本研究では精製されたEPA製剤4gに対して、JELIS研究では1.8gでした。
   ・EPA製剤ではLDL-コレステロールの増加は認められませんでしたが、DHA製剤を基本とした研究
    では、LDLは増加していました。
   ・中性脂肪のベースラインの違いや到達値の違いに関係なく、EPA群の方がイベント発生を減少して
    いました。この事から、単に中性脂肪の低下だけでなくEPA製剤そのものの生理薬学的作用が働い
    ていると推定しています。
    現にそのようなプラスの効果は、服用後暫くしてから認められている事と、炎症の指標のCRP値が
    低下している事からも推測できるとしています。

5) 結論として、スタチンに精製されたEPA製剤を追加する事は、心血管疾患に対して有効としています。






私見)
 本論文でも述べていますが、EPA製剤と言っても精製されたもので、サプリにも適応するかは不明です。
 出血傾向の心配がない点や中性脂肪が下がらなくても良い点は何ともありがたい報告ですが・・・。
 さて4gとは、薬価が高いのが気になります。
 差し当たり心血管疾患の既往のある人が4gの対象でしょうか。
 単にリスクが心配な場合は、従来通りに少ない量で様子をみたいと思います。





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       ネットより
       nもωも同じ意味の様です。






1 nejmより.pdf

2 薬物治療の適用とその意義.pdf

3 EPAの使い方.pdf

4 脂質異常症.pdf

5 DHAとEPAの違い.pdf

6 エパデールとロトリガ.pdf








posted by 斎賀一 at 21:51| Comment(0) | 脂質異常

2019年01月17日

随時尿検体のナトリウム/クレアチニン比の使用方法

随時尿検体のナトリウム/クレアチニン比の使用方法
        <業務連絡用>




 本来は24時間蓄尿により一日のナトリウム排泄量を測定する事で、疾患の鑑別や食事指導に利用する事が出来ますが、煩雑なためそれに代わる随時尿での方法をこれからは本院で汎用しますので、職員の皆さん周知してください。

 下記の文献PDFを参照して、方法と理論的側面を纏めてみました。


1) 随時尿の採尿は、起床後第二尿と夕方の2回採尿とする。
   起床後第一尿では、夜間の尿が膀胱に溜まっているため不安定になるかもしれない。
   一方夕方の尿は一番平均値に近い。しかし採尿が提出出来ない場合には、2回目は午後の適時
   でもよい。

2) 尿提出の伝票には  
     ・尿中ナトリウム濃度 ・尿中クレアチニン濃度 ・年齢 ・体重 ・身長  
   以上を掲載して提出する。

3) 2回の結果の尿中Na値と尿中CRE値の平均値を計算して、下記の計算式にインプットする。


        https://www.adpkd.jp/selfcheck/calc_salt.html


   出た結果の値は一日のナトリウム排出量となる。グラム値基準値は80~250mEq/day、
   または4~6g/day   ( ※ mEqを17で割るとグラムになる。)

4) 便や汗からもナトリウム排出があるので、上記で計算した量よりも2gほど多くナトリウムを摂取
   していると想定されている。
   減塩指導の際には、この事を念頭に置く必要がある。
   高血圧ガイドラインの2014年版では、食塩摂取目標は6gとなっている。
   WHOは5g未満を推奨
   つまりガイドライン目標値から2を引いた値が、2回随時尿で算定した場合の指導目標となる。
   (日本のガイドラインでは 6−2 の4gが尿算定の目標値)





私見)
 今後この検査により減塩指導及び低ナトリウム血症の鑑別を行う予定です。
 下記のPDFをご参照ください。





1 尿中Na.pdf

na.pdf

推定na.pdf

低Na血症の鑑別診断.pdf

尿中.pdf

尿中na3回法.pdf

本院用酸塩基.pdf

















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2019年01月15日

母乳育児にはビタミンDのサプリ

母乳育児にはビタミンDのサプリ



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 日経メディカルより、母乳育児の場合にビタミンDが不足し易いとの記事がでていました。
私なりにビタミンDについて予備知識として纏めてみました。


 1) ビタミンDには、動物由来のビタミンD3と植物由来のビタミンD2があり、
    更に、体内でコレステロール合成の際の代謝産物に紫外線が照射され、皮膚表面で
    形成されたビタミンD3があります。つまり、供給源としては体外から摂取する
    ビタミンD2とD3に体内で合成されるビタミンD3の3パターンがある事になります。
    何れも合成の際には紫外線が関与しています。ビタミンD2とD3では生理活性は
    ほぼ同じですが、D3の方が効力が強いとするデータもあります。

 2) いずれのビタミンDも蛋白と結合して腎臓に運ばれます。血中カルシウム濃度が低い場合は、
    副甲状腺ホルモンの刺激により活性型ビタミンDとなりますが、血中カルシウム濃度が
    正常か、高い場合には非活性型ビタミンDとなります。この非活性型は生理活性がありません。

 3) 活性型は小腸でのカルシウム吸収を促進、腎臓のカルシウム再吸収促進や、
    さらに骨破壊細胞の作用を刺激して、血中のカルシウム濃度を一定に保とうとします。
    カルシウム濃度が一定になると、活性型は非活性型に代謝されます。
    一見ビタミンDは骨を破壊する感じですが、カルシウムの吸収が勝るので、結果的には
    骨のリモデリング(構造変化)を起こして骨を丈夫にします。
    骨粗鬆症にビタミンDは有効ですし、乳幼児においてビタミンDが不足すると骨の脆弱性が増し、
    クル病になります。米国小児学会(AAP)では、母乳栄養児には400単位/日を推奨しています。
    尚、非活性型製剤は安価で高カルシウム血症のリスクが少なく、副甲状腺ホルモンを抑えるため、
    外国では腎機能障害患者に処方されることが多いとの事です。

 4) ビタミンD中毒は食欲低下、体重減少、多尿、不整脈などですが、臓器にカルシウム沈着を起こし
    臓器障害を招きます。腎結石のリスクは17%増加するともいわれています。
    一般的な量では心配ありません。



私見)
 最近、乳幼児のための非活性型ビタミンD製剤が発売されています。
 文献からビタミンD関連を纏めて下記のPDF化しましたので参照ください。
 (最近のNEJMの論文によりますと、ビタミンDには心血管疾患や癌に対する予防効果はない
とする結果を報告しています。)
 下記のアクセスで製品について調べてください。
  
 https://www.181109.com/item/00555/


 参考文献;

小児科 v49 n2 2008;北村和宏
   小児科 v45 n3 2004;矢野公一
   小児科 V56 No10 2015;山本和歌子



1 母乳育児.pdf

2 ビタミンD文献より.pdf

3 BabyD (ベビー ディー) _ 森下仁丹の通販 《公式》.pdf

4 活性型ビタミンD製剤など.pdf

5 ビタミンDの可能性その臨床的効果.pdf







posted by 斎賀一 at 21:54| Comment(1) | 小児科